raimund

新・今でもしぶとく聴いてます

朝比奈・ブルックナー

13 10月

ブルックナー交響曲第6番 朝比奈、東京SO/1984年

201014ブルックナー 交響曲 第6番 イ長調 WAB.106(1881年稿ノヴァーク版)

朝比奈 隆 指揮
東京交響楽団

(1984年1月28日 東京文化会館 ライヴ録音 Victor)

 この1、2年くらいで気が付くことの一つにペットボトルや缶のウーロン茶が種類、量とも急に減ったというのがあります(そんな気がする)。去年は日本の烏龍茶とかいった銘柄が自販機にちょくちょく置いてあったのに、今年はそれも滅多に見なくなりました。頼みの綱?のI藤園でさえ、小型のペットボトル入りが稀に自販機に入れてあるくらいです。さして深刻なことでないから「だから何?」ということかもしれませんが、烏龍茶を暑いときにがぶ飲みするのが好きなので今年は大変物足らない夏でした。あと、国産の塩鮭、鯖もかなり減った気がします。

 若杉弘のブルックナー第6番に続いて朝比奈隆です。朝比奈隆のブルックナー第6番のCDは現在のところ三種しかなく、これは大阪フィルとのジヤンジヤン全集(前衛小劇場「渋谷ジァン・ジァン」のオーナー高嶋氏が朝比奈のブルックナーに感銘を受けて全集レコード化を構想
)に次ぐ二つ目の第6番です。最近朝比奈最晩年のベートーヴェンを聴いていたので今回のブルックナー第6番は意外にも速いテンポなのと、第1楽章なんとも滑らかに進んでいくのでちょっと驚きます。それでも低音の弦が分厚く響くのは朝比奈のブルックナーらしい内容でした。

朝比奈・東京SO/1984年
①15分41②19分42③08分23④13分57 計57分43
朝比奈・大PO/1994年
①16分01②19分11③09分11④14分38 計59分01
朝比奈・大PO/1977年
①17分44②17分08③09分17④15分04 計59分13

 朝比奈の第6番で新旧、1994年と1977年の合計時間が結構似ているのに対して、1984年の東京交響楽団とのライヴが1分強短いのはこの時期の特徴なのか、演奏頻度が高くない作品だから色々試しているのか。ところで東京交響楽団は漢字表記で東京都交響楽団と見間違えそうで、朝比奈のブルックナー録音ではどちらも共演しているのややこしい名前です。1946年に東宝交響楽団として発足し、東京交響楽団1951年改称しています。ウィキの解説には色々苦しい歴史が出てきますが。2002年から川崎市を本拠地にしています。東京都交響楽団の方は1964年の設立となっています。ちなみに東京フィルハーモニー交響楽団は日本最古のオケだそうで、さすが東京圏はオーケストラの質量ともに凄いものです。

 オイゲン・ヨッフムによると交響曲第6番は第1楽章が既に最高潮となる内容で第2楽章までの内容に比べて第3、4楽章が弱点だそうでした。そういう指摘はシューベルトのピアノソナタについて村上春樹が小説の中で登場人物に言わせていることと少し似ています。もっともヨッフムは第6番の前半楽章の良さを強調しているようですが。ブルックナー党じゃない層が第6番はけっこう聴けると思う場合は、逆に後半が重くないことが理由の一つかなと自分の感じ方も含めてそう思いました。
30 9月

ブルックナー交響曲第4番 朝比奈隆、N響/2000年

200925bブルックナー交響曲 第4番 変ホ長調 WAB104(1878・80年稿 ハース版)

朝比奈隆 指揮
NHK交響楽団

(2000年11月3-4日 録音 fontec)

200925a 先日カレンダーの九月を眺めていると30日の横に31日と表記されていることに今頃気が付きました。このカレンダーは二月のところにも同様の間違いがあって、購入後に訂正シールを受け取っていましたが、九月については説明があったかどうか定かではありません。もう今日で終わるのだからどっちでも良いことながら、何か提出期限で焦っていたりしてたらトラップ的に勘違いしたかもしれません。このカレンダーは毛筆で新、旧約聖書から短く抜粋した言葉を上半分に充てた構成でした(制作元は略)。そろそろ来年のカレンダーを用意する頃なので、やっぱりその書道カレンダーも続けて使うつもりです。

 先日は若杉弘とN響のブルックナー第4番を聴いたので、同じくらいの時期に朝比奈隆が客演した第4番があったのを思い出して聴きました。朝比奈のブルックナーはベートーヴェン同様に同曲の異なる機会の録音が多数あり、知らない内に未発表だった音源も出てきているのでいったいどれだけあるのか分かりません。このN響とのライヴ録音は最晩年のものであり、これの後は同年11月27日の大阪フィルとのライヴ録音だけのはずです。

朝比奈・N響/2000年
①18分32②15分50③11分15④20分46計66分23
若杉弘・N響/1997年
①18分58②15分37③11分22④21分33 計67分30

 朝比奈隆のブルックナーの中でも第4番は好きな曲の一つで、同じくらいの年代にN響に客演した第8番が見事だったのでついでにこれも購入したという経緯でした(同じように紙のジャケットに入っている)。朝比奈隆にも熱烈なフアンが居て、ライヴ収録したものには演奏が終わった後に歓喜の反応が入っていることがあります。中には雄叫びをあげたと自らコメントしているフアンのあるほどですが、曲によってはそういうノリ、興が自分には合わない気がしていました。第8番の通常演奏される1890年稿なんかはそれでもいいかなと思え、第4番もあまり気にならないと思っていました。

 改めて聴いているとこの第4番はそこまで豪快というか、特別な盛り上がりではなく、良い意味で落ち着いていると思われ、最晩年の演奏だけのことはあると思いました。CDの解説によるとこのシーズンのN響の公演の中からベストの回を決めるアンケートでは、第1位が同じく朝比奈のブルックナー第9番、第2位がこの第4番だったそうです。解説者はその逆で、複数回の公演の内で良い方を選べば第4番の方が1位だと書いていました。個人的にはそれに同意だなと、実際に会場で聴いてもいないのに読みながら頷いていました。
23 2月

ブルックナー交響曲第7番 朝比奈隆、東京都SO/2001年

190223bブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB.107(ハース版 )

朝比奈隆 指揮
東京都交響楽団

(2001年5月25日 サントリー・ホール ライヴ録音 fontec)

 昨日の昼前、ある役所のカウンターの前に座って申請した書類が出来るのを待っていると、携帯電話(スマホか)を持ってやたら大きな声で話す男性がいました。老人と言うのか熟?実?年というのか、自分より干支で一回りくらい上のような年齢で、スピーカーから出る通話先の声も大きくしていたのでうるさいくらいに丸聞こえでした。外に出て話さないまでもちょっとは遠慮せえ、と思いながら我慢していました。やっと終わったら今度は私の横に座って、自ら電話をかけてまた同じような大声で話だしました。堪忍袋の緒という安全装置が仮に十二本あるとするなら瞬間的にニ、三本がブチッと切れましたが、相手の通話音声も大きかった(大きくしている)のであるいは聴覚に問題があるかもしれず、何も言わず、そこを離れもせずに座っていました。

