200427aベートーヴェン 交響曲 第7番 イ長調 op.92

フリッツ・ライナー 指揮
シカゴ交響楽団

(1955年10月24日 シカゴ,オーケストラホール 録音 RCA/tower recods)

200427b 今週末から五月になるというのに昨日の朝はまだ石油ストーブを使っていて、コロナの魔の手が迫る中で季節感があまり実感できません。このベートーヴェンの第7番は1月か2月くらいにちょいちょい聴いていたものですが、その頃は新型コロナ感染症がここまでの事態になると思っていませんでした。ライナー、セルはそれぞれシカゴ、クリーヴランドのオーケストラを鍛え上げたことでも有名で、クラヲタのネタ話に団員が両名による練習を「ミリタリー!(軍隊式)」と言っていたというのがありました。それでライナーの写真を見ていて誰か、何かに似ている気がしていましたが、男子高校バレーを題材にした漫画「ハイキュー」のキャラ、鷲匠鍛治監督と少し似ている気がします。もっと他にそっくりなアーティストが居る気がしてもやもやしたままですが、一応似ているようです。

 ちなみに鷲匠監督はスパルタコーチなので試合中も時々怒声をとばします。それはともかく、このライナーの第7番は1990年代に洋泉社の企画本か何かで取り上げられていたような覚えがあります。久しぶりにタワーレコードの企画によるリマスター盤を聴いていると、直線的に刈り込まれた生垣のようで、スピード感のある演奏が印象的でした。クレンペラーのベートーヴェン第7番とは対照的です。同じ1955年の録音でも合計時間の差が3分もありました。それ以上に、実際に聴いていると特に第3楽章は別世界、第4楽章もジェットコースターと観覧車の差のような印象です。

ライナー・CSO/1955年
①11分40②08分56③6分58④6分46 計35分20
クレンペラー・PO/1955年
①12分51②09分30③8分21④7分56 計38分38
セル・CLO/1959年
①11分52②07分34③7分19④7分13 計33分58
シューリヒト・パリ音楽院/1957年
①11分21②07分52③7分19④6分57 計33分29
ワルター・コロンビアSO/1958年
①12分57②09分57③8分14④6分45 計37分53
クリップス・ロンドンSO/1960年
①12分34②08分54③7分24④6分56 計35分48
クレンペラー・PO/1960年
①14分04②10分02③8分43④8分39 計41分28
クレンペラー・ニューPO/1968年
①14分04②10分41③9分16④9分00 計43分01

 それに似た者同士ということで、単純に演奏時間だけで言えないとしても、何となくセルと演奏時間が似るかと思ったら、リピート有無の影響なのか1分半程度ライナーの方が合計時間が長くなっています。こちらも演奏時間以上に、傾向、特徴というのか、そういう面の違いが大きいようで、ライナーの方がベートヴェンの音楽をよりフィジカル重視(ビシュコフの表現を借りて)だとしているように感じられます。1990年代にライナーのベートヴェンをCDで聴いた時はもっとセルと近いタイプのように感じていましたが、二十年以上経って聴いてみると結構印象が変わります。

 ライナーとシカゴ交響楽団のベートーヴェンは交響曲は九曲全部セッション録音で揃わなかったようで、LPもあまり見かけない気がします。この第7番もLPで聴けばどんな感じだろうかと思います(その好奇心だけで高価な場合は購入しようとは思わないけれど)。というのは、今年に入ってクレンペラーのベートーヴェンの交響曲第2番のEMI盤のモノラルLPを入手して聴いてみたところ、最初にCD化されたものと比べてももっと繊細、或いは緻密な印象だったのに驚きました。CDで聴いた時はなにか肥大して、年を越してしまった温州ミカンのように皮と実が離れかかったような印象もありましたが、モノラルLPで聴くと細密画のようでした。