raimund

新・今でもしぶとく聴いてます

指:スラットキン

10 6月

エルガー オラトリオ「神の国」 スラットキン、LPO/1987年

190609aエルガー オラトリオ「神の国(The Kingdom)」 Op.51

レナード・スラットキン 指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ロンドン・フィルハーモニー合唱団(合唱指揮リチャードクック) 

祝福された乙女:イヴォンヌ・ケニー(S)
マグダラのマリア:アルフレーダ・ホジソン(A)
聖ヨハネ:クリストファー・ギレット(T)
聖ペトロ:ベンジャミン・ラクソン(Bs)

(1987年10月24,25日 アビーロード・スタジオNO1 録音 RCA)

190609b エルガー(Sir Edward William Elgar 1857年6月2日 - 1934年2月23日)作曲のオラトリオ「The Kingdom(神の国)」は、ペンテコステ・聖霊降臨を扱った数少ない近、現代の声楽作品です。ペンテコステはキリスト教界においては「教会(建造物の教会堂ではなく信徒の群れという意味での教会)の誕生日」として位置付けられます。新約聖書の四つの福音書に続く「使徒行録」の中に記事があり、使徒達が集まっているところイエズスの預言通り聖霊がやってきて、それまでユダヤ教の指導者やらの目をはばかって隠れるように行動していたペトロらが、それを境に大胆に宣教の行動を始めたという転機の出来事でした。クリスマス、イースターに並ぶ大祝日にもかかわらずこれを題材にした、真正面から扱った作品はあまりありません。
エルガーのオラトリオ、「ゲロンティアスの夢」、「使徒たち」と並ぶ大作なのでゲロンティアス程ではないもののボールトやヒコックスらが全曲録音していました。このCDはアメリカの作品の他イギリス音楽もれぱートリーにしてエルガーやヴォーン・ウィリアムズの交響曲等を録音しているレナード・スラットキン(Leonard Slatkin, 1944年9月1日 - )が1987年に録音したものです。「神の国」を単独で録音したのか、ゲロンティアスらも連続録音したのか未確認です。

190609 音楽の方も歌詞内容にふさわしいもので、例えばバッハのマタイ受難曲でキリストのセリフの箇所には後光というのか光背と呼ぶのか、記者や他の人物のパートと区別して聴き分けられる独特の通奏低音が付いていますが、「使徒たち」や「神の国」の音楽は全体にそういう香気を帯びたような味わいがあります。原因があってその因果関係によって結果があるという出来事を劇的にあらわすというより、時季が来ると芽吹いて開花するような自然な流れ、溢れてこぼれ落ちるような恩寵を音楽にするというのは難しいものだと思いますがそんな方向性の作品なのだと思います。

 歌詞を見ながら聴いていると、聖母マリア(祝福された乙女)とマグダラのマリアの二重唱という大胆な構成があったり、聖ペトロのパートがペトロ自身の言葉として記録されたものではなく、イエズスがペトロに言った「あなたが立ち直ったとき、兄弟たちを力づけてやりなさい」という言葉も含み、それをペトロが歌うという箇所があって感慨深いものがありました。ルカ福音書の第22章32節以下が出典で、「わたしはあなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈った」に続く言葉なので、聖霊降臨の場面でこれが引用されるのは効果的です。

 スラットキンと言えば1980年代だったか、セントルイス交響楽団を率いて初(?)来日の際にラジオでかなりプッシュされていたのを少し覚えています。その後ヴォーン・ウィリアムズの交響曲を第3~5番を聴いたくらいなので、どういうスタイルの演奏なのかよくわかっていませんでした。しかしこの「神の国」は魅力的であり、二年後に録音したヒコックスの全曲盤に負けない出来だと思いました。
3 4月

ヴォーン・ウィリアムズ交響曲第4番 スラットキン・PO

レイフ=ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲 第4番 ヘ短調

レナード・スラットキン 指揮
フィルハーモニア管弦楽団

(1991年6月21日,11月29日 ロンドン,ウォトフォード・タウン・ホール  録音 RCA・SONY)

140403  先日眼科医院へメガネの処方箋を書いてもらいに行きました。一年半くらい前に現在のレンズに変えた時は、メガネ店チェーン「メガネのMキ」で視力測定をしてもらいましたが、遠くを見る時は良くてもパソコンのディスプレイや地図等の細かい数字が見にくいので困ることがありました。これはレンズの調整が十分でなかいからだと思い、眼科に行った方が確実だと単純に考えました。しかし結果は今回の処方箋も前回のメガネ店の計測も同じでした。問題は年齢からくる遠近を調整して見る能力の衰えであり、確実に年寄の仲間入りをしているということでした(遠近の二種のレンズが要るかどうかというくらい)。

