raimund

新・今でもしぶとく聴いてます

指:モントゥー

9 11月

ストラヴィンスキー「春の祭典」 モントゥー、パリ/1956年

191030ストラヴィンスキー バレエ音楽 「春の祭典」

ピエール・モントゥー 指揮
パリ音楽院管弦楽団

(1956年11月2,5,6,11日 パリ, サルワグラム 録音 DECCA)

 先日に亀の群れが遊泳するのを見た川は西高瀬川じゃなくて西羽束師川でした。前者は江戸時代に作られた運河が起源だそうですが、西羽束師川の方も農業用水、排水路として整備されてきたので現在の外観も唱歌に出て来る自然の川そのものとは違います。その割に亀が多数見られて、その他に鯉(観賞用が野生化したか?)のように見える大きな魚がたくさん見えましたが、ニゴイとか別の魚もしれません(めったにアリゲーターガーじゃないだろうが)。工場からの温かい排水げ常時流れるところは熱帯魚が繁殖しているときいたことがあり、それはどこの川だろうかと思いながら歩いていました。

 京響の11月定期が来週末に迫ってきました。そろそろ来期のプログラムも気になる頃ですがとりあえず11月定期のプログラムの一つ、春の祭典を古い録音で聴きました。先日アンセルメの「春の祭典」再録音を久しぶりに聴いた際にも思ったように、この作品は激しく、尖った部分に注意が行ってそんな要素で塗りつぶされたように記憶してしまいますが、実際には幻想的で霞がかかったような部分も長くて、そちらの方も印象深いものでした。「春の祭典」初演者であるモントゥーとパリ音楽院管弦楽団の録音はさらにそう思わされて、より優雅でバレエ音楽であることを改めて意識させられました。

 アンセルメ再録音盤以上に木管の音色が際立って、いっそうおだやかな作品という印象です。1950,60年代の「春の祭典」は多かれ少なかれこういう感じの演奏、作品観だったのかと思いました。初演時に野次や罵声で客席が大混乱だったというのが想像できないところです。モントゥーのこの録音でなくても、慣れのためかそんな騒ぐ程に刺激的な内容じゃないと思えます。

 そういえばモントゥーはこの作品の初演者であり、客席にはサン・サーンス、ドビュッシーやラヴェルも居た(
サンサーンスはすぐに退席したとか)のでモントゥーの世代は凄かったんだと思えてきます。カンブルランが2010年に読SOの大阪公園で指揮した時はこれら古い録音とは違ってもっと激しいものだったので、来週の京響客演がどうなるかと思います。
29 10月

ベートーヴェン交響曲第8番 モントゥ、ウィーンPO/1959年

191029ベートーヴェン 交響曲 第8番 へ長調 作品93

ピエール・モントゥー 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

(1959年4月15,22日 ウィーン,ゾフィエンザール 録音 DECCA)

 時々思い出したように特定の曲を聴きたくなることがあり、先日ウレンペラーの映像を観ていると急にベートーヴェンの第8番が頭の中をちらほらし出しました。それなら続けてクレンペラーの1970年、チクルスを視聴すればいいところでしたが、その少し前にモントゥー「春の祭典」を聴いていたので約60年前のモントゥーのベートーヴェンを思い出しました。モントゥーのベートーヴェンと言えばクレンペラーの逸話の一つ、クレンペラーがウィーンのレコード店をVOXレコードのメンデルスゾーン社長と訪れて自身の田園のレコードを買おうとした際に在庫が無く、店員が他の指揮者のレコードを薦めてその中にモントゥーの名前も出ていました。十代の頃それを読んでモントゥーもそこまでの(クレンペラーのレコードは在庫無しなのに)人物なのかと思いました。

モントゥー・VPO/1959年
①9分47②3分34③4分55④7分22 計25分38
H.S.イッセルシュテット・VPO/1968年
①9分57②3分54③5分09④8分06 計27分16
ベーム・VPO/1972年
①9分43②4分16③4分57④7分58 計26分54
アンセルメ・スイス/1963年
①9分58②3分53③5分22④8分01 計27分14
レイホヴィッツ・ロイヤルPO/1961年
①9分08②3分45③4分27④6分52 計24分12
セル・CLEO/1961年
①9分40②3分46③5分25④7分47 計26分38
クレンペラー・PO/1957年
①9分47②4分28③5分16④8分15 計27分46

