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新・今でもしぶとく聴いてます

R.シュトラウスのカプリッチョ

10 2月

R.シュトラウスのカプリッチョ シュヴァルツコップ/ウィーン1960年

190210リヒャルト・シュトラウス 歌劇「カプリッチョ」Op.85

カール・ベーム 指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団

マドレーヌ:エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)
伯爵:ヘルマン・ウーデ(Br)
フラマン:アントン・デルモータ(T)
オリヴィエ:ヴァルター・ベリー(Br)
ラ・ローシュ:パウル・シェフラー(Bs)
クレーロン:クリステル・ゴルツ(A)
イタリア人歌手:エリカ・ケート(S)
イタリア人歌手:ジュゼッペ・ザンピエーリ(T)、他

(1960年5月15日 ウィーン国立歌劇場 ライヴ録音 Membran/Golden Melodram)

 リヒャルト・シュトラウス最後のオペラ、カプリッチョの全曲盤は案外数が少なく、作品自体が「ばらの騎士」ほどはメジャーじゃないこともあってか決定盤的な評判のレコードなりCDが前面に出てくる機会もあまり無いようです。そんな中でベームのDG盤はかなり好評のようでした。個人的には特別な感銘度ではなく、過去記事で扱ったものの内心で何とコメントしたものかと思っていました。それはルチア・ポップとホルスト・シュタイン、バンベルクSOらが月光の音楽以降、最後までを抜粋録音したものの印象が強烈で、マドレーヌなら彼女の声をまず思い出すようになり、他のものは耳に入りにくい症状だったからでした(シュタインとバンベルクSOも素晴らしかった)。

 これはDG盤の約十年前にウィーン国立歌劇場で収録したもので、マドレーヌがシュヴァルツコップであるほか、一世代前くらいの名前が並んでいます。冒頭に拍手が入り、弦楽六重奏の前奏曲のところで既に優雅な別世界に連れてこられた心地になり、一気に引き込まれます。これはベームだからか、ウィーンだからか、それよりもライヴ音源の音質やら拍手なんかの影響なのかもしれません。ほとんどセリフだけの箇所でも何をしゃべってるか分からないながら得も言われぬ魅力を感じます。

 先日の「アラベラ」の時も思ったのがカプリッチョやアラベラのよう作品は特に場面の空気というのか、演奏だけで現わせないかもしれない情緒のような要素も大きなウェイトを占めそうで、これは聴き手側が作品世界と同じ文化圏に生きているとか色々共有しているかどうかも関係しているとも想像できます。そうだとすれば自分の場合は間違いなく門外漢のはずですが、物珍しさか憧れなのか実態は分からないのに聴いていると妙に惹きつけられます(反感や疎外感ではなく)。

 カール・ベームは日本でも一定の年代まで絶大な人気だったようですが、その当時はベームのレコードを購入できる年代じゃなかったのでごく一部しか聴いておらず、カヤの外状態でした。その後CD化されたものを聴いていると個人的にはあまり惹かれるものはなくて、ワーグナーの指環四部作(バイロイト)か、1950年代のブラームスとかくらいが例外的に良いと思ったくらいでした。このカプリッチョはそれに並ぶかそれ以上の感銘度なので、さすがシュトラウス門下だと改めて思いました。
12 10月

R.シュトラウスのカプリッチョ フレミング、エッシェンバッハ、VPO

151012リヒャルト・シュトラウス 歌劇「カプリッチョ」Op.85

クリストフ・エッシェンバッハ 指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団

伯爵令嬢マドレーヌ:ルネ・フレミング(S)
伯爵:ボー・スコウフス(Br)
作曲家フラマン:
ミヒャエル・シャーデ(T)
詩人オリヴィエ:
マルクス・アイヒェ(Br)
支配人ラ・ローシュ:
クルト・リドル(Bs)
女優クレーロン:
アンゲリカ・キルヒシュラーガー(A)
トープ氏:ミヒャエル・ロイダー(T)
イタリア人歌手: イリーデ・マルティネス(S)
イタリア人テノール: ベンヤミン・ブルンス(T)
家令:クレメンス・ウンターライナー(Bs)、他

演出・装置・照明:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
衣装:ダグマール・ニーフィント
振付:ルーカス・ガウデマク

(2013年6月27日 ウィーン,国立歌劇場 ライヴ収録 C Major)

 昨日の午後、第二名神のI.Cが出来る予定の城陽市方面へ行ったところ、既に大久保バイパスの南部が曲げられて工事モードになっていました。無駄な公共工事は要らないキャンペーンが起こった時に工事が凍結されたのでかなりずれ込んできましたが、完成後は近畿道やら名神だけでなく一般道の渋滞も緩和されるだろうと期待します。そして今日はノーベル賞最後の経済学賞の受賞者が発表されて、アンガス・ディートン(Angus Deaton)氏が受賞しました。経済学賞は日本からの受賞者はまだでしたが、この分野は我々下々の暮らしが良くなることの方に関心がいきます。それにしても第二名神やら何とかダム等々、あれらは本当のところ無駄な事業だったのかどうか、流行の移り変わりに付いて行くのが大変です。