 さてブルックナーの第7番、少し気温が上がったので畳の上に寝転んでブルックナーを聴く「ブルックナー浴」がしやすくなりました。先日居酒屋のカウンターに座っているとこれまた大きな声の爺さんが、今まで東北の酒、北陸の酒とか言われて飲んできたけど結局どれがいいのか悪いのか分からんようになったと言うのがきこえました。自分にとってのブルックナーもそろそんな感じかもしれません。

東京都SO/2001年
①21分49②20分06③08分44④12分21 計63分00
大阪PO/1992年
①20分56②21分13③08分07④12分45 計63分01
大阪PO/2001年
①21分18②20分40③08分35④13分21 計63分54
新日本PO/1992年
①21分55②23分45③08分46④12分49 計67分15
東京都SO/1997年
①23分05②23分46③09分27④13分12 計69分30
東京交響楽団/1994年
①22分21②22分09③09分38④13分11 計67分19

190223a これは朝比奈隆(1908年7月9日 - 2001年12月29日)が93歳になる直前に残した、最後のブルックナー第7番のライヴ録音です。朝比奈の没後にも多数ライヴ音源が出たので交響曲第7番は一体何種類あるのか分からなくなるくらいです。同じ東京都交響楽団との第7番は四年前にも録音していました。合計演奏時間を比べると2001年の二度がかなり短目になっています。朝比奈隆のブルックナーの中では第7番は好きな方でしたが、今回は聴いてみてちょっと意外な印象でした。なお、このCDのトラックタイムには終演後の拍手等はカウントされていません(しかし歓声やら拍手はきっちり収められている)。

 その以外さを象徴するのが第4楽章が終わった後の短い沈黙と、それが破れる瞬間で、本当に我に返って歓声と拍手がわき起こるというニュアンスです。実際に聴いていてその感じ方は共感できるので作為的にそうしているのではないと思います。朝比奈のブルックナー第7番なら、かなり盛り上がり、壮大に高揚すると思っていたので、え?終わったのか?という感慨が湧き、それが我に返るという反応になったのだろうと思います。

 それはともかくとして、前半の二楽章は何となく雑な気もしてあっけなく過ぎたという印象ですが、何度も朝比奈の公演を聴いているコアなフアンなら別の感じ方だったことだと思います。自分の中ではキャニオン・クラシックの全集の第7番が好きだったので、このCDの第3、第4楽章はそれに通じる(それ以上か)内容だと思いました。
19 2月

ブルックナー交響曲第8番 朝比奈、東京都SO/1998年

190220aブルックナー 交響曲 第8番 ハ短調(1890年ハース版)

朝比奈隆 指揮
東京都交響楽団

(1998年9月28日,10月1日 東京芸術劇場 ライヴ録音 fontec)

190220 今朝は普段と違う経路で通勤したので近鉄京都線と地下鉄烏丸線を使いました。朝七時過ぎに近鉄の駅に立っていると本数が少ないので初めは人がまばらでしたが、急行が着く頃にはホームにあふれそうになるくらいでした。京都駅まで出てJRで大阪方面へ行く人も多いようでした(竹田駅で地下鉄に乗り換えるとけっこう空いていました)。その地下鉄もJR京都で一気に満員になり、自分の座っている前に傘が見えて柄のところに「裏千家」と黒字で書かれているのが見えました。その男性は茶人なのか事務局の人なのか、はたまた傘を借りただけなのか、それはともかくとして傘にいちいち書いてあるのは初めて見ました。それで地下鉄を降りて地上に上がると、不意にブルックナー第8番終楽章のコーダ部分が頭の中に流れてきました。第8番もコーダ部分も特に好きでないので滅多にないことで、これまでの季節感とクラシック音楽、バイオリズムがどうも狂ってきたようです。

 何か不吉で、また地震でも来なければと思いながら、そのコーダ部分を頭の中で思い浮かべながら、今脳内で勝手に再生しているのは朝比奈のCDのような感じだと思って、まだ過去記事で扱っていない第8番の中からこれを思い付きました。この1998年の東京都SOの定期公演のライヴ盤は、朝比奈の七つ目の第8番の録音(自主製作は除く)だそうです。

-1993年以降・朝比奈隆のブルックナー第8番
東京都SO・1998年(東京都芸術劇場))
①15分27②15分59③27分13④22分58 計81分37
大阪PO・2001年7月(サントリーホール)
①14分42②15分27③26分14④24分06 計80分29
大阪PO・2001年2月(愛知県芸術劇場)
①14分38②15分04③25分19④22分25 計77分26
NHKSO・1997年(NHKホール)
①16分12②17分14③28分06④22分51 計84分23
大阪PO・1994年7月(サントリーホール)
①15分46②16分32③29分04④23分42 計85分04
東京SO・1993年11月(サントリーホール)
①15分56②16分22③27分53④24分53 計85分04
新日本PO・1993年2月(サントリーホール)
①15分46②15分27③27分34④22分55 計81分42

 これは最初に聴いた時は朝比奈の第8番にしてはおとなしいと思い、少なくとも終演時に雄叫びが起こるようなタイプではないと思い、二度程聴いてそのままになっていました。改めて聴いてみるとかなり親近を覚えましたが、これ以前の録音のような力がみなぎるような第8番とはちょっと違うのを再認識しました。合計の演奏時間をみると、1993年の新日本POや2001年の大阪POと似ていて、それ以外の84,85分台より短くなっています。しかし、演奏時間が短くなっているのに聴いているとかなり長い時間のように感じられて、時間の感覚というのか流れ方が違っている気がするのは妙な感じ方です。

 朝比奈隆のブルックナー第8番の中では個人的な好みとして、1997年・NHK交響楽団とのライヴ、2001年7月・大阪POとのライヴが特に好きでした。今回のものは2001年・愛知芸術劇場と並んでで第二グループといったところです。朝から急に思い出した終楽章のコーダ部分は最晩年にさしかかると落ち着いた風情になったようで、演奏が終わった直後の歓声、拍手も上品になっていました(トラックタイムには拍手は含んでいない)。この演奏当時、朝比奈は90歳になっていました。
2 3月

ブルックナー交響曲第9番 朝比奈、東京SO・1996年サントリーホール

160302ブルックナー 交響曲 第9番 ニ短調 WAB.109(1894年原典 ノヴァーク版)

朝比奈隆 指揮
東京交響楽団

(1996年4月13日 サントリーホール ライヴ録音 Pony Canyon)

 先日夜に内輪で集まった際に知人(旧上司筋)が煙草を止めたと聞いて驚いていました。何があっても禁煙だけはすまいというヘビースモーカーだったのでことさら驚いて見せたら、なんでも病気のせいとかでした。それ以上詮索しなかったけれど、20代の頃は年配の方が肺がんで亡くなったと聞いても全く動揺も無く軽く2箱は吸っていたので、今回はよほどのことかと思って聞いていました。

 さて、正月以来ご無沙汰傾向だったブルックナーの交響曲、今回は東京交響楽団の創立50周年記念として発売された選集の中から残っていた第9番です。ブルックナーの交響曲の中でも第5番とか第9番、第2番、6番といったところは朝比奈の録音はちょっと印象が薄いと思っていましたが、ここ半年くらいでなかなか良いと思い直し、特にサントリーホールでライヴ録音したこの東京交響楽団のシリーズは大阪POの全集以上かなととか思っていました。第9番は1990年代後半以降の録音の中で一番演奏時間が長くなっています。なお、このCDの集楽章のトラックは演奏が終わった後の拍手もトラックを区分しないで入っていますがその時間は除いています。