 実際に聴いてみると稀に聴ける鮮烈なベートーヴェン第8番で内心驚きました。シューベルトの交響曲を速目に演奏したような爽快さながら、演奏時間をみるとルネ・レイホヴィッツ程ではなくて特に突出していません。それだけでなく、九曲の交響曲の中で第8番だけが何となく異質なものという感覚が多少ありましたが、このモントゥーの演奏ではそんなことはなくて、第7番からの繋がり、連続を感じさせられます。これを聴いたタイミングのおかげでこんなに好感を覚えるのかもしれませんが、この爽快さとベートーヴェンらしい感じの両立は例外です。

 モントゥーのベートーヴェンは、タワーレコードの企画で九曲まとめて2014年に復刻されていて、第1、3、6、8番をウィーン・フィルと、残りをロンドン交響楽団とのセッション録音でした。
ちなみにレコ芸編の「名曲名盤500」の最新合本版(2017年)のベートーヴェン交響曲第8番では末尾にモントゥーとウィーンPOが挙がっていました。再発売のタイミングにも影響されるとしても、ここれだけ多数のベートヴェン交響曲全集がある中で60年近く経っているので大したものでした。

 付属冊子にの解説によると、1956年に英EMIが米キャピトルを買収したのを契機にRCAとDECCAが提携するようになったそうで、それからパリ、ロンドン、ウィーンでモントゥーのレコード録音が始まりました。それまではライナー、ミュンシュの陰に隠れて人気が無かった(売れない)というモントゥーのベートーヴェン録音も実現したそうです。ライナー、ミュンシュとそんなに格差があるとは意外ですが、二人がシカゴ、ボストンと東海岸のオケの首席だったのに対してモントゥーはサンフランシスコだったので仕方ないとも言えそうです。

3 9月

ベートーヴェンの田園交響曲 モントゥー、ボストンSO/1959年

180903ベートーヴェン 交響曲 第6番 Op.68「田園」

ピエール・モントゥー 指揮
ボストン交響楽団

(1959年8月8日 録音 ARTIS)

 著作権切れのためなのか19世紀生まれの巨匠らの音源を集めた廉価箱がどんどん出ています。ピエール・モントゥーについても何種か出ていて、セッション録音だけを集めたものもあり、音源が重複するものもあるようです。これはライヴ、放送用音源を集めたCD集(40枚組)なので、どうやらセッション録音とは重ならないようです(完全にそうかは分からない)。音質は特に弦が金属的というのか硬い響きに感じられ、同時期のセッション録音を念頭に置けばちょっと残念です。それでも管楽器はそこそこ良いと思いました。

 この箱物のレーベルの商品紹介HP・頁には詳しい解説と演奏家の年表が掲載され、その中に「1934年(59歳) 
●オットー・クレンペラー[1885-1973]の招きでロサンジェルス・フィルに客演。滞在期間は5週間に及び、演奏会は成功を収めます」という一行が見つかりました。同じユダヤ系、ストラヴィンスキーの初演を手掛ける者同士ということもあってかやはり接点はあったのかと思いました。

 聴いた印象はメリハリが効いて、第3、4楽章のような速い楽章は速目、第2楽章はゆったりと演奏して楽章の特徴を強調しています。そのおかげで第2楽章は魅力的なのに対して第3、4楽章はどこかドタバタした感じで何となく全体的に散漫な感じがします。合計演奏時間はクリップス、シューリヒト、セルあたりと近くなっています。それから各楽章のバランスはやっぱりクレンペラーが独特でした。第1楽章は程よいテンポだと感じられて、こういう調子で最後まで行けばと思いましたが、そうはならず楽章ごとに違ってきました。

