ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン楽友協会合唱団
ガブリエル,エヴァ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ (S)
ウリエル:フリッツ・ヴンダーリヒ(T),ヴェルナー・クレン(T)
アダム:D.フィッシャー・ディースカウ(Br)
ラファエル:ワルター・ベリー(Bs)
No.34のソロ:クリスタ・ルートヴィヒ(A)
チェロ:オットマール・ボロウィツキー
チェンバロ:ヨセフ・ネボイス
(1966年2月,1968年11月,1969年4月 ベルリン,イエス・キリスト教会 録音 DG)
八月の15日前後、夜になったらコオロギの声がきこえだしました。それに京アニの現場に近いJR六地蔵駅あたりでヒグラシが鳴くのもきこえた日があり、こんな平坦な市街地でヒグラシの声を聞けるとは全く驚きました。滋賀や京都では地蔵盆のシーズンなのでそれが終われば夏も終わりなるのに、おっさんの世代になると全く名残惜しくなくてせいせいするくらいです。四季の歌じゃないけれどあえて選べば、冬か晩秋が好きで心身ともに快調になり、夏の暑さは年々こたえるようになります(しかし痩せない)。
先日アーノンクールがウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの結成50年記念公演で演奏した「天地創造」のCDを聴いていて、直後にそれとは対照的なスタイルのカラヤン、ベルリン・フィルのセッション録音DG盤を聴いてみました。過去記事(ブログを分割する前、OCNブログ時代)で扱ったことがあり、中学生の頃にジャケットの写真を覚えて店頭で探したのに折り悪く見つからなかったものでした。レコ芸編の「名曲名盤500(2017年6月1日発売)」では、第1位が11P獲得したそのアーノンクール盤、カラヤンとベルリンPOは第2位で10Pを獲得していました。第2位は1995年録音のガーディナーと分け合っていました。ちなみに第4位はブリュッヘンとP.マクリーシュが分けあい、第6位にカラヤンの再録音が入っていました。ということで、古楽器アンサンブルが並ぶ中に通常のオーケストラによる演奏としてはカラヤンが何とか食い込んでいるという選ばれ方でした。
久しぶりに聴く今回は第三部を最初に聴いてみましたが、全く格調高くて、「光あれ」の箇所を含む第一部にひけをとらない立派さにうたれました。フィッシャー・ディースカウのアダムが威厳もあって、創世記の物語でこの後に追放されることを忘れるような立派な歌唱です。通奏低音はフォルテ・ピアノではなくチェンバロとチェロ(*最初に書いた時、ピアノと書いたのは書き間違い、たまたまLPで1938年録音の「フィガロの結婚」を聴いていてそこでセッコに使われている楽器がほとんどピアノのような音色だったので無意識にピアノと書いてしまった)を使い、レティタティーヴォの中には通奏低音だけに独唱がのっている箇所もあり、大編成と思われるコーラスとの対比でバランスを保って肥大化した印象にならないのも見事だと思いました。第一部の冒頭、混沌をあらわす序奏が妙に明朗で、既に楽園を予告しているような美しい響きでした。録音途中で急逝するヴンダーリヒは、もう少しリリックな、軽妙なタイプの歌手がキャストされることが多いウリエルを、少しタフな姿を思い描かせる力強い歌唱が印象的でした。
これを聴いていると、世代によっては印象が違うとしてもいまだに立派な天地創造だと思いました。あらためて直近に聴いたアーノンクールの演奏をちょっと思い返してみると、コーラスがメインの楽曲ではまるでミサ曲のような得も言われない印象だったのに対して、今回のカラヤンの旧録音の方は全然そんな風では無くて、舞台作品の音楽といった感じでした。元々典礼音楽ではないのだからそれで当然ということですが、アーノンクールの方の魅力も再認識しました。