raimund

新・今でもしぶとく聴いてます

ブラームスの声楽作品

30 3月

クレンペラーのドイツレクイエムEMI盤 モノラルLP

220329bブラームス ドイツ・レクィエム Op.45

オットー=クレンペラー 指揮 
フィルハーモニア管弦楽団
フィルハーモニア合唱団

エリーザベト・シュワルツコップ(S)
ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ(Br)

ラルフ・ダウンズ(オルガン)

(1961年1月2日,3月21,23,25日,4月26日 ロンドン,キングズウェイ・ホール 録音 EMI)

220329 クレンペラー(Otto Klemperer 1885年5月14日 - 1973年7月6日)の没後50年のメモリアル年も近づいています。あと少しなのでそれまではブログ更新を続けるつもりです。ところで、お馴染みのクレンペラー本・「クレンペラーとの対話(P.ヘイワーズ編)白水社」の翻訳者である佐藤章氏は、1963-1964年のシーズンにロンドンでクレンペラーとフィルハーモニア管弦楽団の公演をしばしば聴いたと巻末に書かれてあり、コヴェントガーデンでのクレンペラー指揮のローエングリンにも感動して一晩眠れなかったとも書かれています。そのローエングリンは海賊盤でも出たことはないはずなので、今世紀に入ってからのクレンペラーの未発表音源商品化の流れに乗って、映像は無理でもなんとかCD化されないものかと期待しています。

 過去記事で複数回あつかったクレンペラーのドイツ・レクイエム(ブラームス)のモノラル版LPが手に入り、今迄にこの演奏を聴いた時よりも感銘深かったのでまた扱いました。それに、モノラルLPの音も魅力的だと思うので今更ながら注記したいところです。ステレオ録音のLPが出始めた頃、モノラル版もあわせてというか先行して発売されていたようです。コロンビア・英EMIのLPならSAX~という1960年代前半までの番号のステレオ盤には大抵の場合モノラル盤も併存しているようです。フィデリオ全曲盤のモノラルは克明で、力強いタッチのペン画のような印象で演奏のクレンペラーらしさを実感できるものでした。

 今回改めて聴いていると、二人の独唱者だけでなくコーラスの魅力に圧倒される気がしました。最初にCD化されたものを聴いた際は(もう30数年前か)音質として張りぼて的、中に空洞ができたような肥大感のようなものを感じましたが、今回はもっと密度が詰まったコーラスの響きに感じられて全く感銘深いものがありました。合唱団員の多くは非ドイツ語圏だと推測できますが、作品の持っている「共同体の音楽(ベンジャミン・ザンダーがマーラーの音楽とブルックナーの音楽を比較して後者について指摘した呼称)」的な温和なものを実感させられます。バッハの作品に使われるコラール合唱なんかをドイツのコーラスが歌うの聴くと、冷たい強風が顔に吹き付けるような感じがする場合があり、ドイツ・レクイエムもそういうタイプの作品かと思っていましたが、今回聴いているともっと柔和で穏やかな、冬の風じゃなくて春の風という印象を気のせいか、うけました。

220329c 昭和40年代生まれの自分よりも年長の世代でクレンペラーの演奏をじかに聴いたり、初期・初出のレコードで聴いていた層の感想の中にブラームスのドイツ・レクイエムが良かったというコメントがちょくちょく出てきます。国内盤でクレンペラーのEMI盤がCD化されていく中でもドイツ・レクイエムは結構早い時期に出ていたのはそういう傾向を反映してのことかと思います。自分がクレンペラーとフィルハーモニアOのドイツ・レクイエムを最初に聴いたのはLPのリマスター再発売の輸入盤でした。CDの時代に成り切る直前、国内盤のLPが廃晩で入手不可能だった1980年代後半でした。その時の第一印象は今一つの感銘度で、メサイア、マタイ、ロ短調ミサを聴いた時の衝撃的な感銘深さを基準にすれば、ということですが、何か聴いていて自分の内側に浸透してくるものが少ない気がしました。今回はそういう作品に対する隔ての中垣のようなものが崩れた感がありました。

 なお、モノラル専用のカートリッジやフォノ機器に付いているステレオとモノラルの切り替えスイッチで、ステレオのカートリッジとモノラルカートリッジで交互に聴いていたらステレオのカートリッジも結構良い音で聴けると思いました。
18 1月

クレンペラーのドイツ・レクイエム/1961年 復刻LP

190118ブラームス ドイツ・レクィエム Op.45

オットー・クレンペラー 指揮 
フィルハーモニア管弦楽団
フィルハーモニア合唱団

エリーザベト・シュワルツコップ(S)
ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ(Br)
ラルフ・ダウンズ(オルガン)