 眼鏡と何の関連があるかと言えば、先日のスラットキンによるヴォーン・ウィリアムスの田園交響曲について、録音会場等のデータを読み間違っていて、小さい字をよく見ると第5番と同じ会場だったという話です。交響曲第4番は、前作の田園交響曲(第3番)から十年以上経過した1931年から1934年にかけて作曲され、翌1935年の4月10日にボールト指揮、BBC交響楽団により初演されました。友人の作曲家アーノルド・バックスに献呈されています。

交響曲第4番 ヘ短調
第1楽章・Allegro
第2楽章・Andante moderato
第3楽章・Scherzo Allegro molto
第4楽章・Finale con Epilogo fugato: Allegro molto

 この曲は概ねショスタコーヴィチの交響曲第4番と第5番のあいだくらいの時期に作曲されたことになります。1934年の8月にはヒトラーがドイツ総統になり、ヨーロッパが戦争へ向けて加速し出した年と言えます。これまでの三つの交響曲である海の交響曲、ロンドン交響曲、田園交響曲とは違い、冒頭から警告音のような不吉な響きで始まり驚かされます。しかしショスタコーヴィチの作品を思えばどこかしら調和的で、出口が見つかりそうな楽観性が漂います。近代音楽の中のイギリスらしさというのはどういうものか、言葉で表し難いものだと思いますがこの曲を聴いていると、一つは寒気がしたり生理的な嫌悪感を呼ぶような生々しさに走らないという要素もあると思いました。それにブルックナーの交響曲のように、音の中に埋まって溺れたり酔っ払いかねないような要素も少ないと思います。

 スラットキンのヴォーン・ウィリアムズの中ではこの第4番と第6番が特に相性が良さそうだと、まだそんなに多く聴いたわけではありませんが、何となくそう感じました。スラットッキンは同じ廉価箱にエルガーの管弦楽作品があるように、何故かイギリス音楽をレパートリーにしています。これらの録音の後に2000-2004年までBBC交響楽団の首席を務め、夏のプロムス最終夜の指揮をしています(英国人以外では初めてらしい)。

26 3月

ヴォーン・ウィリアムズの田園交響曲 スラットキン・PO

レイフ=ヴォーン・ウィリアムズ 田園交響曲(交響曲 第3番)

レナード・スラットキン 指揮
フィルハーモニア管弦楽団

リンダ・ホーヘンヘルド:ソプラノ

(1992年6月218日 ロンドン,1991年6月21日,11月29日 ロンドン,ウォトフォード・タウン・ホール 録音 RCA・SONY)

140325  今日のお昼頃、雨の降るなかを上京区内の鴨川左岸を北上していると、桜の花がちらほら咲いているのが見えました。花見までもう一息のようです。びわ湖周辺では昔から三月下旬に寒さが戻り、強風が吹き荒れることがあってそれが過ぎると春本番になりました。その頃比良山にあった天台宗のお寺では法要、法華八講を行ったことから、「比良八講荒れじまい」と呼び習わしということですが、現在は「八講の法要」は3月26日に行われています。今日は朝からあちこち用があって、車で移動中はヴォーン・ウィリアムズ(トムソン・ロンドンSO)をかけていました。結局朝からナビの案内音声を交えまがらも交響曲の第2-6番をBGM的に聴きけました。渋滞、雨天、嫌な要件という環境のにはピッタリというか、聴いていると妙に気分が落ち付く気がします(トムソンのヴォーン・ウィリアムズは評判通りのようです)。

 このCDは先日の交響曲第5番と同じでスラットキンの廉価箱全集の中の一枚です。田園交響曲の他にグリーンスリーヴスによる幻想曲(これも有名)と交響曲第4番が入っています。田園交響曲はそれまでの二つの交響曲(海の交響曲、ロンドン交響曲)から飛躍して作風が変わっているようです。なお、ヴォーン・ウィリアムズは当初交響曲に番号をふっていなくて、標題でよんだり調性で呼んだりしていました。後に第8番目・ニ長調、9番目・ホ短調の交響曲の調性がそれぞれ5番目・ニ長調、6番目・ホ短調と同じになったので通し番号をつけたようです。

田園交響曲
第1楽章:Molto moderato
第2楽章:Lento moderato
第3楽章:Moderato pesante
第4楽章:Lento

 スラットッキンとトムソンの田園交響曲は以下のようなトラックタイムです。大きな差はないものの、スラットキンの方が速目のテンポです。建築物というより形の無い空気のようなものを描いたという印象の田園交響曲は、あまり速い演奏はどうかと想像しますがこれくらいなら違和感は無く、第四楽章は特に魅力的でした。

