マイケル・クライダー(S)
(1995年7月10-12,14-15日 オールセインツ教会 録音 CANDOS)
コンベンツアル聖フランシスコ修道会のブラザーで、ながらく聖コルベ館の館長を務め、月刊「聖母の騎士」の編集に携わった小崎登明(1928年-2021年4月)さんの訃報が流れました。ちょうど昨日にパウロ書店の前を通り過ぎて、ブラザー小崎の引退後なんとなく聖母の騎士誌が変わったと思いつつ、最新号は来週買おうと思ったところでした。ブログ「小崎登明の93歳日記」は4月15日が最後の記事になっています(「もう、チカラが無い」の一行が目にとまります)。2006年だったか本河内教会とコルベ館を訪れたことがあり、その時はブラザーは不在の上に暑かったのでルルドに寄らずに帰るという無精な訪問だったこともあって、もう一度行きたいと思っている間に突如引退されてだいぶ経っています。
教会関係以外でも長崎の原爆と平和祈願、キリシタン関連や聖コルベ神父に関係して著作も多く、広く知られている方で訃報記事と共に業績、生涯にふれられています。コルベ館の館長の最後の方で居付いた猫のライモンド(ほかのブラザーが名を付けて接待していたようで)との係りが紹介されていたことがあり、最初はあまりお好きでなかったようなのが徐々に愛着がわいていく様子だったのが思い出されます。やがて猫のライモンドがプイと居なくなってしまいました。
さて、このレクイエムは先月のコリン・デイヴィス指揮のロンドンSOのライヴ盤と関係があり、同演奏会はリチャード・ヒコックス(Richard Hickox CBE 1948年3月5日 - 2008年11月23日)没後一年に追悼的に演奏されたものでした(ヒコックスの思い出に捧げると)。今回はそのヒコックスが生前に録音して好評だったヴェルディのレクイエムであり、独奏者の選択からしてあまりイタリア・オペラ的ではない(コテコテな伊オペラ風ではない)内容になっています。イギリスでは発売当初から評判になったそうですが日本では国内盤仕様があったかどうか、このCDの存在も長らく知りませんでした。
シャンドス・レーベルはシャンドス・サウンドと呼ばれる音質でも有名で、ギブソン指揮のスコティッシュ・ナショナルOのシベリウスやヤルヴィのショスタコーヴィチ、ドヴォルザークは個人的に音質も含めて好きでした。ただ、オーケストラ録音の音質は好き嫌いが結構分かれていたようです。今回のヴェルディは広い空間に響き渡るような感じに録られ、その割にティンパニが鮮明に聴こえてきます。独唱もコーラスも大きく、克明に聴こえてきて、こういう大編成の作品の割にうるさい音ではないと思いました。その割にどこかしらオーケストラので弦が引っ込んでいるような、それか声楽が前面に出過ぎているのか何かバランスが違うようにも思いました。
独唱者は皆名前を知らない歌手で、メゾソプラノだけイタリア系らしき名前です。独唱部分は声の威力に圧倒されるという風ではないけれど、妙にコーラスと相性が良いような落ち着いた歌唱なので終始レクイエムらしさを保っています。ヒコックスは自らオーケストラと合唱団を設立して活動を開始し、ロンドン交響合唱団の指揮者にも就任しています。声楽作品の大作ではエルガーのオラトリオ三曲が思い当たります。