151012a このソフトは2013年6月にウィーン国立歌劇場で行われたリヒャルト・シュトラウスの最後のオペラ「カプリッチョ」のライヴ収録盤です。国内盤仕様じゃないのに珍しく日本語の字幕が付くのも嬉しい規格です(中韓の字幕が付いても日本語字幕は日本国内盤が別に出るからか、省かれていることが最近多い)。カプリッチョの伯爵令嬢マドレーヌ役はここ十年くらいアメリカ出身のソプラノ、ルネ・フレミング(Renée Fleming 1959年2月14日 - )が歌ったソフトが何種かありました。この演目だけでなく、ティーレマンが彼女を呼んでいたり、R.シュトラウス作品には欠かせない存在になっています。TV(CS)で放映されたかもしれない公演ですが、2004年7月にパリ・オペラ座での公演のソフトにもフレミングが出ていたのでそれから約9年経っているわけです。

151012b 年齢のことはさて置き、このウィーンの舞台でも彼女は見ばえがして、フィナーレの月光の音楽以降では特に光線の加減もあってかまだまだ容色は衰えていないように見えました(まわりくどい言い様)。このオペラはフィナーレ部分は別としても、音楽だけでは魅力が伝わりきれいないようで、その点はこの公演のキャストは適役がそろっていて観ても聴いても素晴らしいものでした。フレミングは単にきれいな、というだけでなく笑いの要素も解するような余裕と寛容な知性(台本ではマドレーヌを知的と強調している)のようなものがきらめいています。そうやってほめながら、自分の好みとしては声の質は彼女がこの役の絶対的な存在とまでは言えない気がします。それはルチア・ポップがシュタイン指揮、バンベルクSOと共演したR.シュトラウスの名場面集の中のカプリッチョのフィナーレが特に素晴らしかったので、その印象がなかなか消えずにいるからです。

 それは1988年の録音なのでこのソフトのフレミングよりはポップの方が十歳くらい若いはずですが、それでも視覚的には微妙かもしれません。1988年にミュンヘン・オペラの来日公演にポップも来ていてアラベラを歌ったそうで(カプリッチョも演目にあったと思ったが違うようだ)、その映像か音源があればぜひ聴きたいところです。

 このソフトと直接関係ないことはそれくらいにして、マドレーヌ以外では支配人ラ・ローシュ役のクルト・リドルとクレーロン役のアンゲリカ・キルヒシュラーガーが特に目立ち、歌声だけでなく舞台上の演技も含めて存在感が圧倒的でした。演出、衣装、セットは本来の時代設定を基本にしながらあまり古くさくならないように現代的なデザインが入っています。2004年のパリの公演のように、登場人物が劇中の劇を観ているというひねった設定ではなくシンプルに観ることができます。指揮のエッシェンバッハも優雅で、照明を照り返すヘアスタイルほどはギラギラしていなくて好印象です。
19 8月

R.シュトラウスの「カプリッチョ」 シルマー、テ・カナワ、VPO

130819aリヒャルト・シュトラウス 歌劇「カプリッチョ」Op.85

ウルフ・シルマー 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

伯爵令嬢マドレーヌ:キリ・テ・カナワ(S)
伯爵:ホーカン・ハーゲゴード(Br)
作曲家フラマン:ウーヴェ・ハイルマン(T)
詩人オリヴィエ:オラフ・ベーア(Br)
支配人ラ・ローシュ:ヴィクター・フォン・ハーレム(B)
女優クレーロン:ブリギッテ・ファスベンダー(A)
トープ:ヴェルナー・ホルヴェーク(T)
イタリア人歌手:アンナ・リタ・タリエント(S)
イタリア人テノール:ロベルト・サッカ(T)
家令:ゴットフリート・ホーニク(B)
召使:ハンス・ホッター(B、他

(1993年12月 ウィーン,コンツェルトハウス・大ホール 録音 DECCA)

 先週北嵯峨地区を通った時、田圃の稲がかなり育って来ているようで台風の直撃がなければ豊作になるのかと思って見ていました。ところがTVのニュースでは今年は猛暑のため、実りは良くないという見方でした。特に40℃とか気温が上がりすぎたところや、雨が少なかった地域はてき面のようです。それを聞いてから別の場所で稲穂を見てみましたが、そんなに悪いようには見えませんでした。あと、昔はよく見かけたイナゴが全然いませんでした。小学生の頃は葉のところにけっこうチョロチョロしていました(捕って食べないけど)。