モントゥー・ボストン/1959年
①11分57②11分45③4分56④3分13⑤08分51計40分02
シューリヒト・パリ音楽院管/1957年
①09分22②12分31③4分58④3分35⑤08分37計39分03
クリュイタンス・BPO/1960年
①10分18②13分44③5分13④4分08⑤10分09計43分32
クリップス・ロンドンSO/1960年
①10分17②12分11③5分52④3分25⑤09分07 計40分52
セル・クリーヴランド/1962年
①09分56②11分53③5分33④3分47⑤10分16 計41分25
オーマンディ・フィラデルフィア/1965年
①09分19②12分21③3分00④3分45⑤09分23 計37分48
レイホヴィッツ・ロイヤルPO/1961年
①11分33②12分40③5分06④3分32⑤09分30計42分21
クレンペラー・PO/1958年,エディンバラ
①12分11②12分23③6分22④3分17⑤08分18計42分31
クレンペラー・PO/1957年,セッション録音
①13分04②13分22③6分33④3分43⑤09分12計45分54
クレンペラー・PO/1960年,ウィーン
①13分22②13分29③3分49④3分35⑤08分50計43分05
クレンペラー・フィラデルフィアO/1962年
①13分46②13分34③6分51④3分42⑤09分34計47分27
クレンペラー・BPO/1964年
①13分08②13分27③6分41④3分35⑤09分47計46分38

 クレンペラーの逸話の一つに本人とVOXレコードの社長、メンデルスゾーン氏がEMIのレコード録音とVOX社のレコードとどちらが優れているか実際に聴いて決着を付けるために二人でレコード店へ行くというのがありました。クレンペラーの田園交響曲を買おうとしたら品切れで、店員から他の指揮者の田園を薦められてクレンペラーがぶち切れるというオチが付いたものでした。そこで店員が薦めた田園のレコードにモントゥーの名前もあって、十代半ばでクレンペラーのフアンになって間もない頃は内心カチンときてそこに名の挙がった指揮者にちょっと反感さえ覚えたものでした。それはともかく、その話を真に受ければモントゥーの田園は店頭在庫があったわけで、当時は人気があったのだろうと思います。
25 8月

フランクの交響曲 モントゥー、シカゴSO/1961年

180825フランク 交響曲 ニ短調

ピエール・モントゥー 指揮
シカゴ交響楽団

(1961年1月7日 シカゴ,オーケストラホール 録音 RCA)

 最近はラジオ、テレビ番組も視聴し損なったものをネット経由で後から聴く、観ることができるものがあります(そういえば「お天気ヒットパレード」は無くなったのか)。今から三十数年前、NHK・FMで世界の民族音楽という何のヒネリもない番組があって、アフリカからアジアまで一般人には簡単に聴くことが出来ない現地の音楽を流して解説していました。かなり長い間続いたと思いますが、今頃になってまたあれを聴きたいと思うようになってきました。解説はディレクターの「なるさわ れいこ(漢字は未確認)」氏自身で担当されていたはずです。今ならSDカードに長時間録音できるのに当時はカセットテープだったので、初めから録音をあきらめていたのが残念です。

 今回も古いLPをCD化したもので、ピエール・モントゥーが85歳になる年にシカゴ交響楽団と録音したフランクの交響曲です。この録音は「名曲名盤500(レコ芸編)」の最新版では何故か10ポイント獲得で一位になり、9ポイントで二位のカラヤン、パリOと僅差になっています。後者、カラヤンの方は今から38年くらい前の同企画でもベスト3に入っていたような覚えがありますが、モントゥーの方はどうだったか分かりません。最新版のコメントには前回で二位まで順位を上げた云々とあるので、新譜時からしばらくは別としても圧倒的なロングセールスとまではいかなかったようです。

モントゥー・CSO/1961年
①18分02②10分37③10分21 計39分00
アンセルメ・スイス/1961年
①18分18②10分46③10分32 計39分36
パレー・デトロイトSO/1959年
①16分07②08分52③09分19 計34分18
クレンペラー・ニューPO/1966年
①17分49②10分28③10分59 計39分16
マルティノン・フランス国立/1968年
①18分10②11分57③10分56 計41分03

 実際に聴いてみると剛直というのか同時期のフリッツ・ライナーが指揮しているシカゴSOの録音そのままのような響きなので、フランス系の作品ということで無意識にも期待する風情は良くも悪くもあまり感じられません。トラックタイムをながめると、同時期のアンセルメやクレンペラーと似ています。自分の単純な感想としては魅力的ではあるものの、これがナンバー・ワンと思える程圧倒的でもないと思いました。また、余を以て代え得ないようなオンリー・ワンの方はどうかとなると、何とも言えないところです。それにしてもフランクの交響曲の作品解説にはしばしばブルックナーとの類似に言及されますが、このモントゥーとシカゴSOの録音で聴いているとフランクはブルックナーの交響曲とは何か異質なもののように感じられます。

