raimund

新・今でもしぶとく聴いてます

指:ゲルト・シャラー

26 12月

ブルックナー交響曲第2番・1872年稿 シャラー、フィルハーモニア・フェスティヴァ

161226ブルックナー 交響曲 第2番 ハ短調 WAB.102(1872年稿・2005年キャラガン校訂版)

ゲルト・シャラー 指揮
フィルハーモニー・フェスティーヴァ

(2011年7月 エーブラハ,大修道院附属教会 ライヴ録音 Profil)

 今年も残り一週間を切り、まちなかでは早くも休暇モードな人をちらほら見かけます。TVでは今年三月に議員辞職した京都三区選出のあの人の夫人が出ていたようです。海外の国家元首の中には婚姻外に子供が居る人もそこそこ居ることを思えばちょっと空騒ぎだったような気もします(それが理由で落選したというならまだしも)。もっと深刻な問題でどうしようもなく、全く手出し出来ない(基地とか領土、原発、正規雇用、ブラック企業等々)のでそられにかわるガス抜きのようにも見えてきます。それはともかく、ブルックナーで気分一新ということで交響曲第2~4番の初期稿と第5番の四部作説に従って連続して聴くことにしました(またやるのか)。第2番の初期稿はまだ録音が少ないのでそうそう何度もできるものじゃありません。

交響曲第2番 1872年稿(第1稿/試演版)
1楽章:Allegro
2楽章:Scherzo;Schnell
3楽章:Adagio;Feirlich,etwas bewegt
4楽章:Finale;Mehr schne


 今回はゲルト・シャラーとフィルハーモニア・フェスティヴァによる交響曲第2番から始めます。この第2番は冒頭からゆったりと、起伏少なく、海中を漂うジュゴンかマナティのような佇まいなので、最近のブルックナー演奏からすればちょっと意外なスタイルです。初期作品は元来アクセントを強調して飽きさせない?ような演奏が多かったようなので、もうそんな配慮は要らないくらい浸透したというのか隔世の感があります。特に第3楽章のアダージョがこの録音、演奏の特徴が濃厚に出ているようで、ゆったりと響きの中に横たわれそうな心地です。

 その第3楽章も他の録音の中にはもっと演奏時間が長いものもあるので、このシャラーの演奏が特別というわけではありません。省略箇所の加減があるのかどうか、だいたい合計で67~70分が目安のようです。初期稿の1872年稿では第2楽章に配置されるスケルツォは、シャラーとアイヒホルンの二人がほぼ同じで一番長い演奏時間になっています。シャラーとフィルハーモニア・フェスティヴァのブルックナーは、珍しい稿を採用した曲が注目になっているほか、修道院の聖堂でライヴ録音しながら残響が大きすぎず、ちょうどよい音質なのも好印象だと思います(一部の曲)。
 
*シャラーの第4楽章は残響が完全に消えたところでタイムを止めている(記載は20分36)。
シャラー・PF/2011年
①20分51②10分58③17分56④20分29 計70分14
ブロムシュテット・LGO/2012年
①18分14②09分58③14分25④18分25 計61分02
ボッシュ・アーヘンSO/2010年
①17分45②10分00③17分44④20分52 計66分21
ヤング・ハンブルクPO/2006年
①20分40②10分47③19分32④20分23 計71分22
ティントナー/1996年
①20分50②10分53③18分00④21分19 計71分02
アイヒホルン/1991年
①19分40②10分59③15分42④20分55 計67分16

  交響曲第2番の初期稿の録音で主だったところは上記の通りで、他に実際に初演された1873年稿で演奏したアイヒホルン盤(1872年稿と2枚組CDに収録されている、1873年稿の楽譜は未出版らしい)があるくらいです。あた、年明けに出る予定のボルトン指揮ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の録音も1872年・初期稿のようです。第2番は、その初演・1873年稿もノヴァーク版とハース版がある1877年の第2稿もスケルツォは第3楽章に配置されているので、今回の正真正銘の初期稿、1872年稿は独特な配置です。これと同じ配列は第8番、未完に終わった第9番くらいで、その後期作品の特徴がこの段階で既に試されているのが興味深いところです。
26 11月

ブルックナー交響曲第0番 シャラー、フィルハーモニア・フェスティヴァ

1126ブルックナー 交響曲 第0番 ニ短調 WAB.100

ゲルト・シャラー 指揮
フィルハーモニー・フェスティーヴァ

(2015年3月 
バート・キッシンゲン,レゲンテンバウ 録音 Profil)