130819b リヒャルト・シュトラウス最後のオペラである「カプリッチョ」は第二次大戦中の1942年10月28日にミュンヘンで初演されました。独ソ戦が激化し、ホロコーストの収容所が稼働している只中でそんな気配が全然感じられない作風はあきれるほど程見事です。フランス革命の十数年前のパリ郊外の館を舞台にしたオペラ「カプリッチョ」の台本は、クレメンス・クラウスと作曲者が共同して作りました。作曲家フラマンと詩人オリヴィエ、未亡人のマドレーヌをものにするのはどちらか、オペラにとって「まずは音楽、それから言葉」なのか、そんなことを争いながらついに決着が付かないまま(期限の前日の夜のまま)幕が下りるこのオペラは、徹底的に現実を離れて美の世界に沈潜しているようです。なかば意固地になってこういう作品を作っているようにも見えます。

 そうした理屈は抜きにして、ヒロインのマドレーヌの美しさは特別で、劇的なオペラではないのに歌の美しさで際立っています。このCDはカプリッチョの録音としては新しい方ですが、何となく歌手が芝居がかり過ぎているような気がしてあまり好きではありませんでした。久しぶりに聴いてみると、特にオーケストラは素晴らしいと思います。それでも、ウィーンPOがウィーンで録音しているとはいえ、当然オーストリア帝国時代の残り香のようなものはもう無いのだろうと想像できます。ハンス・ホッターは四十年前のクレメンス・クラウス盤ではラ・ローシェ役で参加しているので、歌いながらそんな世相の移り変わりを感じたかもしれません。

 指揮のウルフ・シルマー(1959年~)は東京の新国立劇場には度々登場していてカプリッチョも振っています。ホルスト・シュタインにも師事してドイツのオペラハウスのポストを渡り歩いたシルマーはこのオペラを得意としているようで、確か後に映像ソフトも収録していたはずです。この録音も同じメンバーの公演(豪華な顔ぶれ)を見れば印象も違うのだろうと思います。

 このオペラの最終場面はそこだけを抜き出して、月光の音楽と続けて収録される場合も結構ありました。そんな中で、ホルスト・シュタイン指揮でルチア・ポップがマドレーヌを歌った録音は未だに強烈に印象に残っています。ただ、そのポップも視覚的にはどうかとも思えます(フアンは良いと思うはずだが)。高貴とか富裕には縁の無い身なので、よく分かりませんがこのCDのテ・カナワの写真はなかなかきまっているように見えます。

18 11月

R.シュトラウスのオペラ「 カプリッチョ 」 クレメンス・クラウス

リヒャルト=シュトラウス  歌劇 「カプリッチョ」
台本:クレメンス・クラウス
  原作:A・サリエリのオペラ『まずは音楽、それから言葉』より

クレメンス=クラウス 指揮 バイエルン放送交響楽団

伯爵令嬢マドレーヌ(S):ヴィオリカ・ウルズレアック
伯爵・マドレーヌの兄(Br): カール=シュミット・ワルター
作曲家フラマン(T):ルドルフ・ショック
詩人オリヴィエ(Br):ハンス・ブラウン
支配人ラ・ローシェ(B) ハンス・ホッター
女優クレーロン(A) ヘルタ・テッパー
トープ氏(T):エミール・グラーフ
イタリア歌手(S):イルゼ・ホルグ
イタリア歌手(T):
家令(B):ゲオルグ・ヴィーター 、他

(1953年 ミュンヘン録音 WALHALL)

  夕方に京都市役所の北西方にある白山神社の前を通ると、小さな境内に薪が四角く組んであるのが見えました。お火焚祭というのがあるそうで、それの準備でした。住宅が建てこんでくると、唱歌にあるように庭先で焚き火というわけにはいかなくなりました。この白山神社は現在はごく小さい敷地ですが、昔は数倍以上の規模だったそうです。

111118a   このR.シュトラウス最後のオペラ「 カプリッチョ 」は元々好きではない、というより収容場で人間が塵芥のように処理されている一方でこんなものを作っているということに反感を覚えるという感覚で毛嫌いしていました。ところがソプラノ歌手ルチア=ポップの録音集(ホルスト=シュタイン指揮バンベルクSO)の中で、このオペラのフィナーレ( といっても全1幕の作品 )付近、月光の音楽から最後までが収録されていて、それを聴いて以来すっかりカプリッチョが好きになりました(収容所云々はどうした?信念の無い)。そのポップやシュタインの演奏が素晴らしいと言っている当人は非ドイツ語圏、非ヨーロッパ圏の私なので、単なる好みでしか無いかもしれません。今回の古い録音は、カプリッチョの台本作者にして初演者でもあるクレメンス=クラウス夫妻の共演です。舞台の音が入っていないので(動きは少ない作品のはずにしても)おそらく歌劇場の実況録音ではなく、演奏会形式か放送用録音だと思われます。