 モントゥーはこれより前に、サンフランシスコSOともこの曲をレコード録音していて、そちらの方が全盛期、常任のオーケストラを指揮しているのでモントゥーらしい内容なのかもしれませんが聴いたことはなく、没後40年の企画でタワーレコードが「没後40周年記念ピエール・モントゥーの芸術3」として世界初CD化したきりになっています。こうなると却ってサンフランシスコSOとの旧録音の方が気になってきました(ヲタの悪い癖と言えよう)。

19 8月

ペトルーシュカ モントゥー、パリ音楽院O/1956年

180819aストラヴィンスキー バレエ音楽 「ペトルーシュカ」(1911年版)

ピエール・モントゥー指揮
パリ音楽院管弦楽団

ジュリアス・カッチェン(Pf)

(1956年11月6,7,9,10日 パリ,サルワグラム 録音 DECCA/Philips)

180819b 先日、NHK・eテレのETV特集「自由はこうして奪われた~治安維持法 10万人の記録~」を少し観ていたら、治安維持法犠牲者国賠同盟の国会請願行動と最近の国会答弁がチラッと映りました。「当時適法に成立した法律だから謝罪の必要はない」という違う問題でもお馴染みの論法にはもう驚かないとしても、ひょっとしたら治安維持法に近い法律をごく近い将来導入したいとか、そんなことを真剣に考えているのではないかと不気味に思いました。その治安維持法が健在だった時、石川達三の小説「生きている兵隊」というのが瞬殺的に発禁になりました。それが21世紀の現代日本では文庫本化されて、発売当初の伏字削除箇所も明示して入手可能です。昨日地下鉄の中でそれを読んでいたら、隣の席に中国人の家族連れが着席しました。

 先日のクレンペラーによる1947年版に続いて、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」、今度は1911年版でモントゥー、パリ音楽院管弦楽団、ピアノは先日のパスカル・ロジェの師匠、ジュリアス・カッチェンです。モントゥーはペトルーシュカのバレエ公演で初演指揮をしたので、有名作品を初演者指揮のレコードで聴けるというのな贅沢な?話です。ストラヴィンスキーの三大バレエはもっと新しい年代の録音が有名になり、モントゥーやアンセルメは影が薄くなりましたが、このペトルーシュカは古いながら魅力的です。先日のクレンペラーとは対照的にバレエ音楽にふさわしい躍動感と優雅さを伴っています。

 ディアギレフのロシアバレエ団と言えばストラヴィンスキーやラベル他の話にはちょくちょく出てくる名前です。ピエール・モントゥー(Pierre Monteux 1875年4月4日 - 1964年7月1日)
が1911年から1914年まで指揮を担当した後、エルネスト・アンセルメ(Ernest Alexandre Ansermet 1883年11月11日 - 1969年2月20日)が引き継いで指揮にあたりました。アンセルメの方が八年程若く、モントゥーの後任だったというのはアンセルメについて「バレエ音楽のかみさま」(便宜、販売上の都合か??)と称されてかなり刷り込まれているのでちょっと意外です。自分がペトルーシュカのレコードを初めて買ったのはアンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団のステレオ録音だったので余計にそんな気がしました。

第1部:謝肉祭の市 Fête populaire de semaine grasse
第2部:ペトルーシュカの部屋 Chez Pétrouchka
第3部:ムーア人の部屋 Chez le Maure
第4部:謝肉祭の市(夕景) Fête populaire de semaine grasse (vers le soir)

 ペトルーシュカは1910年から1911年にかけて作曲され、1911年6月13日にパリで初演されました。管弦楽曲として演奏する1911年版と1947年の差は、前者が四管編成、後者が三管に縮小改訂したもので、演奏時間は30分強です。今回のモントゥーは上記の4部にトラック分けされて35分弱、1947年版のクレンペラーは38分強でした。
 
18 8月

幻想交響曲 モントゥー、サンフランシスコSO/1945年

180818bベルリオーズ 幻想交響曲

ピエール・モントゥー指揮
サンフランシスコ交響楽団

(1945年2月17,18,4月15日 録音 BMG)