 演奏頻度が低い、生で聴く機会は少ないと思い込んでいたブルックナーの交響曲第0番、京都市交響楽団の定期公演、再来月・1月定期の曲目に入っていました。例年1月定期の頃は忙しくて色々混乱しているので定期会員になっていた年もその月は聴けませんでしたが、今期はちょっと事情が変わって行けそうなのでチャンスです。先日のスクロバチェフスキの再録音を聴いていて急にこの作品に対する愛着度が増し、深まって、自分の中のブルクナーの交響曲のファースト・グループだった「第2、第5、第6、第9」の中に割って入ってきました。それはともかく、今日は京響の11月定期初日で、プログラムはメシアンのトゥーランガリラ交響曲(高関健の指揮,児玉桃がピアノ,オンド・マルトノが原節)のみでした。開演時間を勘違いしていて途中からしか聴けなかったのが悔やまれます。パンフレットの演奏者プロフィールを見て児玉桃が自分より年下なんだと思いながら、姉のケント・ナガノ夫人(児玉麻里)と勘違いしていたことにも気が付きました。

シャラー/2015年
①15分33②11分30③6分29④09分53 計43分25
スクロヴァチェフスキ・読日SO/2014年
①14分21②13分15③6分35④11分18 計45分29
ボッシュ・アーヘンSO/2012年
①14分06②11分45③6分25④09分07 計41分23
ヤング・ハンブルクPO/2012年
①16分58②13分39③7分43④11分18 計48分38

 ゲルト・シャラーは夏季の音楽祭時の臨時オケ、 フィルハーモニー・フェスティーヴァを指揮してブルックナーの交響曲を9曲録音しましたが、追加的に第0番やミサ曲第3番、オルガン独奏曲等も録音しました。今回は修道院の聖堂ではなくてバート・キッシンゲンにあるホールで収録しています。第0番はヨッフムやカラヤン、ヴァントら有名どころの全集に入らないためか、作品に対する固定的なイメージがあいまいです。先日のスクロヴァチェフスキよりも穏やかで、より初期作品らしい清新さを感じられた気がします。これを聴いていて過去記事で取り上げたシャラーのブルックナー(第7番、第5、ミサ曲第3番)演奏が思い出されて、かなり筋金入り(作曲者の肖像に合わせて髪を剃ったわけじゃないとしても)のブルックナー指揮者かもしれないと思いました。

 この曲を続けて聴いていると最近では第1楽章の特に冒頭あたりと、第2楽章のAndante sostenuto に魅力を感じます。作品解説の中にベートーベンの第九との相似(第九の第3楽章と第0番のアンダンテ楽章)が言及されていることがありますが、後続の動的な楽章との対比は確かに似ているような気がします。

 ところでオーストリアの大統領選挙がやり直しになり、来る12月4日が決戦投票であり極右政党の自由党候補のホーファー氏が選出される可能性も高まっているようです(懸念されている?)。断片的にニュースをチラ見していると、そのうちに独墺際統合とか言い出す日が来るのかと想像してしまいます。ブルックナーが存命の頃はハプスブルク家の皇帝が君臨していたわけで、この曲が完成したのはちょうど明治維新直後なので古いようで、作曲当時の世界とかろうじて繋がりが残っていそうな微妙さです。なお、交響曲第0番の日本初演は1978年6月5日、朝比奈隆指揮、大阪フィルハーモニー交響楽団によって大阪フェスティバルホールで行われています。
7 9月

ブルックナーのミサ曲第3番 シャラー、フィルハーモニア・フェスティヴァ

160907aブルックナー ミサ曲 第3番 ヘ短調 WAB 28

ゲルト・シャラー 指揮
フィルハーモニー・フェスティーヴァ
ミュンヘン・フィルハーモニー合唱団

アニア・ヴェグリー (S)
フランツィスカ・ゴットヴァルト (A)
クレメンス・ビーバー (T)
ティモ・リーホネン (Bs)

(2015年7月 エーブラハ大修道院付属教会 録音 Profil)