 11月12日がルチア=ポップの誕生日で同16日が命日ということもあって、ポップが歌うシュトラウス作品のCDを引っ張り出す時期ですが、それは後日に。

 このオペラの初演は1942年10月28日、ミュンヘン・国立歌劇場で行われ、そのライヴ音源の一部も出ていました。指揮はクレメンス・クラウスで、マドレーヌを歌ったのが妻であるヴィオリカ・ウルズレアックでした。今回のCDはその11年後にあたり、ウルズレアックは声のピークを過ぎていることになります。また50年以上経過して突如出てきた古い音源なので、リマスターされても音質に限界がある(特にヘッドホンで聴くとそう感じて、スピーカーを通して聴くとましに思える)のはやむを得ません。前奏曲、間奏曲や特に月光の音楽はクラウスの見せ場になるはずなのでそこは残念です。

111118b  そうした点は差し引いてもこの録音は、直接的にはマドーレーヌ役のソプラノのヴィオリカ・ウルズレアックの歌声や劇中の朗読、クレメンス・クラウスの指揮等万事が優雅であること、間接的にはこのオペラが生まれた当時の記憶がまだ残っているミュンヘンの空気を閉じ込めたようなところが非常に魅力的です。繰り返しますがウルズレアックは素晴らしく、サバリッシュらによるこの4年後のセッション録音でマドレーヌを歌ったシュバルツコップの鋭敏な感じの歌声を思うと優美さが際立ちます。クラウスは1953年のバイロイトでカイルベルトと二人で指輪を振っています。「クレンペラーとの対話 P.ヘイワーズ編(白水社)」の中で、クレメンス・クラウスがR.シュトラウスの後継者として名が挙がり(ヘイワーズ氏がそのようにふっている)、それに対してクレンペラーは創造的なシュトラウスの指揮に及ぶべくもないと辛口(誰に対してでもあるが)なコメントをしています。もっとも、クレンペラーはシュトラウスの晩年の作品に対しても冷淡なようで、これは芸術的価値よりもナチス政権下にヨーロッパを追われた体験からくる感情のためでもあると推測できます。

 シュトラウスのオペラの台本の多くはホフマンスタールが手がけて(アラベラまで)いて、その後はツヴァイクらが引継いでいます。実はハプスブルク家の血を引くのではと噂されたカプリッチョの台本を書いたクレメンス・クラウスも、ホフマンスタールも生粋のウィーン人でした。ホフマンスタールが存命ならこのオペラの台本はどうなっていただろうかと思いますが、カギ十字の旗で埋まるヴァイロイトを考えるとカプリッチョが初演された舞台は全く対照的です。カプリッチョは時代背景と乖離したストーリーだけでなく、そもそも話の舞台が18世紀後半のパリ郊外というのが挑発的でさえあります。この作品はレジスタンスという程積極的ではないにせよ、暴力的な体制にも侵すことができない理想郷のようなものを築いて守ろうとするような意気込みを空想させる魅力があります。オーストリア帝国の解体どころか統一ドイツが引き裂かれて西へ引き戻されて削られた第二次大戦後にあって、ドイツ人にはこのオペラがどのように響いたことだろうと思います。

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4 7月

R.シュトラウスのオペラ「カプリッチョ」 シュヴァルツコップ他

R.シュトラウス 歌劇 「カプリッチョ」

ヴォルフガング・サヴァリッシュ 指揮 フィルハーモニア管弦楽団

伯爵令嬢マドレーヌ(若き未亡人):エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)

伯爵(マドレーヌの兄):エーベルハルト・ヴェヒター(バリトン)

作曲家フラマン:ニコライ・ゲッダ(テノール)

詩人オリヴィエ:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)

場支配人ラ・ローシュ:ハンス・ホッター(バリトン)

女優クローレン:クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)

3人の舞台上の音楽家:マヌーグ・パリキアン(ヴァイオリン)、レイモンド・クラーク(チェロ)、レイモンド・レッパード(ハープシコード)、他
 
 (1957年9月2-7,9,11日、1958年3月28日 ロンドン,キングスウェイ・ホール セッション《モノラル》録音 NAXSOS~EMI原盤《マーク・オーバート=ソーン復刻》)

110704  R.シュトラウスの最後のオペラ「カプリッチョ」は、過去に全曲盤ではシュタイン、ウィーンPOのザルツブルク音楽祭ライブと、ベーム、バイエルン放送響の録音を記事投稿しています。特に前者は素晴らしく、このオペラのそう多くない録音(またホルスト=シュタインの録音も多くはない)の中では外せないものだと思いました。カプリッチョは、ストーリーや人物の性格描写等は特に面白くありません。それでもひたすら貴族的?(自身は貴族でも何でもないので分からない)な美しさで透徹していて、余をもって替え得ない世界を表現しています。最終場のオーケストラだけで間奏的に演奏される「月光の音楽」だけでも魅力的です。月光の音楽以降の、ヒロインであるマドレーヌの歌う、ほとんどモノローグのような場面、歌にこのオペラの魅力が凝縮しています。