 暑いと言いながら最高気温が35℃以下なので、風が吹けば別に儲からなくてもどこかしら涼し気になってきました。今日の日中は長時間車に乗っていて、カンカン照りの晴天ながら外気温計は33度まででした。この日差しにしてこれくらいの気温なら、先月半ばに43℃とか44℃を表示したのは何だったのか、祟りか妖怪の仕業くらいの異様さです。かつて滋賀県の草津線と京都府の綴喜郡を横切って京田辺の松井山手まで鉄道を敷設するという案があり、バブル期は今にもゴーサインが出るような勢いだったのが懐かしくも遠い昔のように思えます。今日はその鉄道が通るかもしれなかった辺りを通ったら、集落のあちこちで地蔵盆をやって田んぼには稲が実のっていました。

180818a 先月や盆前に比べれば大したことのない暑さなのに、運転しながら陽に当たり過ぎたためか、日射病のようなぐったり感で寝転がっていました。こういう時に流して自然と入ってくるのが自分の場合、幻想交響曲が代表的な作品なので、古い録音の復刻CDで聴きました。これは太平洋戦争がまだ終わる前、ベルリンの陥落もまだの頃にモントゥーがサンフランシスコ交響楽団を指揮して録音したものです。モントゥーはこれ以前の1931年にパリ交響楽団という団体と同曲をレコード録音しましたが、それからこの1945年まで交響曲のレコード録音をしていないと解説に触れられていました。そういうレパートリーだったということと、モントゥーの立ち位置、尊崇の度合いも関係しているような現象です。

モントゥー・サンフランシスコ/1945年
①13分15②5分41③14分49④4分49⑤09分28 計48分02
モントゥー・VPO/1958年
①14分01②6分08③16分24④4分54⑤09分46 計51分13
パレー・デトロイトSO/1959年
①11分33②5分33③14分36④4分28⑤09分03 計45分13
クレンペラー・PO/1963年
①16分11②6分36③18分04④5分00⑤10分41 計59分12 

 モントゥーは幻想交響曲を何度もレコード録音していて、この五年後にもサンフランシスコ交響楽団とセッション録音した他、フィリップスへアムステルダム・コンセルトヘボウOとも録音していました。それから先日のウィーン・フィル、北ドイツ放送交響楽団とも録音がありました。今回の演奏は後年のウィーンフィル盤と同じく前半楽章の優雅なところはそのままで、特に第2楽章はもっとワルツ的で軽快な内容になっています。それだけでなく演奏時間が少しずつ短いことからも察せられるように、疾走するような軽快さを帯びています。第5楽章の鐘がきれいなのに、これから火葬の点火でも始めるような酷薄なものを想像してしまいます。

 ただ、さすがに古い録音なのでCD化されたとは言え、風呂場で聴くようなこもったような音になり、だいぶ損をしています。それでも戦中の音源だと思えば良好な方とも言える程度の聴きやすさです。これでモントゥーの幻想交響曲を新旧二種聴きましたが、魅力的な部分は沢山あるとしても、一曲を通した統一感というのか、作品を貫徹するような方針のようなものがちょっと弱いような気もしました。もっとも、幻想交響曲自体が組曲的な内容とも考えられるので元来がこういう感じかもしれません。
11 8月

ベルリオーズ幻想交響曲 モントゥー、ウィーンPO/1958年

180811aベルリオーズ 幻想交響曲

ピエール・モントゥー指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

(1958年10月20-24日 ウィーン,ゾフィエンザール 録音 DECCA)

 昨夜、CS放送でいくつかチャンネルを確認していたら、「ああ決戦航空隊」をやっていて大西瀧治郎中将の割腹する場面がどーんとでてきました。一旦命をとりとめたところで、児玉誉士夫がかけつけて自分も死ぬと言い出していました。児玉さんといえばロッキード事件のことが最初に思い出されるのでこんなこともあったんだと妙な気分でした。特攻隊のことはさて置き、大西瀧治郎といえば日中戦争時の重慶爆撃に際して山口多門(ミッドウェーの飛龍でおなじみ)少将の参謀を務め、絨毯爆撃を主張したそうでした。ともあれ、それは
東宝・戦争映画の「連合艦隊」より七年前の作品なので、戦争映画も描き方が変わってきたのをしみじみ実感しました。