東京SO/1996年
①28分01②11分52③24分48 計64分41
大PO・Sy-Hall/1995年4月
①26分50②11分41③24分32 計63分03
NSO・NHK-Hall/2000年5月
①27分22②11分11③25分49 計64分22
大PO・Sy-Hall/2001年9月
①27分16②11分22③23分33 計62分11 

 実際に聴いていると第1楽章がいかにも重くて遅く、いろんなものが底に沈殿しながら流れる水路のようでした。同じ感想を朝比奈のブルックナーで最近書いた覚えがあるので、年代的な特徴なのか前半はとにかく今一つな印象です。しかし終楽章はこの感じが妙にしっくりきて、あと少しでも急ぐとそれだけ早く終わってしまってもったいないような気になります。演奏が終わった後は完全に音が消えるまで待って、それから拍手が少しずつ起こって大きくなるという節度ある反応です。

 朝比奈のブルックナー第9番は上記以外にも、1976年の大阪PO(全集)、1980年の新日本PO、1991年の東京交響楽団、1993年の東京都交響楽団がありました。それらのトラックタイムは以下の通りです。こちらは終演後の拍手が含まれているかは未確認です(聴いたけれど覚えていない)。90年代より古い録音はもっと演奏時間が長くなっていますが、これは終楽章に拍手等入っていることが原因かもしれません。同じ東京交響楽団を指揮しているのに5年前とは5分くらいの差が出ているのも目立ちます。

東京SO/1996年
①28分01②11分52③24分48 計64分41
東京都SO・東京文化会館/1993年
①26分21②11分39③25分49 計63分49
東京SO・オーチャードHall/1991年3月
①25分34②11分08③22分48 計59分30
新日PO・東京マリア聖堂/1980年6月
①27分24②10分43③28分18 計66分25
大PO・神戸文化Hall/1976年4月
①26分50②11分27③26分38 計64分55 

 どうでもいいことながら、冒頭の禁煙した人の話。ごく最近その人の夢を見て、それが宮城の昔話「みちびき地蔵」をほうふつとさせる夢だったので、合理的な根拠は無いとしてもちょっと気味悪く思っていたところでした。とりあえず禁煙だけですんだのだから大事なかったのでしょう。記憶に残っている夢の映像は、大きな橋のたもとで自分がその人とすれ違う場面で、自分は橋から離れて道を歩いている姿、相手はこれから橋を渡るべく橋へ向かって若者一人と並んで急いでいる姿でした。すれ違ったところでそれが誰か気が付き呼び止めようとしたところで目がさめていました。橋の姿は出てこなかったけれど橋だと覚えているのは、夢の中で自分は渡っていたのかもしれず、そうだとすれば自分はあの世側から戻って来たとも解釈できて妙に気色悪い後味の夢でした。無論そんな世迷言は誰にも言わず、ここでロバの耳的に発散しているだけです。 
4 1月

ブルックナー第7番 朝比奈、東京交響楽団・1994年

151224acブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB.107(ハース版 )

朝比奈隆 指揮
東京交響楽団

(1994年4月23日 サントリーホール ライヴ録音 Pony Canyon)


 官公庁等が仕事始めである1月4日、例年になく暖かい朝で、車内の外気温計が5℃を表示していました。氷も霜もないので薄気味悪いくらいですが、この冬はエアコンを使う回数が激減して電気代も節約できてありがたいところです。年末年始は外出もせず、紅白も全く観ずに終わり、だらだらと文庫本(太宰治)をめくっていました。というのは年末に気になっていた竹一(人間失格の登場人物)の結末が分かったら、今度はタイトルが分からない小説の一場面のことが思い出されてそれが急に気になりました。てっきり「人間失格」だと思っていたらそうではなく、作者の若い頃を描いた主人公が旧制高等学校か中学校の英国人教師から作文を激賞される場面は、なんという作品に載っているか探していました。結局これも太宰の作品で「猿面冠者」の一場面だったことが分かりました。分かっても何の得にもならないけれど新年早々とりあえずすっきりしました( やらねばならないことがあると、つい関係の無い事柄に逃避するのは良くないことだと思いつつ )。

160104 さて、書初めならぬブル初めに朝比奈、東京交響楽団の第7番を聴きました。朝比奈のブルックナー録音の中でもあまり多くはない東京交響楽団との共演ですが、楽団の創立50周年記念として発売された選集で、ブルックナーの交響曲第5、7-9番の3曲がサントリーホールでのライヴ録音で収録されています。これらはかなり魅力的で、個人的には大阪POとの全集よりも良いかなと思うくらいでした。それはホールのおかげなのか、オーケストラの技量なのか、丁寧でおとなしい印象のブルックナーに聴こえます。

 なお、このCDのトラック表記では第4楽章に演奏終了後(厳密には完全に音が消えないうちに拍手が始まっている)の拍手が1分以上入っています。去年大阪フィルのCDの回にこれのタイムも併記したところではその分を削って無かったので今回訂正しました。

 
~ 朝比奈・ブルックナー第7番
東京交響楽団/1994年
①22分21②22分09③09分38④13分11 計67分19
東京都SO/1997年
①23分05②23分46③09分27④13分12 計69分30
新日本PO/1992年
①21分55②23分45③08分46④12分49 計67分15

東京都SO/2001年
①21分46②20分06③08分44④12分21 計63分57
大阪PO/2001年
①21分18②20分40③08分35④13分21 計63分54
大阪PO/1992年
①20分56②21分13③08分07④12分45 計63分01


 第7番はオーストリアの聖フローリアン修道院の聖堂で演奏したものやそれ以前のもの等多くの種類の録音が残っています。それら古いものは手元にありませんが、上記の中では演奏時間が長めのものに特に魅力を感じます。この録音では弦の複数のパートがよく聴こえて、濃厚で分厚い響きで塗りつぶすような先入観(それ自体古い)が払拭されます。

 ところで上記の「猿面冠者」の場面、主人公がほめられた英語の作文課題は「本当の幸福とは?」というもので、それに対して主人公の彼は「本当の幸福は外から得られるものではなく、おのれが英雄になるか、受難者になるか、その心構えこそが鍵となる」という趣旨で展開しました。教師から Most Excellent ! ”と激賞された割にいま一つピンと来ない内容だと思いました。そういえば年末ジャンボの番号を確認していないのでダメだと思いながらもやっぱり気になります。

24 12月

ブルックナー第8番 朝比奈、東京SO・1993年サントリーホール

151224aブルックナー 交響曲 第8番 ハ短調(1890年ハース版)

朝比奈隆 指揮
東京交響楽団

(1993年11月13日 サントリーホール ライヴ録音 Pony Canyon)

 今日の午後、押小路通烏丸を東に向かって歩き出した時に「しろはとベーカリー」というパン屋が目に入りました。買って店を出て来る人が見えて、今度昼に買ってみようかと思いつつ、「しろはと・白鳩」という言葉に聞き覚えがあるような気になり、いろいろ記憶をたどりながら歩いていると「白鳩寮、真生会館の前身」、ときて岩下壮一神父の著作のことを思い出しました。著書は難解だったので何もコメントすることはできず、ただ経歴の中でロンドンのセント・エドモンド大神学校に在学中の大正10年に欧州歴訪中の皇太子裕仁親王を案内してベルギーのルーヴァン大学へ同行というのがありました。ところでその白鳩寮と現代の真正会館は信濃町にあるそうで何かの本部と同じだなと思って見ていました。