 それだけに伯爵令嬢(伯爵未亡人)のマドレーヌが作品の中で大きな位置を占めています。聴きどころとしては他の登場人物の歌や、オケ等いろいろありますが、それでもマドーレーヌが駄目だったら魅力は半減します。そういう点で、全曲盤ではないものの、その月光の音楽以降を収めたルチア=ポップ、シュタインとバンベルク交響楽団によるシュトラウス名場面集はとても印象的です。ポップのフアンなので身びいきという面もありますが、月光の音楽が終わってポップが扮するマドレーヌが“ Wo ist mein bruder? ”と歌い出したとたん、別世界に引き入れられます。ちなみに上記の全曲録音のマドレーヌの配役は、シュタイン盤がアンナ・トモワ=シントウ、ベーム盤がグンドゥラ・ヤノヴィッツとそれぞれ定評があるソプラノが歌っています。

 このCDは、ウォルター=レッグがプロデューサーで、当時の豪華キャストで嫁さん(二人は1953年に結婚)のエリーザベト=シュヴァルツコップ(1915-2006)の周りを固めて作ったレコードです。また録音年月日からも念入りに録音したことがうかがえる傑作です。指揮は若き日のサヴァリッシュで、レッグが創設したフィルハーモニア管弦楽団も名盤として残ることになるレコードをどんどん録音している時期でした。何となくレッグが、シュヴァルツコップを思いっきり引き立たせるためのレコードを残したくて企画したようにも見える録音です。今回はNAXSOSの復刻CDですがそれまでに、EMIから何度かCD化再発売されているはずです。1957~58年の録音にもかかわらず何故かモノラルと表記されています。有名な録音なのでその辺りの事情も周知の事実なのかもしれません。

 シュワルツコップのマドレーヌはヤノヴィッツ、ポップ、トモワ=シントウらとはちょっと違い近寄り難いような威厳も感じさせる歌声で、アクセントというか節回しが独特です。失礼があれば扇で叩かれそうな感じもします。彼女は現代ではポーランド領のドイツ北東部の生まれでベルリン音楽院で学んだので、オーストリア人でもバイエルン人でもなく、プロイセン人と言えます。とにかくこれはく素晴らしい録音だと改めて感心させられます。

 実はリヒャルト・シュトラウスの作品はそれ程好きでは無く、晩年の作品は一部で評価が低かったことおあって注意を払っていませんでした。と言っても、初期のバラの騎士とかもあまり好きではありませんでした。ともかく歌曲「四つの最後の歌」とか歌劇「カプリッチョ」、「アラベラ」とかは40歳近くなって急に親近感が湧いてきました。このオペラ・カプリッチョは、1941年作曲、初演なので第二次世界大戦の最中、オシエンチウム等の収容所が稼働している頃に上演していたというのが驚きです。実際その点もシュトラウス作品を冷ややかに見ていた理由の一つでしたが、そうした理屈や感情では抑えきれない程の美しさを、この作品は放っています。

 カプリッチョとは全然関係ありませんが、昨日のマーラー・第3交響曲の回でCDの解説にモラヴィアについて書かれてあったのでそれに触れていました。後から思い出したのですが「モラヴィア兄弟団」というキリスト教の一派がありました。ボヘミアは元来カトリック圏でしたが「ヤン・フス」の火刑等いろいろあった地です。モラヴィア兄弟団の方も詳しくは知りませんが、フス以後に生まれて、後には英国国教会のジョン・ウェスレーらのメソジスト運動に影響を与えたようです。さらに、このメソジスト運動からアメリカ合衆国でメソジスト教会が生まれて、19世紀末以降あまたの新しい教派が派生していくことになります。少し前にネオコン絡みで注目されたアメリカの「メガ・チャーチ」や原理主義の教派をどんどん遡れば、その源流の一つがモラヴィア兄弟団と言えなくもありません。世のかな不思議な縁でつながっているものだと思います。R.シュトラウスとは全く関係無い話でした。

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22 12月

R.シュトラウス カプリッチョ ベーム・バイエルン放送響

 先日京都市役所の北、押小路通を歩いていると、坦々麺の店がオープンしていました。夕方で相当腹が減っていたものの、不規則な食事になることと、風邪の咳がまだ抜けていなかったので入らずに通り過ぎました。辛いだけでなく、挽き肉の細かいのが気管に入る危険から我慢しましたが、今日のお昼に行きました。坦々麺をメインにした店というのは珍しいせいか店は混んでいました。美味しいだけでなく、良心的な辛さというか食後の腹具合も良く、本格的な店のようでした。私の場合、胆石で胆のうを切除してしまっているので、天ぷらとかの脂っこい物や劇辛系を食べると腹具合が悪くなることが多いのですが、脂や調味料が体にやさしいものだったのか、たまたまか、今日は快調でした。 