180811b 
その映画「ああ決戦航空隊」は、クラシック音楽のレコードの年代なら下記のマルティノンとフランス国立放送O盤が発売される頃くらいの封切りでした。今回のモントゥー(Pierre Monteux 1875年4月4日 - 1964年7月1日)の幻想交響曲は、数あるモントゥの同曲のレコード中で最後かその前くらいに当たる晩年のレコードでした。モントゥーの幻想としては1950年にセッション録音されたサンフランシスコ交響楽団とのものがベストだとして評判になっていました。サンフランシスコSOはモントゥーが1935年から1954年まで音楽監督を務め、両者の黄金期として記憶されています。ただし、CDの復刻状況はあまり目立っていなくて、このウィーンPOとの方は今回の豪エロクウェンス・廉価盤に初CD化と表記されていました(国内では何度かCD化されていると思われる)。

モントゥー・VPO/1958年
①14分01②6分08③16分24④4分54⑤09分46 計51分13
パレー・デトロイトSO/1959年
①11分33②5分33③14分36④4分28⑤09分03 計45分13
マルケヴィチ・ラムルーO/1961年
①14分15②6分08③15分58④4分48⑤11分03 計52分12 
クレンペラー・PO/1963年
①16分11②6分36③18分04④5分00⑤10分41 計59分12 
ミュンシュ・パリO/1967年
①13分13②6分12③12分46④4分08⑤08分29 計44分48
マルティノン・フランス国立放送管/1973年
①15分08②6分42③17分22④4分53⑤09分57 計54分12

 実際に聴いてみると第3楽章までは優雅で、高貴な印象なので後半楽章と全く別世界です。特に第3楽章はここだけ反復したくなるほどの美しさです。第4楽章になると急にグロテスクな空気が濃くなって、第5楽章も含めて時々鳥肌が立ちかけます。それでも有名なミンシュ、パリ管のようにばく進するようなタイプではなくて独特なテンポですが、それがかえって不吉な暗さを忘れさせないようにも思えました。あと、第5楽章の鐘の音が大きく入っていて、教会の鐘楼で鳴らされるようなものより小さいサイズを思わせ、お寺で僧侶が出に持つリンよりはもっと共鳴する音色です。

 幻想交響曲も古い録音の方が多くなってしまいました。上記のCD中では、合計時間だけならマルケヴィチ、ラムルーOが一番近似しています。モントゥーの主なポストではサンフランシスコ交響楽団の首席が一番期間が長くて、黄金期に当たりそうですが、レコードの面ではまだLPのステレオ録音が出ていなくて、亡くなるまでの数年間首席を務めたロンドン交響楽団や今回のウィーンPOとの方が入手しやすい状態でした。
7 8月

ラヴェルのマ・メール・ロワ モントゥー、LSO/1964年

180807aラヴェル バレエ音楽「マ・メール・ロワ」

ピエール・モントゥー 指揮
ロンドン交響楽団

(1964年2月22-26日 ロンドン,ウェンブリー・タウン・ホール 録音 DECCA/Philips)

180807b 前回の「ダフニスとクロエ」の全曲をバレエ公演で初演したのはフランス生まれのユダヤ系指揮者、モントゥー(Pierre Monteux 1875年4月4日 - 1964年7月1日)でした。たしか、そのモントゥーの箱物があってフランス系の作品も入っていたと思ったところ、どこへしまったのか所在が思い出せず、動くと暑いので探さずにいました。それがふと思い出してハイドンのCDといっしょに置いてあるのを確認できて、中を確めてマ・メール・ロワを聴きました(ダフニスはこれには含まれていない)。モントゥーも当然ラヴェル作品を一通りレコード録音し、この紙箱7枚組には「ラ・ヴァルス」、「マ・メール・ロワ」、「ボレロ」が入っていました。

 古い録音なのに旧フィリップスのおかげかデッカのリマスター・CD化の功か、鮮烈な音に感心します。1990年録音のダフニス(chandos)よりも魅力的に感じるのは何故だろうと思いました。そのため、聴いていると作品自体にも一気に惹かれます。それからモントゥーの指揮にも。何と言うのか、ラヴェルの音楽が(「マ・メール・ロワ」はマザーグースを題材にした)高貴な輝きを持っているとさえ思えてきます。