 あいかわらずクソ暑い日が続き、日中の気温が35℃近いことよりも夜間に下がらない熱帯夜がこたえます。先日JR東海道本線の向日町付近の線路沿いを歩いていると短時間に貨物列車走り抜けて、その風が一応涼しいので列車の方に顔を向けるとコンテナ車だけでなく有蓋貨車の長いやつが何両も連なっていました。クロネコのマークが付いた貨車もあり、今でもコンテナ以外の貨車もあるのかと思いながら見ていました。駅の方に近づいたらホームの先端で「撮り鉄」が何人も三脚をセットして列車が来るのを待っているようでした。そういえばかなり昔、国鉄時代に「EH10」という黒塗りの機関車が好きで、京都駅でそれが引っ張る貨物列車を探したことがありました。二両の機関車をくっ付けたような外観が特徴でした(竹本菊に言わせれば「一両を二両に見せる根性が気に食わん」、そんな形)。今でもEH200という機関車はそんな二両をくっ付けたようなスタイルです。

 ゲルト・シャラーとフィルハーモニア・フェススティヴァのコンビは既にブルックナーの交響曲を第00番を除いて録音済なので、次はミサ曲かと思ったらそれだけでなく自身でオルガン曲を弾いて録音しました。この二枚組CDの一枚目にミサ曲第3番、二枚目に詩篇146篇とオルガン作品を六曲収録しています。オルガン曲はこの六曲でブルックナーの全作品らしく「全集」と銘打たれています。ここまでくるとシャラーの髪型(スキンヘッドなのか自然と抜けて減ったのか不詳)は作曲者への傾倒のいったんとして、ブルクナーの肖像に合わせて剃ったのかと思うくらいの念の入れようです。最初このコンビのブルックナーのCDを聴いた時は、音楽祭の演目として会場が修道院の教会堂だからとりあえずブルックナー、くらいののりかと思ったのを恥じ入るところです。なお、演奏会場の表記がいつもの大修道院付属教会とバイエルン放送スタジオの二つが表記されています。ミサ曲と詩篇とで会場が違うのか、両曲とも両方の会場を使っているのか未確認ですが写真からミサ曲は教会堂がメインと推測しました。

160907b そう言うからにはこのミサ曲第3番はかなり素晴らしくて、過去のシャラー指揮の交響曲録音よりさらに感動的でした。一曲目のキリエ冒頭を聴いたところで、後期の交響曲を演奏するのりとは違った清新な響きが印象的で、同時にミサ曲らしい、宗教曲らしい演奏だと感心しました。この調子ならシャラー指揮の交響曲第1~2番あたりもかなり良さそうです。写真の様子からは特に演奏者の数を絞ったようでもないのに、小編成の特別な工夫でもしているのかと思いました。逆に、古い録音の中には戦車の中隊くらいが進軍するような重く雑なタイプもあり、それを思うと今回の録音の新鮮さが目立ちます。ブログの分類・守備範囲ではこれじゃなくて「続~」の方で取り扱うところですが、詩篇をそっちで扱うとしてミサ曲はこっちにしました。

 あと、演奏会場が二つ表記されていますが、ミサ曲第3番は特に残響が目立っていなくて、ちょうど良い心地良いものでした。ヨッフムの古い録音は今聴くとこもったような音で、それとは対照的です。ミサ曲第3番一曲だけで60分強の演奏時間になり、ヤノフスキの最近の録音と比べても2分以上短い(あるいは稿、版に違いがあるのか?)くらいです。
28 6月

ブルックナー交響曲第5番 シャラー、フィルハーモニア・フェスティヴァ

160628ブルックナー 交響曲 第5番 変ロ長調 WAB105 ( 1878年稿ノヴァーク版 )

ゲルト・シャラー 指揮
フィルハーモニー・フェスティヴァ

(2013年7月 エーブラハ,大修道院附属教会 Profil)

 一昨年に2チャンネル・ピュアオーディオをあきらめてマルチチャンネルに走り、フロントのスピーカー2本よりもセンタースピーカーの方が高価という組合せにしていたところ、急きょフロントをトールボーイ型に変えてブックシェルフ型のフロントスピーカーをサラウンドに回すことにしました。エソテリック・タンノイのスピーカーですが多分中国で生産しているクラスのはずです。Precision のシリーズはモデル末期に近づき、最低限 5.1ch分を同じシリーズにするなら今ぐらいが限界かなと思いました。かつての家電街のようなところが健在なら店頭在庫とかがけっこう期待できますが、この10年で様変わりしました(現物はまだ届いていない)。映像ソフト、音声だけのSACDともにマルチチャンネルでなかなか素晴らしく聴こえるものがあり、狭い場所でも5.1くらいなら効果が期待できます。もっともウーファーは電源消し忘れることがあったので、ほとんど使っていないのでこの際、設置を変えて使うようにしようと思いました。