リヒャルト=シュトラウス 作品85 歌劇「カプリッチョ」

カール・ベーム指揮 バイエルン放送交響楽団、バイエルン放送合唱団員

マドレーヌ(伯爵の妹・未亡人):グンドゥラ・ヤノヴィッツ

伯爵(マドレーヌの兄):D・フィッシャー=ディースカウ

フラマン(作曲家):ペーター・シュライアー

オリヴィエ(詩人):ヘルマン・プライ

ラ・ローシ(劇場支配人)ュ:カール・リッダーーブッシュ

101219 クレーロン(女優):タティアナ・トロヤノス

イタリア歌手:アーリン・オジェー

イタリア歌手:アントン・デ・リッター

トープ :デイヴィット・ソー

家令:カール・クリスティアン・コーン

(1971年4月 ミュンヘン 録音 DG)

 リヒャルト・シュトラウスのオペラ「カプリッチョ」は、18世紀後半のパリ、伯爵家の屋敷内を舞台にした全1幕の作品です。伯爵とその妹にして未亡人、彼女に想いを寄せる詩人と作曲家の他に、劇場の支配人、女優が中心登場人物で、音楽と詩のどちらが主でどちらが従なのかというテーマを扱ったシュトラウス最後のオペラです。1942年、昭和17年10月に初演されています。日本ではミッドウェー海戦の後、坂道を転げるように負け出し始めた頃で、ドイツでもアウシュヴィッツ等の収容所が稼働している頃でした。そんな時代とは正反対に、優雅で唯美的なオペラが作られ初演されていることは驚きです。

 これはカプリッチョの代表的な録音です。とは言ってもこの作品はそう多く録音があるわけではありません。セッション録音では古いサバリッシュ指揮PO、シュワルツコップらの歴史的録音、シルマー指揮VPO、テ・カナワらによる90年代の録音と、このベーム盤くらいです。この作品は特にソプラノのマドレーヌ(伯爵令嬢・未亡人)の占める比重が大きいはずで、声の質、傾向というのも役の適否に大きく影響しそうだと思えます。残念ながらルチア=ポップは全曲録音を残せませんでしたが、月光の音楽以降をシュタイン指揮で録音していて、素晴らしさを味わえます。

 カプリッチョの代表的録音と書いていながら先日来車内で何度なく聴いていると、ベームにしてはどうもオーケストラに覇気が無いというかさえない気がしました。リヒャルト・シュトラウスはベームの重要なレパートリーだったはずで、主要なオペラを録音しているのにこの演奏は微妙な印象です。冒頭の六重奏やフィナーレに近い月光の音楽、間奏曲等オーケストラだけの部分の印象が薄い気がしました。またフィッシャー・ディースカウ、シュライアーの二人の配役もこの作品にはちょっとどうかなと思えました。舞台も見ていないのに簡単にそうとは言えないとは思いますが、特に後者の甲高い歌声は作品の雰囲気とはちょっと遠いと思えます。

 この作品も含めてR.シュトラウスの作品は10代の頃からあまり好きではなく、ピンと来ないと思っていて、最近になって「四つの最後の歌」と「カプリッチョ」が急に魅力を感じるようになってきたくらいなので、カプリッチョを聴き込んでいる程とは言えない状態です。そんな程度なので、ベーム盤が決定的に悪いとかそこまでは断じられませんが、以前取り上げたシュタインのライブ録音や、上記のポップによるフィナーレ部分だけの録音の素晴らしさが際立つ結果になりました。

  一方で、ヤノヴィッツ、プライ、リッダーブッシュは素晴らしく、声の性格も作品の世界にうってつけのように感じられます。作品の最後は、伯爵令嬢・未亡人のマドレーヌが作曲家フラマンと詩人オリヴィエの両者から同じ日の同じ時刻に会ってくれるよう伝言されて、そのどちらに会うか決めかねている段階で幕が降りるのですが、その場面は迷って苦しむという雰囲気でもなく気高さ、上品さを保っていて、その点はヤノヴィッツはちょっと弱いように思えます。オペラ全曲盤のレコード・CDは企画制作する側も大変だろうと思います。

3 10月

歌劇カプリッチョ シュタイン・VPO 1985年ザルツブルク

 リヒャルト・シュトラウスは、10代の頃にツアラトストラ等交響詩を何曲か聴いただけで、あまり好きではあいませんでした。最近になって「四つの最後の歌」やオペラ・カプリッチョ等に特別に魅力を感じるようになりました。カプリッチョはミュンヘンオペラの来日公演でも取り上げられていたそうで、ルチア=ポップも参加していたので聴けるチャンスだったわけで今になって非常に残念に思えてきました。「ツアラトストラはかく語りき」のメータ、NYPOのLPが空の写真をベースに人間の片目が重ねられていたデザインでした。そのデザインを学校の美術の時間で抽象画を描く時間に拝借しました。全然だめな絵になったのは覚えています。小学校の3,4年頃までは絵か感想文で毎年府美展等何らかの表彰状をもらっていましたが、それ以降はさっぱりダメになりました。だんだん自分の境遇や色々なことが分かるようになって「のびのび表現する」ということが無くなり、また本当に技術が要求される年齢に入っていったからやむを得ないところです。