 「マ・メール・ロワ」はピアノ連弾用として1908年から1910年にかけて作曲され、管弦楽によるバレエ音楽に編曲され、組曲版も作られました。管弦楽バレエ版は1912年1月28日に初演されました。この曲のレコードで定評のあるのはどれだったか、とりあえずクリュイタンスの名前だけは頭に浮かび、「名曲名盤500(レコ芸編)」の最新版を見ると、やっぱりクリュイタンスとパリ音楽院Oの1962年・EMI盤が第1位でした。2位は3種あり、どれも全曲盤で、アバドとロンドンSO(1985年DG)、ブーレーズとベルリンPO(1993年DG)、ラトルとベルリンPO(2008年ワーナー)が並んでいます。今回のモントゥーは二人の評者が1点ずつ入って2点、第11位としてリストに挙がっていました。

 モントゥーの録音はこれまでブラームスやベートーヴェン等の独墺系作品が印象に残っていて、それらは晩年にあたる頃の演奏でした。クレンペラーより約十年も年上で、この録音時は89歳の手前でした。モントゥーは1911年からディアギレフのロシア・バレエ団の指揮者を務めていたのでラヴェル以外にもドビュッシーの「遊戯」、ストラヴィンスキーの「春の祭典」、「ペトルーシュカ」等の初演を指揮していました。それはモントゥーが三十代、第一次大戦の前なのでマーラーが亡くなった頃なので年代、歴史を感じます。
9 2月

ヴェルディの椿姫 カルテリ、モントゥー、ローマ歌劇場

170209aヴェルディ 歌劇「椿姫」

ピエール・モントゥー 指揮
ローマ歌劇場管弦楽団
ローマ歌劇場合唱団

ヴィオレッタ:ロザンナ・カルテリ(S)
アルフレード:チェーザレ・ヴァレッティ(T)
ジョルジョ・ジェルモン:レナード・ウォーレン(Br)
フローラ・バルヴォア:リディア・マリンピエルティ(Ms)
アンニーナ:リナ・アレッサンドリーニ・マッカニャーニ(Ms)、他

(1956年6月1-11日  ローマ歌劇場 録音 RCA)

170209 毎年新年絡みの行事が過ぎた頃、それでも寒さが厳しい今時分になると、習慣的にヴェルディの椿姫の音楽が脳内で自然と再生されます(特に前奏曲)。それに合わせて毎年椿姫のCDを取り上げてきたので今年もマーラー続きを中断してこれにしました。ヴィオレッタのロザンナ・カルテリという名前を聴いてもすぐにピンときませんでしたが、ボエーム(プッチーニ)のミミが当たり役だったらしくて、ロザンナ・カルテリの名前でググれば最初の方で古いボエームの録音が挙がってきます。それになかなかの美形で舞台も素晴らしかっただろうと想像できます。

170209b この録音はモントゥー指揮の数少ないオペラの全曲盤なのになかなかCD化されず、テスタメントから復刻された後複数のレーベルから出て、ようやくRCAの廉価シリーズで再発売されました。自分が購入したのはその廉価盤なのでどの復刻の音質が良いかとかは分かりません。これも聴きやすいとは思いますが、1956年のモノラル録音らしくない、微妙なリマスター加減です。

 それはともかくとして内容はかなり素晴らしくて、後半になるほど良いようで第3幕が特に魅力的でした。そう言うからにはヴィオレッタとアルフレードの二人が、他の超有名歌手のレコードに比べると特別に輝かしい声とまではいきません。特に第1幕のヴィオレッタの歌は地味な方だと思います。しかしそれでも、ドラマというのか人物の感情はしみじみと感じられる歌唱、表現です。ヴィオレッタだけでなく、ジェルモンもいかつい声なのに息子を思う弱み、甘さ等諸々が混ざってえも言われない味わいです。第二幕の最後あたりも物語の妙が迫ってきて、音楽だけで舞台の姿まで目に浮かびそうです。

 アンニーナのリナ・アレッサンドリーニ・マッカニャーニもカルテリの声が引き立って二人ともすごくきれいにきこえます。この録音を演奏者を知らずに聴いたらモントゥーが指揮しているとは分からないと思いますが、ニューヨークでフランス系作品を受け持って指揮していた時期があるらしく特に例外的なレパートリーでもないそうです。第一幕から終始安定していて好印象でした。 これはレコードのためのセッション録音ですが、このメンバーによる上演は素晴らしかっただろうと(ヴィオレッタの難曲で大拍手とはいかないかもしれないが)思いました。
10 10月

