アントニオ・デ・アルメイダ 指揮
アニタ:ルチア・ポップ(S)
ブスタメンテ:クラウデ・メローニ(Br)、他
渡鬼のことで、嫁と姑のドラマを思い出していると何故か記憶に残っているのが「外科医 有森冴子」という連続ドラマのある回でした。二組の老婦人が入院、相部屋になり、それぞれの嫁が病室にやって来るというもので、入院患者の一人は山手、インテリ的、もう一人は下町風という設定で、息子の嫁もそれぞれの暮らしぶりと似たタイプでした。嫁姑の関係は良くなく、姑は嫁が「何をしても気に入らん」的で病室に差し入れるカステラ、煎餅がそれぞれ気に入らないときました。ある日、相部屋の片方が不在のタイミングにその不在の婦人の嫁がやってきました。山手風婦人と元ヤン嫁は気が合いそうにないはずが、その嫁が持ってきた煎餅を美味しいと言って褒め、自分のところの嫁は気が利かない、カステラは入れ歯の裏に付くとか言い出します。この演出なので逆の組み合わせ、下町婦人と山手の嫁とのやりとりも描かれ、下町のおばさんがカステラを美味い、こういう所にいたら普段と違うものを食べたくなるものだとかと褒め上げ、返す刀で自家の嫁をけなしています。各嫁が自分の姑に持って来た時はけなされていたのに、同じ年齢でも相手が姑ではない場合には褒められるという矛盾が面白いというネタでした。原発の冷却廃液を海に放出する件、中韓が同じような海洋放出をする場合は日本でも結構攻撃する人が出るんじゃないかと想像していました。
ジュール・マスネのオペラ「ナヴァラの娘」は2018年1月に藤原歌劇団によって日本初演が行われました。だからその公演のサイトがネットで見ることができ、この全然知らなかったオペラの解説が読めてありがたいことです。ナヴァラ出身のアニタがヒロインで、その姑ではなくしゅうとに当たる(結婚できなかったので厳密には違う)レミージョが息子アラキルとの結婚に反対、妨害するという話でした。このレコードを購入したのは作品がどうのとかではなく、ルチア・ポップが出ているという一点だけが目当てでした。ヒロインのアニタはフィナーレの方で恋人のアラキルが死んだことを知って発狂して、狂ったような笑いかたをします。ポップはそれを堂々と演じ、歌い切っていました。こういう表現は他の作品でもなかったので珍しいパターンです。ポップは歌うだけでなく例えばR.シュトラウスのインテルメッツォのような作品での、歌いながら演技するという表現にも長けています。この録音より少し前のコジ・ファン・トゥッテ全曲盤(クレンペラー、ニューPO、EMI)で歌ったデスピーナもなかなか面白い味わいでした。
このオペラ、「ナヴァラの娘」はマスカーニらに代表されるヴェリズモオペラに分類される内容で、1894年6月20日にロンドンのコヴェントガーデンで初演されました。二幕で構成されてLPレコード一枚に収まっています。19世紀後半の内乱状態のスペイン、バスク地方を舞台にした物語で、ナヴァラ生まれの娘アニタが立憲君主派の兵士アラキルとの結婚を反対されて多額の持参金を条件とされたので敵方、懸賞金がかけられた絶対君主派の将軍を暗殺しようとします。見事成功して戻った時にはアラキルが瀕死の状態であり、やがて亡くなり、アニタが半狂乱となるという結末です。音楽的にはアリア部分と対話部分にはっきり分かれるのではなく、その境目が曖昧で楽劇のような進行をします。途中で軍隊のラッパを表すフレーズが出て来てマーラーの交響曲を思い出させます。
主なキャストの中ではアラキル役、テノールのアラン・ヴァンツォ(Alain Vanzo 1928年4月2日,モンテカルロ – 1月2002年27日)も個性的な、癖がある歌唱とも言える歌手でフランス・オペラ等で有名だったようです。ジェラール・スゼーがアラキルの父、二人の結婚に反対するレミージョを歌っています。指揮のアントニオ・デ・アルメイダ(Antonio de Almeida 1928年1月20日 - 1997年2月18日)はどこかで名前を見た覚えがある程度で、オペラ以外に代表的なレコードがあったかどうか分かりません。このレコードと同じ1975年にRCAもロンドン交響楽団を起用して全曲盤を制作していました。