~朝比奈指揮、サントリーホールでのブル8
東京SO・1993年11月
①15分56②16分22③27分53④23分39 計83分50
新日本PO・1993年2月
①15分46②15分27③27分34④22分55 計81分42
大阪PO・1994年7月
①15分46②16分32③29分04④23分42 計85分04
*拍手と歓呼:13分03

151224b さて、昨日に続いて朝比奈隆指揮のブルックナー第8番です。今度は1993年11月の東京交響楽団とのライヴ録音ですが、昨日にトラックタイムを載せた時は第4楽章の時間に演奏終了時の拍手等の1分14秒を含んでいました。今回はそれを除いて列記しています(拍手は入っていないと思っていたので)。今回の録音は同じくサントリーホールが会場ですがオーケストラが異なり、SACD仕様ではなくて通常のCDです。朝比奈隆の愛好者界では1994年の大阪POの方が人気が高いはずだと思いますが、この東京SOとの方もなかなか魅力的です。演奏会の間隔が一年に満たないのでそんなに変化は無いと思って聴いていると、気のせいか東京SOの方は枯れたという言葉が思い浮かばない、艶のある豊饒な第8番だと思いました。特に第2、第3楽章が充実していて魅力的でした。

 演奏後の歓呼、拍手は翌年の大阪PO盤とはちょっと違って、残響が消えきらない間に歓声があがっていました。それでも雄叫びという程のものではなく、会場の熱気が伝わってきます。このCDは1993年から1996年に行われた東京交響楽団との公演から第5、第7、第8、第9番の四曲が入った選集で、第8番が最初の公演にあたります。先月は第9番を取り上げていましたが、朝比奈が東京交響楽団を指揮して初めてブルックナーを演奏したのは1973年12月12日(交響曲第7番)と古くて年季が入っていることもあり、大阪POと同じくらい相性が良いような、また大POとは違って優雅な雰囲気があるようにも思いました。

 二枚目のステンドグラスのような写真はクリスマスにちなんでザンクト=ヴィートゥス教会堂のステンドグラス、「東方三賢人の礼拝」を文庫本の表紙カバーからもってきました(岩下壮一神父の著作)。
23 12月

ブルックナー第8番 朝比奈、大PO・1994年サントリーホール

151223bブルックナー 交響曲 第8番 ハ短調(1890年ハース版)

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

(1994年7月24日 東京,サントリーホール 録音 Pony Canyon)

 天皇誕生日(82回目)のきょうは雪ではなくて朝から雨の薄暗い一日でした。戦前の天長節には尋常小学校は登校して紅白の饅頭をもらって帰ったと聞きました。小さな饅頭だとしても全校生徒の分を用意するならけっこうな分量になり、それが全国統一だったら相当なものになるはずです。今にして思えばその費用はどこから出ていたのだろうかと思います(あるいは下賜か?、菓子だけに)。それで登校して両陛下の肖像、御真影を安置した奉安殿を皆で拝礼するのが決まりで、こそっと顔を上げて薄目をあけて見ると肖像写真か何かが見えたとも聞きました。でも奉安殿が浸透したのは昭和に入ってからだそうなので、何となく「威」を拝借せんとする意図が透けて見えます。それはともかく、今回のCDは明治41年(1908年)7月9日生まれの朝比奈隆が86歳の時の録音でした。

151223a さて、朝比奈隆と大阪フィルによるPony Canyonの全集から最後に交響曲第8番です。これはライヴ録音であり、終演後の客席の音声を長めに別トラックで収めたことと、演奏が終わった直後の沈黙、独特の間も入ったことで話題になりました。これは当日公演を聴いた方とCDでのみ聴く人とでは受け止め方、印象は当然違うだろうと思いますがそれはこのCDに限らず仕方のないことです。なお、トラック①には演奏前の音声、朝比奈が登場した時の拍手やらが約50秒入っていますがそれは下記のトラックタイムから除きました。また、トラック②の前には約1分の同様の休憩的な間が入っています(プレーヤーではマイナス、- 秒数で表記される)。

大阪PO・1994年7月(サントリーホール)
①15分46②16分32③29分04④23分42 計85分04

*拍手と歓呼:13分03
東京SO・1993年11月(サントリーホール)
①15分56②16分22③27分53④24分53 計85分04
新日本PO・1993年2月(サントリーホール)
①15分46②15分27③27分34④22分55 計81分42
NHKSO・1997年(NHKホール)
①16分12②17分14③28分06④22分51 計84分23
東京都SO・1998年(東京都芸術劇場))
①15分27②15分59③27分13④22分58 計81分37
大阪PO・2001年2月(愛知県芸術劇場)
①14分38②15分04③25分19④22分25 計77分26
大阪PO・2001年7月(サントリーホール)
①14分42②15分27③26分14④24分06 計80分29

 このCDも新譜で発売された時に購入して機器の前に正座しないまでも座って、一気に全曲を聴いて圧倒されたのを覚えています。それに終演直後の間を自分でも追体験というか、仮にその場に居ればそんな反応だっただろうと思いました。それと同時にこういう編集、作り方は反則、販促的じゃないかとも思いました。そのことはともかくとして、1990年代以降の主な朝比奈のブル8のトラックタイムを見ると、このCDと合計演奏時間が近似しているのが1993年の東京SOと有名なN響への客演の二種で、いずれも定評のある録音でした。

 今回改めて久しぶりに聴いてみると記憶の中の演奏とはちょっと違っていて(このブログでは頻繁に起こる、オッサンの記憶はいいかげんなもの)、熱演・爆演、熱狂というタイプとは縁遠くて、第1、第3楽章の透徹した美しさに感心しました。枯れかじけて寒々としているようで隅々まで行き届き、精緻(とまで言えば大げさか)で、誇張の無いブルックナー像に魅了されます。第4楽章もそれまでの楽章とバランスがとれていて、件の客席の歓呼も品位があるものでした。それに会場の音響特性のためか、念入りなセッティングのおかげか音質も良くて一番最初の拍手からして生々しい音で驚きました。このCDが出た後にNHK交響楽団とのライヴ録音が出て、朝比奈のこの曲としてはそっちの方が断然素晴らしいかと思うようになりましたが、この大阪POとの方も負けず劣らず魅力的だと改めて思いました。
20 12月

ブルックナー交響曲第4番 朝比奈、大阪フィル・1993年

151220dブルックナー 交響曲 第4番 変ホ長調 「ロマンティック」 (1878/80年・第2稿ハース版)

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

(1993年7月21,22日 大阪フィルハーモニー,7月23日 サントリーホール,7月25日 大宮ソニックシティ 録音 ポニーキャニオン)