ブラームス 交響曲第2番 モントゥー・VPO 1959年

ブラームス 交響曲 第2番 ニ長調 OP.73

ピエール=モントゥー  指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

(1959年4月13,15日 ウィーン、ソフィエンザール録音 DECCA )

111010b  ピエール=モントゥー(1875年-1964年)は、フランス生まれでパリ音楽院に学び、ディアギレフ率いるロシアバレー団の指揮者をつとめていました。その際にストラヴィンスキーの春の祭典等の初演を行っています。20世紀の前半、戦前までの時代を演奏家が同時代の作曲家と密接に関わり、共同作業的に作品の創造に貢献していたと評されることがありますが、まさにそういう時代の人物の一人です。生粋のパリ人ながらこの人もユダヤ系の民族のようです。実は長らくモントゥーはユダヤ系とは知らず、また全然気が付きませんでした。このブラームスの第2番を聴いても、そうしたことは全然分かりません。同じフランス人でもポール=パレーの方がそうかもしれないと思っていました。

 モントゥーは、ブラームスやベートーベンも得意にしていました。また生前はブラームスの前でブラームスの何らかの作品を演奏した経験があるそうです。そうしたこともあって、ドイツ・オーストリア系の作品の中でもブラームスは特別な存在だったようです。交響曲第2番は最晩年にロンドン交響楽団と録音したものが有名だったはずです。このCDはそれではなく、3年前にウィーンで録音されたものです。特にこのウィーン録音の方が良いとかそういう趣旨ではなく、そもそもロンドンSOの方は手元に無いので分かりません。再録音までの期間が短いのは不思議で、どちらが主導権をとったのか分かりませんが出来栄えについて何らかの不満があったのかもしれません。

 このCDはモントゥーがDECCAと旧フィリップスに残したセッション録音を集めたものの2枚目のCDです。プロデューサーはジョン・カルショーです。CD集はラベルのボレロやドビュッシーの映像等のフランスの作品、チャイコフスキーの眠れる森の美女の他に、このブラームスの第2、バッハの管弦楽組曲やハイドンの時計、シベリウスの2番等も収録されています。

111010c  改めて聴いてみると、冒頭からすごく伸びやかで明朗な響きに惹きつけられます。ブラームスの田園交響曲とはよく言ったと思えてきます。またウィーンフィルの音色も加わって素晴らしい美しさです。以下はブラームスの交響曲第2番について1950年代の録音の演奏時間を列記しました。モントゥー盤の第1楽章が長いのは、主題のリピートによるものだと思います。第1楽章は別にすると、3つとも大きな違いは見られません。トスカニーニの第2楽章は1分程速いですが、他は近似しています。しかし、数値とは別に聴いた印象はかなり違います。トスカニーニ最晩年のライブは、おとなしくなった(?)としても強烈な推進力と歌に充ち溢れています(第4楽章で金管がフライングしている程)。クレンペラーのセッション録音は、田園というニックネームが似合わない激しく堅固な演奏です。

モントゥー・VPO(1959年)
①20分28,②9分20,③5分06,④9分00 計43分54

クレンペラー・PO(1956年)
①15分03,②9分17,③5分28,④9分04 計38分52
トスカニーニ・PO(1952年)
①14分38,②8分20,③5分16,④8分50 計37分04

111010a  京都市役所南側の大通り、「御池通」の地下には駐車場と「ゼスト御池」という地下街があります。地下鉄東西線の「京都市役所前」駅の改札と直結しています。その中に新星堂も出店していましたが、先月いっぱいで閉店してしまいました。かつては、宇治市内の近鉄小倉駅前の西友の中や、JR京都駅の北側、京都タワーの北にあった近鉄百貨店の7階にも出店していました。その2店舗はクラシック売場がかなり充実していて、近鉄百貨店の方は輸入盤も豊富で、個人的に息抜き的スポットでした。閉店になったゼスト御池店は、クラシックはオムニバス盤かベスト100的なものが少しある程度で、あまり寄ることはありませんでした。CD等のソフトの売れ行きはやはり低迷しているようです。

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昭和40年代生まれ、オットー=クレンペラーの大フアンです。クレンペラーが録音を残したジャンルに加え、教会音楽、歌曲、オペラが好きなレパートリーです。

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