ホルスト・シュタイン 指揮
このCDは昨年12月、サッカーのワールドカップの直前に聴いていて、結局記事化途中で放置していたものです。いつのワールドカップの時か、サッカー好きで知られる明石家さんまが妙に辛辣なことを言っていました。普段は国内外のクラブチームのリーグ戦なんか見向きもしないのに、国別対戦のW杯になると急に騒ぐ層に対して、サッカーが好きなのではなく、日本が外国と対戦する(対戦して勝つ)のが好きなだけだと。かたいことを言わず、万事そんなものだとして、先月のある日、ベームとウィーン・フィルのブラームス第2番を聴いて、いつになく爽快な気分になり、改めてこのCDを聴く気になりました。自分の中の定番としては梅雨に入る頃は悲愴交響曲と決まっていましたが、ブラームス第2番で潮目が変わりかけです(あくまで気分が、現実は別に変化なし)。
そのベームを聴いた直後に改めて聴いたらこのシュタイン、バンベルクSOの方は妙に地味に、滑らかに聴こえて、ワーグナーの楽劇の演奏の際とはだいぶ違う感じです。何となくスウィトナーのブラームスに似ている気がしました。シュタインのブラームスは過去記事で扱っていて、その際に聴いた印象では第2番はシュタインの演奏に一番合いそうな気がしていました。しかし色々聴いているとそう単純でもありませんでした。レコ芸の月評で「推薦、準、無印」と評者はランク分けしていましたが、休刊するとなって振り返るとあれもかなり難しい業務だと思います。ところで1997年の録音ならもう新譜はCDのみになっていたと思いますが、シュタインのシューベルトはLPも出ていました。
シュタインの方が干支で一回り以上も若いことになりますが、このCDの解説にはヴァントとはタイプが異なる指揮者だと、バンベルク交響楽団でホルン奏者を長らくやっていた方の話が載っていました。指揮者には「自分のイメージをしっかり持っていてオーケストラを引き込もうとする」人と、「オーケストラの個々の奏者を尊重して任せてくれる」人があって、シュタインは後者であり、ソロの部分があれば「さあどうぞ、思う存分歌ってください、僕がつけてあげます」とばかりに指揮したそうです。その話とは対照的にホルスト・シュタインはまた、大声で怒鳴りまくる昔気質の楽長タイプ(どこかに書いてありました)という面があったそうなので、N響に何度も客演してTV放送でも顔が知れて身近な音楽家ながら日本でのリハーサルはどんな感じだったのかと思います。