                          101003c

リヒャルト=シュトラウス 歌劇 「 カプリッチョ 」

ホルスト=シュタイン 指揮 ウィーン・フィルハーモニー他

伯爵夫人マドレーヌ(若き未亡人)・ソプラノ:アンナ・トモワ=シントウ

101003a 伯爵(マドレーヌの兄)・バリトン:ウオルフガング=シェーネ

作曲家フラマン・テノール:エバーハルト=ビュヒナー

詩人オリヴィエ・バリトン:フランツ=グルントヘーバー

劇場支配人・バリトン:マンフレッド=ユングウィース、他

(1985年ザルツブルク音楽祭 録音ORFEO)

101003b  リヒャルト=シュトラウス最後のオペラであるカプリッチョは、第二次世界大戦中の1942年10月28日にミュンヘンで初演されています。1941年にはマキシミリアーノ・マリア・コルベ神父がアウシュヴィッツ収容所で刑死しており、片方で組織的に人名が処理されていて、一方では極めつけ美しい芸術作品が創作、演奏されているというこの世の中の皮肉な現実です。このオペラは2幕から成り、18世紀のパリ近郊の貴族の館が舞台であり、終始場面は館の中です。中でも間奏曲である「月光の音楽」以降がほとんどが未亡人マドレーヌの独白的な場面で、とりわけ美しい音楽です。月光の音楽は独立して管弦楽曲として取り上げられたり、フィナーレ部分と併せてアリア集、名場面集に収められたりもします。夜の居間に月明かりが差し込み、詩人オリヴィエと作曲家フラマンの両方から求愛されて、結局決めかねているところで幕が下り、オペラの世界の時間が止まったままのような余韻が残ります。また、冒頭の前奏曲・六重奏も美しい曲です。

101003f  このCDは1985年のザルツブルク音楽祭でのライブ録音で、N響でもおなじみのホルスト=シュタインが指揮をしています。シュタインのカプリッチョは、先月取り上げたルチア=ポップの名場面集でも名演を聴かせていますがこのCDでも際立ちます。CD添付の解説にはオペラの各場面などの写真が多数掲載されているのに、シュタインの写真が一枚も入っていないのは不思議です。同じシュトラウスのオペラでも薔薇の騎士ならクライバーの写真が先頭に入っています。カリスマ性、国際的人気等ではカルロス・クライバーが圧倒的で外見も見栄えがするというのは分かります。一方ホルスト・シュタインはデコの形状等独特の風貌で愛嬌も感じられますが、風采があがるとまではいえないのは事実でしょう。それでもこの公演、録音の魅力はシュタインの力によるところが大きいと思え、写真の一枚くらいあっても良いと思いました。シュタインはバイロイト音楽祭でも指揮していて、マイスタージンガー、パルシファル等は映像ソフトで聴いたことがあり、正式録音が少ないのが残念な程でした。

101003e  このオペラの代表的な録音としては、シュヴァルツコップがマドレーヌを歌ったサヴァリッシュ・フィルハーモニア管(EMI)盤、ベーム盤、シルマー・VPO盤等があります。シュバルツコップの他もオールスターキャストによる1957、1958年のセッション録音で理想的とも言える企画です。特に若きシュヴァルツコップのマドレーヌは気品があり、究極の姿のように聴こえます。それに比べると今回のトモワ=シントウはシュトラウスのオペラを得意としていて常連的ですが、ちょっと平凡な印象を受けます。しかし、どんな演出、セットだったか舞台の様子までは分からないので、あるいはきわめつけ名演だったのかもしれません。舞台にはあまり動きがないオペラのはずで、演出も重要な要素になるはずです。カプリッチョもセリフ等全てが歌で進められると思っていましたが、前半部分で音楽が止まって会話だけの部分が出てきました。

101003d_2   このオペラは、「言葉と音楽とどちらが重要か」というテーマも扱っていて、作曲者自身が登場人物のフラマンに投影されています。このオペラの中でマドレーヌが詩人オリヴィエと作曲家フラマンのどちらの求愛にも応じていない段階で終わっているのと同じくそのテーマは結局結論が付けられずに終わっています。白黒が付かないで終わるところが最大の美点のようでもあり、このオペラ独特の美しさを作っています。シュトラウスの言動が激動の時代にあって無神経なようにとらえられることがありますが、カプリッチョや四つの最後の歌のような作品を聴いていると、自然にあらゆる事柄で自身の音楽が最優先という姿勢が身についていたような、良くも悪くも音楽に魅入られた人物像が浮かび上がってきます。

2 9月

ルチア=ポップ 復刻・R.シュトラウス名場面集

ルチア=ポップ : ソプラノ


ホルスト・シュタイン 指揮
バンベルク交響楽団


ワルター・ツェー:バリトン(カプリッチョ・家令)