(1961年1月2日,3月21,23,25日,4月26日 ロンドン,キングズウェイ・ホール 録音 Vinyl Passion/EMI)

 昨日の朝は目が覚めて時計を見ると5時11分だったので阪神淡路大震災の時のことが少し思い出されました。さいわいにしてめざめた直後に地震ということにはならず、そのまま50分くらいうとうとしていました。実はこのLPについて17日に更新するつもりだったのがどうも再生具合が今一つで、針圧をちょこちょこさわっている内に冷えて来て全部再生しないで終わりました。クレンペラーのドイツ・レクイエムは三十年以上前に初めて聴いた際も、マタイ受難曲やらロ短調ミサ、メサイア程の感銘度ではなく、最近復刻されたLPで久々に聴くと印象が変わるかと思ったところ、やはり同じようなものでした。それに針圧の調整時、アームリフトのレバーを下げた状態で行ったかどうか記憶が定かでなくてまた最初からやりなおしました。どうも微妙な感じでピシッときまった感じがしないのがもどかしいところです。

 あらためて聴いているとフィッシャー・ディースカウの独唱部分が一番素晴らしいのじゃないかと思い、彼のレパートリーで歌曲以外では宗教曲が一番凄いかもしれないと思いました。そう思っている内にロ短調ミサのソロはヘルマン・プライが歌っていたはずなので、その時はフィッシャー・ディースカウを起用しなかったんだなと改めて思いました。クレンペラーのドイツ・レクイエムはかなり初期に国内盤でもCD化されたはずで、そこそこ定評があったようでした。しかし個人的には他の宗教曲を指揮している時のような重さ、剛直さ、抑制、謙抑の精神があまり前面に出ていないような気がして、その意味でクレンペラーらしくないと、やっぱり思いました。

 作品としても、例えばモーツァルトの「アヴェ・ベルム・コルプス」が人間の手によらないで天から下ったような神秘的な性格だとすれば、ドイツ・レクイエムは対極的で人間の長年の労働によって出来たような作品、様々な境遇から召集された兵士、戦友が慣れ親しんだ軍歌といった位置付けのようです。

 それにしても七つの楽曲の歌詞、対訳を見ていると不思議な構成ですが、第六曲目にはヘンデルのメサイア第三部でも使われている使徒書簡、復活に言及しているコリント人への第一の手紙第15章から歌詞が取られています(「死は勝利にのまれた。死よ、おまえの勝利はどこにあるのか。死よ、おまえのとげはどこにあるのか。」)。原文校訂の日本語訳聖書とドイツ語の歌詞を比べてみると、日本語が「死」を二度重ねているのに対してドイツ語では最初が死、“ Tod ” という訳にして、二度目が
地獄、“ Hölle ”という語を使っています。どちらにせよ同じことかと思いつつ。ブラームスの時代のドイツ語聖書は原文から直接訳したのじゃなかったのかなと思いました。
15 3月

ブラームス ドイツ・レクイエム ヤノフスキ、ベルリンRSO

180315aブラームス ドイツ・レクィエム Op.45

マレク・ヤノフスキ 指揮
ベルリン放送交響楽団
ベルリン放送合唱団(合唱指揮サイモン・ハルゼー)

カミッラ・ティリング(S)
デトレフ・ロート(Br)

(2009年11月 ベルリン,フィルハーモニー 録音 Pentatone)

 先日、旧中京税務署の近所を歩いていると跡地に開設される保育所施設の建物がだいぶ出来上がっているのが見えました。さすがにそれは忖度、公文書書き換えとかでダメになったりはしないでしょうが、保育所と言えば舛添知事時代に東京都が定住外国人のための学校用に土地を貸すのはけしからん、保育所が足らないのだからそっちを優先にすべきというバッシングが起こったことがありました。そのことがあったので、件のM学園の小学校の問題が明るみに出た際に、同学校法人がろくに資金の準備も無いのに大阪府の手続きが進んだという報道を知り、私立の小学校なのにこの厚遇振りは何なのかと感心していました(ついでに保育所や福祉施設にしろというバッシングも無く)。

180315 マレク・ヤノフスキが1980年代前半に指環全曲録音を完成させた際、ヨーロッパでもそこそこ評判になり、ウォルフガング・ワーグナーは彼をバイロイトに呼ぼうとしたところが、ヤノフスキは新しいプロダクションでなければ引き受けないと言ったそうです。
ウォルフガングはそれを聞いて怒り、二度とヤノフスキに声をかけないまま亡くなりました。昨年末のNHK・FMのバイロイト特集の解説でその話に触れられ、ヤノフスキは当時の態度は間違っていたと認めているそうです。その機会はショルティが一年だけバイロイトの指環を指揮した翌年の指揮のことなので、仮にヤノフスキが謙虚に(?)受諾していたら1984年から1986年の指環を指揮できたわけです(ペーター・シュナイダーではなく)。