 昨夜に続いてブルックナーの交響曲第5番の新しい録音です。だいぶ前にブルックナーの第7番のCDを取り上げたゲルト・シャラーとフィルハーモニア・フェスティヴァによるブルックナーのシリーズです。ドイツ、バイエルン州の “ Ebrach ” エーブラハで毎年行われている音楽祭のライヴ録音で、演奏会場がエイブラハにあって現在刑務所として使われているトラピストの大修道院の付属教会(教会は刑務所とは別に地元教区の教会になっている)というのもアピールポイントです。フィルハーモニア・フェスティヴァは、同音楽祭のためにミュンヘンPO、バイエルンRSO、バイエルン州立歌劇場管といったミュンヘンの主要オーケストラのメンバーにより構成されオケです。指揮のゲルト=シャラーは1965年、エーブラハに近いバンベルク生まれで、1993年にハノーファー州立歌劇場、1998年にはブラウンシュヴァイク州立歌劇場の首席指揮者、2003年から2006年までマグデブルク劇場の総音楽監督をつとめています。このシリーズは教会堂で録音しているのに過剰に残響が前面に出てなくて、かなり鮮明な録音(曲によってばらつきがあり、レコ芸の記事で紹介されたものもあった)です。

シャラー/2013年
①19分41②16分27③13分01④23分40 計72分59

ヤング・ハンブルクPO/2015年
①19分56②16分59③13分02④23分23 計73分20
フリーデル・LSO/2014年
①18分35②17分54③13分31④23分18 計73分18
パーヴォ・ヤルヴィ/2009年
①19分23②14分57③13分01④22分25 計69分46
ズヴェーデン・オランダRSO/2007年
①21分22②19分42③13分03④24分47 計78分55
ザンダー・PO/2008年
①18分58②16分00③12分36④21分01 計67分35
D.ラッセル・デイヴィス/2006年
①21分43②14分49③15分10④25分10 計76分52
ボッシュ・アーヘンSO/2005年
①19分34②16分02③13分11④22分19 計71分06 

 今回の第5番、昨日のフリーデルの綿密なセッション録音を聴いた後では普通に、というか聴き慣れたブルックナー演奏に聴こえます。といっても合計演奏時間が近いので、共通の呼吸のようなものが感じられて、重厚長大・壮大な第5番とは一線を画しています。それに金管が絶叫調にならないのも好感が持てます。第5番と言えば巨大な伽藍が組み上がって献堂式でも行われるような達成感と威圧的な空気も妙味と思っていましたが、この十数年でそのパターンがかげをひそめてきています。個人的には新旧どちらのタイプも第5番としては魅力的だと思い、よほど荒れ狂う表現でもない限り許容できると思っています。

  ゲルト・シャラーもリリース済のCDに関わる情報が大半なのであまり詳しいことは分りません。00番を除くブルックナーの交響曲の他はシューベルト、ベートーベンの交響曲、ゴルトマルクの歌劇等をフィルハーモニア・フェスティヴァと録音しています。来日したことがあるのか未確認ですが、こういうコンビは贅沢を言えば本拠地のエーブラハの音楽祭で聴いてみたいところです(無理だけど)。
16 3月

ブルックナー交響曲第7 シャラー、PHIHARMONIE FESTIVA

ブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB.107(ノヴァーク版)

ゲルト=シャラー 指揮
フィルハーモニー・フェスティヴァ

(2008年7月29日 ドイツ,エーブラハ,大修道院附属教会 録音 Profil)

120316a_2  このCDはドイツ、バイエルン州の“ Ebrach ”・エーブラハで毎年行われている音楽祭のライヴ録音集の中の1枚です。第7番以外にはブルックナーの交響曲第4番(2007年7月)、第9番「キャラガン校訂2010年改訂版フィナーレ付」(2010年)が4枚組で収録されています。目玉となるのは第9番で、キャラガン校訂版の世界初録音と銘打たれています。また、演奏会場が石造りの聖堂なので残響が多く、オットー・ボイレンの修道院聖堂と似た環境なのも興味深いところです。実際聴いてみると、予想以上、かなりの残響です。しかもその音響が見事に収録されていて、これほど素晴らしい大聖堂での録音はかつて無かったのではないかと思いました。