スラットキン・PO・1992
①09分59②10分31③04分48④08分15 計33分33

トムソン・LSO・1987年
①10分18②08分11③06分33④10分44 計35分46

 といってもヴォーン・ウィリアムズ自体、縁が薄かったので好みや感じ方もこれからぶれまくることだと思います。この年代のフィルハーモニア管弦楽団はシノーポリとマーラーの交響曲を録音していました。(録音会場を、これを最初に書いた時、Abbey Road Studio と書いていましたが間違いでしたので、その部分を消しました。)それにしても明朗な二作目のロンドン交響曲と比べるとかなりの変貌ぶりです。海の交響曲やロンドン交響曲では、断片的にどこか別の作曲家か何かで聴き覚えのあるようなフレーズがありましたが田園交響曲になるとそうしたことは無くなりました。

21 3月

ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番 スラットキン・PO

レイフ=ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲 第5番 ニ長調

レナード・スラットキン 指揮
フィルハーモニア管弦楽団

(1990年4月6,8日 ロンドン,ウォトフォード・タウン・ホール 録音 RCA・SONY)

140321  昨日は車ではなく電車で通勤したので久しぶりに京阪宇治線を利用しました。大阪市方面へのピークよりは遅い時間なので混み方も程々でしたが、途中で190センチくらいありそうな巨漢が乗っているのに気が付きました。よく見ればまげを結っていて、関取の手前くらいの若い力士でした。そういえば貴乃花親方の部屋が宇治市内の龍神総宮社に宿舎を置いていたので、これから大阪場所へ向かうところだったのでしょう。大阪府立体育館まで電車を乗り継いで行くとけっこう時間はかかるはずです。それにしても近くで見るとすごい威圧感です。

 昨日に続いてヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番です。このCDは超廉価箱で復刻されたレナード・スラットキンとフィルハーモニア管弦楽団のヴォーン・ウィリアムズ交響曲全集の中の一枚です。紙の箱、ジャケットで解説無し、写真は一種類と隅々まで廉価が行き届いているこのシリーズ、作品や演奏家についてあまりよく知らなくても買って聴いてみようかという気になります。しばらく実質未聴状態でしたが、聴くとなかなか魅力的で、第6番とか第4番あたりが良さそうです。

スラトキン・PO・1990年
①10分48②04分25③13分04④09分21 計37分38

トムソン・LSO・1987年
①11分58②04分43③11分42④10分16 計38分39

 第5番は昨日のトムソン盤を聴くと少し線が細く、弱い感じです。特に第2、3楽章がそんな印象が強かったです。このCDは上記のようなトラックタイムで、昨日のトムソン、ロンドンSOとは合計時間で約1分の差だけです。それ以上にレーベルが違うからか録音会場の差か、同じようにロンドンでイギリスのオーケストラが演奏しているのに音の印象が違っています。RCAの録音はもっと克明というか、オケの近くで聴いているような感じだった思うので、これは今回のヴォーン・ウィリアムズ特有の録音なのかと意外に感じました。

 ヴォーン・ウィリアムズの交響曲は、個人的にまだ「こんな風な演奏が好み」だというのが定まっていないので何とも言えませんが、この廉価箱を漫然とでも続けて聴くと交響曲第5番の特徴が鮮明になりました。

 スラットキン(スラトキンと表記されていることもある)は、1979年から1996年までアメリカのセントルイス交響楽団の音楽監督を務め、この間に来日公演もして1980年代後半だったかけっこう話題になっていました(たぶんそうだと思う)。スラットキンはアメリカ人作曲家の他にイギリスの作品もレパートリーにしていたのでこの企画が始まり、ヴォーンウィリアムズはセントルイスSOではなく本場イギリスのオケで録音することになったそうです。しかし、かえって長年パートナーを組んできたオケの方が面白かったかもと思います。スラットキンのヴォーン・ウィリアムズは国内盤として発売されたかどうか全く記憶に無いので、レコ芸別冊の月評特選盤を集めた(1980-2010年・交響曲編)冊子を見るとスラットキンの名前が見つかりませんでした。その代わりにトムソン、ロンドンSOの「海の交響曲」、「南極交響曲」が特選になっていました。

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昭和40年代生まれ、オットー=クレンペラーの大フアンです。クレンペラーが録音を残したジャンルに加え、教会音楽、歌曲、オペラが好きなレパートリーです。

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