夜の女王:スミ・ジョー(S)
昨年の11月末に「大勲位」こと中曽根元総理逝去のニュースが流れました。中曽根内閣の頃に自分は選挙権が無かったのに中曽根総理の顔と名前は強く印象に残っています。小学生の頃、大平総理か鈴木総理誕生前の総裁選の報道で某夫人が「中曽根がニクイです」と叫んだという話が妙に子供心に突き刺さり、同じ政党の人間同士なのにと思ったことがありました。元号が昭和の時代ですが当時と比べて色々便利になった反面、何か盛り上がらないような正月の終わりに左義長の後始末を始めるような抜け殻感が漂うのは何故だろうと思います(歳のせいか?、世の中衰退しているのか?)。
さてモーツァルトの魔笛、ドイツ語による歌劇(Singspiel)ということで全く音楽を伴わない台詞だけの部分があり、全曲盤と銘打ってもそれを省いたものもありました。ショルティの旧録音はセリフ部分の大半は歌手ではなく、別人を充てていました。このCDはその旧録音から二十年以上経った再録音です。ショルティはコジ・ファン・トゥッテとドン・ジョヴァンニと魔笛は再録音していますが、魔笛は旧録音の方が好評だったようです。
年明けから何度か聴いていますがまず気になったのは、雷等の効果音が大きすぎてびっくりするので、全体的に映画のサントラ盤のような感じになり、デジタル録音の世代だからこんなものかと思いつつも微妙な印象です。反面ショルティ指揮のオーケストラはなめらかになり、ウィーン・フィルらしさがより前面に出ているかな(?、旧録音は聴き直していないので)と思いました。歌手の方はパミーナ、タミーノが特に目立っていましたが、夜の女王のスミ・ジョーも好印象です。
彼女は他の録音でも夜の女王を歌っていたり、アリア集のようなものもあったかもしれませんが、FMで何度か聴いてあまり好きではなく、シェリル・スチューダーと並んで有名でありながら自分の好みではない歌手の双璧くらい(勝手に言ってろ)だった時期がありました。今回聴いていて何故そういう印象だったのかと考えていると、第二幕で歌う「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」の中でザラストロの名前を一気にはやく言ってしまうところが窮屈で、味気ないと思ったのも思い出しました。ザロストロ殺害を命じるところなので、ためというか感情をこめて歌った方がと思ってのことですが、それは昔聴いたルチア・ポップの夜の女王が強烈に印象付けられているからでしょう。