151220c 混んだ公衆W.C(大阪圏)では「今だけ男」という桑原和男ばりの行動に出るオバ、否、婦人もいるそうですが基本的にはトイレは男女別です。しかし家庭や小さな事務所のW.Cは共用であることが少なくなくて、しかも洋式便器が圧倒的に増えています。何が言いたいのか、「両性の平等」の話では無くて男性が「小」の方で洋式便器を使う際にどういうポジションをとるかという問題です。ベント(排出)する時に軌道を外れることや便器や水面に当たった飛沫による汚染が考えられので、自分は大だけでなく小での場合も洋式便器では座ってベントすることにしています。しかも自分の事務所では便座を下して被せずに便器にじか座りしています。それで来客が便所を使う時はどうするか、それとなく事後に確認していると私と同じようにする人の方が多いことが分かります(備付の紙製使い捨て便座カバーを使ったのが分かる)。それでも一定の割合で、直立した姿勢でベントする人も居ます(瀑布の水音で分かる)。

 さてこのところ、たなおろし的にキャニオンの朝比奈・大阪POのブルックナー全集から過去に取り上げていなかったものを順に扱って来て、残りは第4番と第8番になりました。両方とも新譜の時に購入していたのに引っ越しに際してCDを大量処分した時に手放し、それからまた買い直すという愚かなことをしました。第4番はキャニオンの全集だけでなく、朝比奈のブルックナーの中では個人的にかなり好きなレパートリーでした。それにキャニオンの全集の第4番は朝比奈のブルックナーにとっては貴重なセッション録音です(CDの表記もあまりあてにならない場合があるが、ライヴと書いていないし会場の騒音や拍手も無い)。なお、この第4番は高品位の盤で発売されたものは編集が違う(採用したテイクが違う)という話もありました。

 
~ 朝比奈のブルックナー第4番
大阪PO/1993年
①19分24②15分21③12分29④21分04 計68分18
新日本PO/1992年
①18分58②15分01③11分34④20分35 計66分08
大阪PO/2000年
①17分17②13分57③10分51④19分58 計62分03
NHKSO/2000年
①18分32②15分50③11分15④20分46 計66分23

 朝比奈隆のブルックナー第4番について1990年代以降のトラックタイムを並べると上記のようになります。他にもあるかもしれませんが主なところは四種だと思います。こうして合計時間だけを見ても2000年の大阪POと今回のものは6分以上も差が出ています。他と比べても1993年の録音は長めなので、セッション録音ということもあってかじっくりと演奏した感があります。この第4番は第4楽章が印象深くて、多くの他の指揮者の録音はもっと力が入って硬直した感じになると思いますが、朝比奈的なのかどうか、弾力のある自然なスタイルになっています。

 冒頭の話に戻って、来客の中で座って小用を足す人で私と同じような職場・W.C環境の人を考えると、恐妻家的、あるいは周りに女性の方が多い等等デリケートな環境であることが浮かび上がります。一方で洋式便器でも立って用を足す人は「座って用を足す人が不幸せに見えるのは気のせいだろうか」とか信念の下にそうしているのでもないとしても、家の中でけっこうもめることでしょう。便器、便所も小専用、男女別と選択肢が複数あれば結構なのでしょうが。
13 12月

ブルックナー交響曲第7番 朝比奈隆、大阪PO・1992年

151213bブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB.107(ハース版 )

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

(1992年9月27-29日 大阪,フェスティバルホール ポニーキャニオン)

 今年もどんどん残り少なくなってきます。今週は夫婦別姓についての最高裁判決が出ることに注目が集まっています。時代も移り変わるので選択肢は多数あった方が良いので別姓を認める道筋がつけばと思います。国会議員の一票の格差といい、単純なことのようなのに何か見えない壁があるようでなかなか事態は進みません。議員の場合選挙を前にして姓が変わるなら深刻な問題になりそうですが、男女、与野党、選挙区如何でどちらが有利か一概に言えないかもしれません。

 さて、二日続いてブルックナーの交響曲第7番です。この曲は自分の中では愛好・第二グループ(第7、8番)的な位置でしたが、ブログをやってるうちにハイティンク、ACOの再録音やケント・ナガノの録音等を聴いて段々好感度がUPしてきました。

  ~ 朝比奈・ブルックナー第7番
大阪PO/1992年
①20分56②21分13③08分07④12分45 計63分01
新日本PO/1992年
①21分55②23分45③08分46④12分49 計67分15
東京交響楽団/1994年
①22分21②22分09③09分38④13分11 計67分19
東京都SO/1997年
①23分05②23分46③09分27④13分12 計69分30
東京都SO/2001年
①21分46②20分06③08分44④12分21 計63分57
大阪PO/2001年
①21分18②20分40③08分35④13分21 計63分54

151213a  ブルックナーの交響曲第7番は朝比奈のブルックナーの中でも演奏頻度が高く、ブルックナーの聖地で演奏したもの等録音の数も多数ありました。1990年以降に限っても少なくとも上記の六種はありました(記念DVDとか他にもあったようだ)。その中で合計演奏時間だけに注目すると63分台の三種と67~69分台の三種に分けられます。今回のポニー・キャニオンの全集からの録音は一番合計演奏時間が短くなっています。CD付属冊子の解説で今回は「朝比奈スタイルを随所ではみだしている」と指摘して、従来のスタイルから進化しつつあるように書いてありました。そういうマニアックな話は分かりませんが、とりあえず昨日のウィーンPOのブルックナー第7番に負けず劣らずというか、身贔屓を承知で言えばそれ以上の感銘度だと思いました。

 第1楽章のコーダ部分でジュリーニとウィーンPOはそこで一段とテンポを速目ていたのと反対に、ゆっくりと一歩ずつ確かめるように演奏していたのが印象的でした。それも含めて前半の二つの楽章が特に素晴らしくて、そのジュリーニのCDの解説にあった「ブルックナーの音楽の精神的、宗教的側面をことさら強調することなく、いわば純粋に形態美を目指した自律的な解釈の一つの典型」という評がピッタリとあてはまると思いました。どこに書いてあったか忘れましたが、ベームがオーストリアのオーケストラでブルックナーを演奏する際に、団員の日本人に対してブルックナーは日本人には理解できないから退席するよう指示したという話がありました。このCDを聴いている自分も日本人なのでそう思うと言えばそれまでですが、この録音を聴く限りそんな時代は終わったと言って良いでしょう。
6 12月

ブルックナー交響曲第5番 朝比奈、大阪PO・1994年

151206aブルックナー 交響曲 第5番 変ロ長調 WAB.105 (1878年原典稿ハース版)

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

(1994年6月27日 大阪,フェスティバルホール ポニーキャニオン)

 ある程度の年齢になると帯状疱疹にかかることがよくあり、水ぼうそうと同じウィルスが原因というのが奇妙です。今年母がそれにかかったので色々と話を聞いているうちに自分が水ぼうそうにかかった時のことを思い出しました。ひたすら痒くて、外に出られなかったので戦車のプラモデルを買ってもらいました。まだ小学校に入る前でしたが、その天井に屋根が無い旧日本陸軍の戦車はあまり強そうに見えなかったのはよく覚えています。おまけにプラスティック用の接着剤が家に無かったので全然引っ付かず、痒さと共になんともみじめな気分になりました(黒歴史)。その後、図鑑で自衛隊の74式戦車の絵を見ていわゆる戦車らしい外見をしていたので妙にうれしくなりました。もっともそんな戦車が家の周りで火を噴くような事態にならなかったのは幸いなことです。