アラン・タイトス:バリトン(アラベラ)


①歌劇「カプリッチョ」より
月光の音楽~フィナーレ

②歌劇「バラの騎士」より

1幕:元帥夫人のモノローグ

③歌劇「アラベラ」より、第1幕フナーレ

④   〃    第2幕アラベラとマンドリーカの二重唱

⑤   〃    第3幕フィナーレ


(1988年3月1~4日 SONY)

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 1939年11月12日スロヴァキアのブラティスラヴァ生まれのソプラノ歌手、ルチア=ポップが48歳の時の録音です。このCDは3枚組で、1枚目がモーツアルト、ヘンデル等のオペラ、歌曲を集めたアルバム(1986年11月)、3枚目が「ユーゲントシュティール時代の歌曲集」と題して、ベルク、シェーンブルク、プフィッツナー、シュレーカー、R.シュトラウスの歌曲(1991年3月)という組み合わせで、それぞれ元は別の機会に発売されたアルバムでした。ポップは1993年11月16日に54歳で亡くなりました。このアルバムは彼女の結果的に晩年になってしまった円熟期の歌唱を広範囲に収めた録音で、大変貴重なものです。まず、2枚目のR.シュトラウスのオペラの名場面集に非常に魅了されました。ルチア=ポップでバラの騎士といえばゾフィーが当たり役でしたが、モーツアルトのオペラの役で言えば夜の女王(魔笛)からスザンナ(フィガロ)、伯爵夫人(フィガロ)と声の質の変化に伴って表現の幅を広げてレパートリーを開発していったのと同様、80年代半ば頃から元帥夫人を歌うようになりました。このCDでは元帥夫人のモノローグが聴けます。古いレコードではシュヴァルツコップの元帥夫人が有名で、ルチア=ポップのデビュー時や70年代前半ならこの役はイメージし難いところでした。

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 そんなわけで今回は、枚組の中で2枚目・リヒャルト=シュトラウスの名場面集のCDを扱います。実はこのCDでは、バラの騎士よりも「カプリッチョ」のフィナーレに圧倒的に惹きつけられ、ポップがこの役を歌う舞台を是非観たくなりました。カプリッチョは、シュトラウス最後のオペラで、台本を途中から指揮者のクレメンス・クラウスが手掛けていました。あらすじ等詳細は略して、このCDに入っているフィナーレは、伯爵令嬢マドレーヌに恋する二人の男フラマン(作曲家)、オリヴィエ(詩人)の両方から明朝11時に待っているから会ってほしいと言われて、どちらか独りに決めかねている場面で終わります。この場面は、途中からマドレーヌが鏡に映る自分の姿に話しかける場面になり、自作のソネットを歌います。やがて微笑んで明るく部屋を出て行きます。管弦楽の美しさともあいまって、何とも言えない、魅惑の場面です。休暇を前にした前日の夜のまま時間が止まったような感覚でもあり、こういう場面は他に例はないのではないかと思います。

 
  二人の男から言い寄られて、どちらか独りに決められないという話は日本の能楽「求塚」にも見られます。元ネタは「大和物語」にあり、二人に鴛を射させて見事射抜いた方を選ぶことにしたものの、二人の矢が同時に鳥に当たり、決められなかったので女は川に身を投げて死に、やがて二人の男も後を追って死ぬという話です。救いようが無い話ですが、能では女が地獄で二人の男と的にされた鳥に責め苦しめられるという、更に暗い話です。カプリッチョとは全然違う空気ですが、フィナーレのマドレーヌの微笑みと明るさは何なのか、何とも多様な余韻が感じられます。

 
  ポップが出演したカプリッチョの全曲の記録は映像、録音とも残っていなかったはずなので、ますます最初から観たくなってきます。実は、今回このCDを聴くまでは、リヒャルト・シュトラウスの舞台作品にはあまり関心が無かったのですが、月光の音楽が始まったとたんすっかりはまってしまいました。カプリッチョは、いわゆる見せ場・聴かせ所の大アリア的なものは無く、音楽の中で会話が歌で進められていき、その途切れない歌が独特の美しさで驚かされます。”  Wo ist  mein  Bruder? ” とポップが歌いだした瞬間、すっかり舞台の前に連れ出されたか、作品の中に引き込まれたような感覚になりました。「きめ細かい美声と人なつっこい味わいに、ほのかな陰影が加わり、R.シュトラウスの音楽が持つ深みと卓越した人物表現をありのままに表現した名唱ぞろい」とCDの日本語解説(2010年、岡本稔)に書かれてありましたが、このCDでのルチア=ポップの魅力は全くその言葉に集約されています。

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昭和40年代生まれ、オットー=クレンペラーの大フアンです。クレンペラーが録音を残したジャンルに加え、教会音楽、歌曲、オペラが好きなレパートリーです。

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