180315b もっとも、デニス・ラッセル・デヴィスももっと早くにバイロイトで指揮しているので、そんなに大したことはないとも言えるかもしれません(下手うってたら後のキャリアにも影響したか)。さて、このドイツ・レクイエムもヤノフスキのレパートリーからすれば録音があって当然と言えます。しかし特に話題になっていなかったようで、発売時には全く気が付きませんでした。ヤノフスキのブルックナーのミサ曲第3番とかベートーヴェンのミサ・ソレムニスは透明感のある清新なもので、感銘深い内容でしたが、ドイツ・レクイエムもそれらと同じスタイルというか響きの特徴が似ています。

 だから最初聴いた時はコーラスの人数を減らしているのかと思ったくらいで、ブラームスらしい渋く塗りこめたような印象とは全く違いちょっと驚きました。歌詞対訳を見ながら聴けばいいと思うような、宗教曲らしい感慨をおぼえました。ラテン語歌詞のレクイエムとは違い、葬儀で使用する作品ではないドイツ・レクイエムを聴いてこういう感覚になるのは珍しいと思います。この印象は分厚い響きで圧倒するタイプとは違う
ヤノフスキのブルックナーにも共通するようで、さらには「スコアが透けて聴こえる(見える)」と評されたドレスデンとの指環の延長のようでもありそうです。
6 11月

クレンペラー、ルートヴィヒ ブラームスのアルト・ラプソディ

151105bブラームス アルト・ラプソディ OP.53

クリスタ・ルートヴィヒ:メゾ・ソプラノ

オットー=クレンペラー 指揮
フィルハーモニア管弦楽団
フィルハーモニア合唱団
(ヴィルヘルム・ピッツ指揮)

(1962年3月 ロンドン,キングスウェイホール 録音 EMI)

 今晩帰宅が遅くなり、京滋バイパスの側道を走行していると、宇治川を渡る手前で通行止めになっていました。しかたなく宇治川沿いの道路に転進しました。時々帰宅時に宇治川の堤防上を走行することがあり、川辺の風景もチラチラと目に入ります。ここ何年かで気が付くのは釣りをしている人がめっきり減ったということで、夏の鮎だけでなく冬場の寒バエ釣りをする人が滅多に見られません。そう思ったら今年の春先に、伏見区の工場からシャンプーの原液が大量に宇治川に漏れ出たことがあったと聞きました。しかしN経新聞にはその記事が載った記憶がなく、知人に聴くと地元の新聞に地味取り上げられただけだったそうです。別段健康を害した人が出たという話は無いので別に問題無いのかもしれませんが、この報道の濃淡は一体何なんだろうと思いました。

151106a ブラームスの声楽作品、アルト・ラプソディの正式名称は “Fragment aus 《Harzreise im Winter》 『ゲーテの「冬のハルツの旅」からの断章』 なので見た印象が大分違います。というのはこの録音はクレンペラー指揮なのに、アルト・ラプソディという題名からついスルーしてしまい、CD化されてからもほんの数える程しか聴いていませんでした。久しぶりに聴くと冒頭のオーケストラ部分がまるでマーラーの作品のように聴こえ、ブラームスとマーラーの作品も親近性があるのかと思いました。あるいはクレンペラーの指揮だからそうなったのかもしれません(恩義のあるマーラーの作品をさめた情緒で演奏している)。

 アルト・ラプソディは12分半程の演奏時間になり、三つの部分に分けられて最後の三つ目の部分で合唱が入ります。1869年に作曲され、翌1870年に初演されています。作曲時期にブラームスが思いを寄せていたシューマンの三女ユーリエが婚約してしまい、ブラームスは思いを打ち明ける隙も無く終わりました。だからこの曲を「怒りをもって」作曲したと語っています。しかし聴いているとそんな背景があるとは想像し難くて、一年前に初演されたドイツ・レクイエムに似ているようです。

 クレンペラーがEMIへ残したブラームスの録音は1954~1957年の期間に集中していて、音質がやや貧弱というか硬い印象です。1960年のヴァイオリン協奏曲とこの作品がちょっと離れていて、演奏と音質ともに良好です。どうせならニュー・フィルハーモニア管弦楽団になる前くらいに交響曲を再録音すれば良かったと思いました。ちょうどシューマンの交響曲第4番と同じくらいの時期になり、1950年代の良さを残してもう少し余裕のある風に聴こえることだろうと思います(想像してももはやかなわないが)。
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昭和40年代生まれ、オットー=クレンペラーの大フアンです。クレンペラーが録音を残したジャンルに加え、教会音楽、歌曲、オペラが好きなレパートリーです。

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