 指揮のゲルト=シャラーは1965年、エーブラハに近いバンベルク生まれで、1993年のハノーファー州立歌劇場を皮切に、1998年にブラウンシュヴァイク州立歌劇場の首席指揮者、2003年から2006年までマグデブルク劇場の総音楽監督をつとめています。ティーレマンやマルクス・ボッシュら、シュテンツと似た歌劇場たたき上げの経歴です。

 フィルハーモニア・フェスティヴァは、ミュンヘンPO、バイエルンRSO、バイエルン州立歌劇場管といったミュンヘンの主要オーケストラのメンバーにより構成されるオケという説明が出ていますが、演奏の頻度等は分かりません。おそらく歌劇場シーズン・オフの夏季限定ではないかと思われます。

 エイブラハにあったトラピストの大修道院は現在刑務所になり、修道院付属教会は教区の教会になっているそうです。そうすると、この録音の会場の聖堂はどういう建物なのだろうかと思います。

120316b  このCDは昨年夏頃の新譜(輸入盤)でしたが、レコード芸術12月号の「WORLD TOPICS・中矢一義」で紹介されていました。このCDはアメリカのオーディオ誌「ステレオファイル」2011年11月号のレコード評欄で“ Record of the Month ” に選ばれ、演奏、録音ともに称賛されているとのことです。欧米のオーディオ誌のディスク評では、演奏と音質の両方に評点を与えるものの、音質等にはあまりコメントが無く、本文はほとんどが演奏について書かれているそうです。しかし、このCDは異例の扱いで録音についても言及されていたということです。6秒の残響を伴う教会堂(指揮者が適応できない場合も少なくない)、田舎町の音楽祭という環境(雑音、観客の集中力欠如)、臨時編成のオケ(練習不足)という悪条件になり易い環境にあって、素晴らしい演奏をしている指揮のシャラーについて「このホールの響きを知っている」と褒めています。

 さらに、「寺院で収録されたフルオーケストラだけでなく、録音場所を問わずこれまでのフルオーケストラで録音されたレコードの中で最高」と激賞しています。最高録音の中の一つ、ではなく正しく最高峰としています。そして次のように描写しています。「その響きは、透明度の高い、非常に深い水の中を音楽が幾筋もの光となって起伏しているようだここではたっぷり遵守されているブルックナーの長い休符が、そのゆっくりと消えゆく響きを奪ってしまうことがまったくなく~。」ちなみに評点は、演奏が三曲とも☆5つ、録音が第4、第5は☆5つで、第9番が星4つ半です。(第9番は一部をバイエルン放送協会のスタジオで収録してるようにも読める。)

 私自身は上記の「ステレオファイル誌」の批評と同じように素晴らしいと、うっとりしていました。しかし、「グラモフォン誌11月号」はかなり冷淡な評価になっています。この対照的な扱いは面白いと思いました。それはともかく、下記青字はこの録音の演奏時間です。ギュンター・ヴァントの3種類の録音と大きくは違っていません。

①20分05②21分53③9分33,④13分01 計64分32

ギュンター・ヴァントのCD
ケルンRSO(1980年)
①19分57,②22分38,③09分45,④12分02 計64分22
北ドイツRSO(1992年ライヴ)
①19分28,②21分49,③10分00,④12分14 計63分31
ベルリンPO(1999年ライヴ)
①20分50,②21分34,③10分24,④13分07 計65分55

 また同じく残響の多いアーヘンの大聖堂で収録しているマルクス・ボッシュのCDは以下のような演奏時間で、このシャラー盤と30秒程度の差です。

ボッシュ・アーヘンSO(2004年ライヴ)
①19分50②23分06③09分30④11分34 計64分00

 こうしてみる演奏時間と実際に聴いた印象、聴こえ方はかなり違います。ボッシュのブルックナー・チクルスは最近完結しましたが、どうも残響豊かな会場での演奏をうまく収録できていないのではないかと思えるので、このCDは非常に対照的でした。なお、ライヴ録音としながらも拍手等は入っておらず、ほとんど雑音らしいものも聴こえません。

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昭和40年代生まれ、オットー=クレンペラーの大フアンです。クレンペラーが録音を残したジャンルに加え、教会音楽、歌曲、オペラが好きなレパートリーです。

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