 先日の第6番に続いて朝比奈と大阪POによるキャニオンの全集から今回は第5番です。この全集の中では伝説的な第8番は特別として、他では第1、3、4、7番あたりが好印象(特に第3番)だったのに対して第5番は個人的にあまり惹かれませんでした。でも朝比奈フアンの間では基本的に第5番は得意レパートリーという認知度で、下記の四種類より古い録音で既に好評を得ていました。

大阪PO/1994年・キャニオンの全集
①22分50②18分51③13分57④24分59 計80分37
東京SO/1995年・キャニオン
①23分21②17分26③13分19④25分18 計79分23
東京都SO/2000年・フォンテック
①23分06②18分19③14分17④25分09 計80分51
大阪PO/2001年・エックストン
①22分55②18分12③14分29④25分37 計81分13

151206b 今回はタイプが異なるヴァントの名演の直後で久々に聴くとどう感じるかと思いましたが、第3、4楽章は人気が出るのも不思議ではないかと思えました。それでも朝比奈のより古い録音よりは大人しく、丁寧に?なった感じでした。ただ、同じキャニオンから出ていた先月とりあげた東京交響楽団の方により魅力を感じました。どちらもライヴ録音ですがホールの性質の影響なのか、東京SOの方が落ち着いた雰囲気だと思いました(特に前半の二楽章)。この大阪POとの録音には第8番の時のような演奏終了後の沈黙や拍手は入っていませんが、どうせなら第5番こそセッション録音で時間をかけてやればよかったのではとちょっと思います。実際ライヴ盤はこれ以降に少なくとも三種は出たわけなので、セッション録音で残せていれば貴重な記録だったと思います。

 1993年から2010年までの期間、月刊レコード芸術誌の月評で朝比奈隆のブルックナーは16点が特選になっています。その中で交響曲第5番は1点、2001年4月の大阪POとのライヴ盤だけでした。数の上では第7番と第8番が圧倒的に多数でした。ちなみに1980年から1992年の期間では1点、1991年1月の東京交響楽団とのライヴ盤のみで、それ以外でもベートーベン交響曲全集の1点だけでした。1990年代半ば頃からは朝比奈の人気というかプッシュが過熱気味でしたが、第5番は好みが分かれていたことがうかがえます。
4 12月

ブルックナー交響曲第6番 朝比奈隆、大阪PO・1994年

151204aブルックナー 交響曲 第6番 イ長調(1881年ノヴァーク版)

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

(1994年4月1-4日 大阪,大阪フィルハーモニー会館 ポニーキャニオン)


 雨があがったら急に寒くなって、それに昨夜はかなり強い風も吹いていました。早めに寝て雨戸の音のせいか目が覚めたので時計を見るとまだ午前1:35でした。普段ならその時刻なら起きていることも少なくない時間帯で、当然まだまだ布団の中に居られるので安心しました。ここ一年半くらいは平日なら五時前後に目がさめて、そこで起きれば健康にも良くて時間も有効活用できるものを、そうせずにあと2時間くらいまどろんでいます。一旦寒さが緩んだ後に急に冷え込んだので今朝は特に起き難く感じました(気温は大したことないのに)。今日は一日中いろいろ寄る所があって、行く先々、いたるとろこで大渋滞に遭いました。山科区の方を走っていると、「義士祭」というのぼりがあり、強風にも負けずに葉っぱが沢山残っている銀杏なんかもけっこうありました。練馬ナンバーとか遠方からの車と大型バスが目立ち、まだ紅葉のシーズンは終わってなさそうでした。

 この朝比奈・大阪POによるキャニオンの全集の中の第6番は当初からあまり好きではなくて、この曲はブルックナー作品の中でも第2番、5番、9番と並んでかなり好きなのに、このCDだけは感心しないと思っていました。久しぶりに聴いても印象は変わらず、特に第1楽章が思いっきり長く感じられました。まだ続くのかと思うくらいで、実際のトラックタイムを見るとこのCDだけが特別でもなさそうです。第2楽章こそ本当に長目ですがこの楽章は第6番が次の第7番とだぶって聴こえるようで、これだけを聴いていると魅力的です。

朝比奈・大阪PO/1994年
①16分01②19分11③9分11④14分38 計59分01
ヴァント・北独RSO/1995年
①16分37②15分57③8分50④13分41 計55分05
ブロムシュテット・サンフランシスコ/1990年
①16分36②18分49③8分15④14分04 計57分44
ヴァント・NDRSO/1988年
①16分06②15分47③8分57④13分27 計54分17
クレンペラー・ニューPO/1964年EMI
①17分02②14分42③9分23④13分48 計54分55

 あまり否定的なことを根拠も無く連ねても仕方ないので略するとして、キャニオンの全集の中でセッション録音だった四曲、第1-3番と第6番の中でもこの第6番は割と好評だったはずです。それに第6番は朝比奈も演奏頻度は高くなくて、これ以外にはライヴ盤が二種あるのみです。ジャン・ジャンの全集に入っている1977年9月、東京交響楽団との1984年1月で、いずれも東京文化会館での収録でした。それらの両方を聴いていますが正直どんな感じだったかよく覚えていません。それで、abrucknerコムのサイトにあるディスコグラフィから各年のトラックタイムを並べると下記のようになり、基本的には長目、遅目の演奏のようです。

~朝比奈のブルックナー第6番
大阪PO/1994年
①16分01②19分11③9分11④14分38 計59分01

大阪PO/1977年
①17分44②17分08③9分17④15分04 計59分13
東京SO/1984年
①15分41②19分42③8分23④13分57 計57分43

 ブルックナーの交響曲の中で第6番は大好きな曲ですが、この一曲は他とは違って素朴な、泰然とした魅力だけではなく、時々作品解説で指摘されるような実験的、革新的な曲という尖った要素が多く入っているような気がして、そんなことを意識させる演奏に魅力を感じていました。第6番は、ブルックナーの交響曲をあまり録音していないのにこの曲を含んで数曲だけ録音した指揮者も居るので、それがレコード会社の都合ということもあったかもしれませんが、演奏する側にとっても第6番が独特の魅力があったかもしれません(クレンペラーが第6番にこだわっていた)。このCDは第4楽章も穏やかで威圧的なところがあまり無く、やはり独特だと思います。そう言えばクルト・アイヒホルンの第6番もそうした面があったと思いますが、そっちの方は初めて聴いた時から圧倒的に惹きつけられ、第6番には欠かせないくらいに思っていました。

24 11月

ブルックナー交響曲第5番 朝比奈、東京交響楽団・1995年

151124aブルックナー 交響曲第5番(1878年原典稿ハース版)

朝比奈隆 指揮
東京交響楽団

(1995年4月12日 サントリーホール ライヴ録音 Pony Canyon)


 三連休は何もしないうちに去って行きました。先週金曜日、奈良と京都の境辺りの青空市で五目飯とおからを買った頃から胃の調子が悪くなり(そこで売ってた物のためじゃない、食べる前からおかしかった、念のため)、空腹でもないのに食事にしたのが悪かったのか夜になると正真正銘に胃が痛くなってきました。昔から、家系でも腸は強くないのに胃だけは強く、滅多に胃痛の症状が出たことは無かったのでとうとう何らかの病気かもしれないとも思いました(このディオが胃が痛いだと?)。連休中は大人しくしていたので大分回復しましたが、どこか具合が悪いところがあると気分も沈みがちなものです。そこで薬のような感覚も兼ねてブルックナーの第5番を聴いてみました。

