180731サン=サーンス 交響曲 第3番 ハ短調 Op.78「オルガン付き」

ジャン・マルティノン 指揮
フランス国立放送管弦楽団

マリー=クレール・アラン:オルガン

(1970年9月 ランス国立放送104スタジオ 録音 ERATO/Warner) 

 先日の異例のコース(左打席に居ればぶつけられるような軌道)をとった台風、日曜の午前に近畿を横切ったので二時過ぎに爆音、轟音で目が覚めてしまいました。記憶にある風の凄さではワースト4に入るくらいで、ならず者が集団で高圧ホースを使って窓や壁に放水しているような雨音が耳に付いて一時間半くらいは寝られずにいました。台風で空気が入れ替わったにしては不快な暑さは相変わらずで気温は下がっても体感の酷暑感は全然ましになっていません。そんな中でふとサン・サーンスの交響曲「オルガン付き」って冒頭はどんな感じだったかと、どうでもいいことながら気になり出し、どうしても思い出せませんでした。それはNHK・FMの「きらクラ!」を通勤時に車内で聴いていた時、きらクラ・ドンのコーナーで「魔法使いの弟子」が出題されて答えが分からなかったのが発端で、名前は知っていて有名な作品でもいざ冒頭の一部が流れて止められたら題名が分からないのがそこそこあると思いました。そこでサン=サーンスの交響曲第3番でした。

交響曲第3番ハ短調作品78
第1楽章(前半)Adagio - Allegro moderato ハ短調 - 
             (後半)Poco adagio 変ニ長調
第2楽章(前半)Allegro moderato ハ短調 — Presto ハ長調 - 
             (後半)Maestoso — Allegro ハ長調

 
サン=サーンス(Charles Camille Saint-Saëns, 1835年10月9日 - 1921年12月16日)の交響曲第3番は五曲ある彼の交響曲のうちで最後に書かれたもので、作曲者の代表作であるだけでなくフランスの交響曲の代表的な作品として有名でした。それにもかかわらず、個人的にはどうも嫌いで、第2楽章の後半でオルガンが派手に(壮麗に)出て来る辺りが勝ち馬に乗りまくって敗者を踏みつけるような戦いを連想して(ひねくれた発想)しまい、若い頃は生理的に受け付けない気分でした。全く個人的な感情ながら初めて聴いてから三十年以上経てば感じ方も変わるかなと思って最初から聴いてみました。

 これはマリー=クレール・アランがオルガンを弾いたマルティノンの旧録音で、昨今の廉価箱の一つ、マルティノンの後期録音集(ERATOへの録音)に入っていたものでした。本当に久しぶりに全曲を聴いてみると、第1楽章に第2楽章の前半までは素晴らしい曲だと思って、全くいわれのない嫌い方をしてしまったものだと思いました。ただ、音質はどうも良くないようでしたが値段を思えば贅沢なことだと思いました。マルティノンは約五年後に再録音(サン=サーンスの交響曲を全曲)していて、どうもそちらの方がマルティノンの同曲のレコードとしては認知度が高かったようでした。

 問題の(個人的問題だっただけ)第2楽章後半もアランのオルガンのおかげか、オーケストラの音量とのバランス加減か、引き締まったストイックな響きに感じられて、昔の嫌悪感が洗い流される心地でした。こうなるとこの曲について作曲者は何を表現しようとしたのか、当時の背景のようなものがにわかに気になってきました。ちなみに「名曲名盤500(レコ芸編)」の最新版で同曲の頁をみると、この録音が8点で三位に入っていました。第一位は13点で1958年録音のミュンシュ、ボストンSO/RCA盤が入っていました。案外古い録音が評判をとっていて以外でした。