 朝比奈隆のブルックナーの中でも第5番は自分の好みとしてはあまり好きではありませんでしたが、この東京交響楽団とのものは何故かとっつき易い気がしていました。特に前半の二つの楽章が静謐な感じで、終楽章も荒々しくならないからそう感じるのでしょう(演奏終了時の完成も一応余韻がが消えてから起こり、ブラヴォーの声もそこそこ上品)。

151124b 昨年末から今年の初めに小説家の森内俊雄が「聖書のエルサレム版英文訳を読んでいると、このごろ行間からブルックナーが響いてきたりする」ということを書いていたとブログ記事に載せていました。すごい境地だと思いつつ、「絶対音楽=交響曲」を地で行くヴァントの演奏からはそんな感覚は生まれるのか?とも思っていました。その内に日本語の使徒書簡、コリント人への第一の手紙第14章33にある「神は混乱を引き起こす方ではなく、平和をもたらすかなたなのです」という一文を思い出しました。交響曲第5番の終楽章が終わりにさしかかり、交響曲第2番の初期稿から第3番、第4番の各初期稿へと続いて来た創作に区切りが付いて、何か大伽藍が完成して献堂を迎えるような達成感をおすそ分けされるような気分になった時にその言葉がふと頭をよぎりました。ただし、最初は別の日本語訳、「神は無秩序の神ではなく、平和の神」という言葉でした。

東京SO/1995年・キャニオン
①23分21②17分26③13分19④25分18 計79分23
大阪PO/1994年・キャニオンの全集
①22分50②18分51③13分57④24分59 計80分37
東京都SO/2000年・フォンテック
①23分06②18分19③14分17④25分09 計80分51
大阪PO/2001年・エックストン
①22分55②18分12③14分29④25分37 計81分13

 別段ブルックナーの交響曲と関係がある事柄ではありませんが、何となく「無秩序の神ではなく」という言い回しが面白くて、朝比奈の古いブルックナー第5番の終演後の「雄叫び」が思い出されました。この録音もライヴなので演奏が終わった後の拍手なんかが入っています(トラックタイムはその分を除いている)。しかし、演奏が終わってから声があがり、演奏、残響にかぶせるようなことはありません。朝比奈隆指揮のブルックナーはかなり種類が増えて第5番も何種あるのか未確認です。これは東京都交響楽団ではなく、東京交響楽団の設立50周年を記念して発売されたものでした。紛らわしい名前ながら東京交響楽団は前身が東宝交響楽団でした。

22 11月

ブルックナー交響曲第9番 朝比奈、NHK交響楽団

151122bブルックナー 交響曲 第9番 ニ短調 WAB.109(1894年原典 Alfred Orel版)

朝比奈隆 指揮
NHK交響楽団

(2000年5月25,26日 ライヴ録音 フォンテック)

 昨日の朝遅く、陽の既に高い頃、携帯に着信がありました。事務所の固定電話からの転送か直接に携帯へかかってきたのか確かめずに出ると、何と大阪府・市のダブル選挙の調査で、コンピューターで無作為に抽出した番号へかけていると言いました。それが本当なら携帯へかかったのだと推測(市外局番は考慮するだろうから)され、質問が六つもあると聞くと通話料金がもったいなくなりそこで切りました。せこい動機ながら、受信している者が番号を推して回答するので新手のワンキリ詐欺のおそれもあり、回答はしませんでした。その選挙、両方とも大阪維新の当選確実のようです。それはともかくとして、大阪フィルの来年度のプログラムが発表され、再来年には井上ミッキーの指揮でショスタコーヴィチの交響曲第11、12番を一度に演奏する回がありました。その定期が流れないよう、府、市政も他の在阪オケ共々あたたかく見守ってほしいものです。

151122 朝比奈隆が大阪フィルハーモニー交響楽団の前身、関西交響楽団の定期公演で初めてブルックナーの交響曲を演奏したのが第9番でした(1954年2月26日、第68回定期)。そして朝比奈がNHK交響楽団に客演して初めてブルックナーの交響曲を取り上げたのも第9番で、1978年9月のことでした。このCDのライヴ音源はそれから22年ぶりの両者によるブルックナーの第9番ということになりました。亡くなる前年に彼自身が「日本一の音」書き記したオーケストラとこの曲を演奏出来て良かったと思います。ちなみにこの年の11月には第4番、1997年3月には第8番をN響と演奏していてそれぞれフォンテックからCD化されました。

~朝比奈のブルックナー第9番
NSO・NHK-Hall/2000年5月
①27分22②11分11③25分49 計64分22

大PO・Sy-Hall/2001年9月
①27分16②11分22③23分33 計62分11
大PO・Sy-Hall/1995年4月
①26分50②11分41③24分32 計63分03

151122a このように感慨深げに書き出したものの、実は朝比奈のブルックナーの中で第9番、第5番はあまり自分の好みでは無くて、一連のN響との録音もあの圧倒的な第8番に比べるとかげが薄いと思っていました。改めて今回聴いてみると第三楽章だけは別物的に素晴らしく、途中でオーケストラの中にオルガンの音色が混じっているようにも聴こえ(それが良い事かどうかは何とも言えない)、ブルックナー最後の交響曲に相応しい風情だと思いました。そのわりに第一楽章は遅くて、鈍重な印象で、後続の感銘深さとは異質なものがつなぎ合わされたようでした。翌年に大阪POを指揮したライヴ録音も第一、二楽章は似た演奏時間になりますが、こんな印象だったかどうかよく覚えていません。

 先月末に朝比奈のブルックナー第9番を取り上げた時もそうでしたが、今回もヴァントの録音を併せて聴いていました(今回はベルリンPO)。朝比奈のブルックナーのCD解説には時々「朝比奈のはブルックナーそのもので、ヴァントのは彼が解釈したブルックナー(正確言葉は覚えていないがそういうニュアンス)」と評されていました。このところ交響曲第9番を両者の録音で聴いているとむしろ逆傾向じゃないかと思いました。ヴァントはベルリンPOへ客演した際に「解釈しないで」と何度も呼びかけたそうで、実際に録音を聴いているとまさしくそういう演奏じゃないかと思いました。
30 10月

ブルックナー交響曲第9番 朝比奈、大阪PO・1995年

151031aブルックナー 交響曲 第9番 ニ短調 WAB.1009

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団


(1995年4月23日 大阪,ザ・シンフォニーホール ポニーキャニオン)

 十月もあと一日となったところで思い出すと今月は教皇レオ13世(1878~1903)が正式に定めた「ロザリオの月」でした。先端に十字架が付いた輪っかに数珠のように珠が連なっているネックレスのようなあれは、本来ロザリオの祈りをする際に珠をくって回数を数える道具でした。ロザリオの祈りの中で文語調の天使祝詞と言っていたものが口語になり、現在では正式に「アヴェ・マリアの祈り」に改まりました。ただ、「めでたし、聖寵みち満てるマリア」で始まる文語調のものも語呂が良いというか、唱え易くて何となく名残惜しい気もします。それで直接関係は無いものの、ブルックナーの同曲の異版について有名なブルックナー指揮者だったG.ヴァントと朝比奈隆は旧全集であるハース版を愛用していたのが思い出されます。特にヴァントはハース版、作曲者本人の最終意思を尊重するという立場を貫いていました。
 
151031b このブルックナー第9番は朝比奈隆と大阪フィルがポニー・キャニオンに録音したブルックナー全集の一環で、1995年4月23日(日曜日)の公演を中心に録音されたものです。CD付属冊子には録音の詳しい経緯は書いてありませんが、確か当初は採用された音源とは別のコンサート当日での録音をCD化するはずが、出来上りを聴いた朝比奈が満足しなかったので録り直したというのを読んだことがあります。あるいは公演当日のものを不採用にしてリハーサルのものを使ったか、同じ曲の次の公演のリハーサル時に録り直したのかもしれません。何故そんなことにこだわるかと言えば、当時第9番のCDをシンフォニー・ホールのコンサートで録音すると知ったので聴きに行ってあわよくば拍手か何かでマーキングしようかと思っていたからです。結果は予定変更になり上記のような顛末でした。

 当日の演奏は正直あまり感銘を受けなかったというか、期待が大きかった分だけ普通過ぎるように思えて逆に軽く感心しました。というのは全集企画の第8番が終演後の沈黙が話題になったようにかなりのインパクトだったので、是非とも会場で直に聴いて確かめたいと意気込んでいました。
それが日曜日のお昼からということもあり途中で眠気に襲われて、冬山の遭難者が目を閉じたら凍死するからと必死になるように何とか眠るまいと踏ん張っていましたが、途中で記憶が抜けている部分がありました。はっと我に返った時に流れていた部分は起きている時とさして変わらないようでさすがブルックナーだと妙に感心しました。

~朝比奈のブルックナー第9番
大PO・Sy-Hall/1995年4月
①26分50②11分41③24分32 計63分03
NSO・NHK-Hall/2000年5月
①27分22②11分11③25分49 計64分22
大PO・Sy-Hall/2001年9月
①27分16②11分22③23分33 計62分11

 それで発売されたCDを聴いた時はやっぱり今一つのように思いましたが、そもそも居眠りするような聴き手なので豚に真珠くらいとも言えるでしょう。今回のものはその後買い直した(引っ越し時にCDを大量処分したので)SACD仕様です。久しぶりに聴いてみると、1995、6年当時よりもずっと良く聴こえ、CD帯に書いてある「20世紀最高」というのはさすがにどうかと思うものの、もっと古い朝比奈のブルックナーに対する雑で荒々しい印象は薄れ、最晩年のブルックナーに相応しい演奏だと思いました。朝比奈指揮のブルックナー第9番はこれ以降でも、最後のブルックナーになってしまった2001年9月24日(大阪PO)、N響へ客演した2000年5月25-26日のライヴ盤、東京交響楽団へ客演した1996年4月13日のライヴ盤がありました。 
19 5月

ブルックナー交響曲第2番 朝比奈隆、大阪PO・1994年

150520aブルックナー 交響曲 第2番ハ短調 WAB.102 (1877年稿・ハース版)


朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団


(1994年1月24-27日 大阪フィルハーモニー会館 録音 Pony Canyon)

 こえられない壁、という言葉を安易に使うのは教育上良くないとしても何らかのかたちでそういうものはあるだろうと思います。坂本龍馬の土佐藩なら郷士と藩の上士という身分の壁とか、フィギュア・スケートでカタリーナ・ヴィットや伊藤みどりが出ていた頃のオリンピックなら日本選手が金メダルを狙えるとは思えなかった、そんな例が頭に浮かびます(自分の身にかかわることは置いておくとして)。何の話かと言えば、カールベームがドイツかオーストリアの放送局のオケに客演してブルックナーを指揮した時、団員に日本人が居るのが分かると「日本人にブルックナーは理解できない」と断じてその団員を退出させたという話、それをCDのライナーノーツで読んで感心半分と我に返る(異文化圏の東洋人だった)こと半分で驚いていました。本当にそんなことがあったのか、書いている人も直接自分が経験したことではなさそうですが、そんな考えがあっても不思議ではないと思います。

150520b ベームがそんなことを言ったのはいつだったのか、見当を付けるならざっくり1960年代か1970代前半くらいでしょう。そんなエピソードに打ちひしがれかけた時、朝比奈隆が1976年4月から1978年1月にかけてブルックナーの九曲の交響曲を録音し終えていた(ジァン・ジァンの全集)ことを思い出しました。それに1975年にはリンツ、聖フローリアン大聖堂でも演奏(奉納)していたので、ベームがそんなことを言ったのはもっと古い話だったことでしょう。

150520 今回のものは朝比奈の三度目、最後に録音した交響曲第2番にあたります(朝比奈隆は上記の初回全集を含めてブルックナーの交響曲第2番を三度録音しています)。伝・ベームの言葉に対する反証としてさんざん朝比奈隆のブルックナーを持ち上げていながら、実は第2番は今一つピンと来ないと思っていて、こういう機会に改めて聴くと印象が変わるかと思って聴いてみました。やっぱり以前と同じで、ポニー・キャニオンへ録音された大阪POとの全集シリーズでは第1、3、4、7番が個人的には印象深くて、それに比べると何となく沈滞したような感じが拭えません。第2番のフィナーレは風が吹き抜けるような流動感が多かれ少なかれ感じられ、この録音はその点がかなり弱いと思いました。ちなみに新譜で出た時のレコ芸の月評では特選にはもれていました(第1、6、7、8番の四曲が特選)。

朝比奈・大阪PO(1994年)
①20分02②17分44③12分27④21分13 計72分26
朝比奈・東京都SO(1986年)
①19分19②16分04③09分11④20分22 計64分56
朝比奈隆・大阪PO(1976年)
①19分12②18分30③10分25④21分45 計69分52

 全体的に遅いという印象ですが前半の二つの楽章、特に第二楽章は魅力的です。CD付属の解説によると終楽章はキリエ・エレイソンのテーマを含む部分(540-562小節)をカットしています。590-651小節は楽譜通りカットせずに演奏しているから、「ヘ短調ミサ曲」からの引用部分もそのまま演奏してほしかったとコメントされていました(前回のズヴェーデンはノヴァーク版を使用してキリエ・エレイソンのテーマはカットしていない)。

エッシンバッハ・ヒューストンSO(1996年)
①20分27②20分02③10分48④19分30 計70分47
ヴァント(ケルン 1982年)
①19分07②15分42③07分53④16分05 計58分47
シュタイン・VPO(1973年)
①17分59②16分25③06分13④16分39 計57分27
ヨッフム・バイエルンRSO・1966年
①17分57②14分05③06分37④13分17 計51分55


 ただ、同じくハース版で演奏していたヴァントやシュタインの第四楽章は短めなのでカットとは無縁でないはずです。だから異文化圏の人間だからカットに抵抗がないとかそんなことはないでしょう。第4楽章のトラックタイムの数字のみに注目しても朝比奈はもとから遅めに演奏する傾向がみられます。ヨッフムの旧全集盤はカット部分が多いとしても今回の朝比奈盤とは6分以上も差が出ています。

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raimund

昭和40年代生まれ、オットー=クレンペラーの大フアンです。クレンペラーが録音を残したジャンルに加え、教会音楽、歌曲、オペラが好きなレパートリーです。

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