210904bベートーヴェン 交響曲 第1番 ハ長調 Op.21

アンドレ・クリュイタンス 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

(1958年12月 ベルリン,グリューネヴァルト教会 録音 EMI)

210904a 先日雨のやみかけたところで京都市内の東西の通、押小路通を西へ向かって歩いていると割烹か何か和食の店の戸が開いていたので、通りすがりに中を見るとカウンター席だけで中がすっかり無くなって、片付いているのが見えました。そこはコロナ禍の少し前に竣工したビルで、2階から上が宿泊施設になっている小さな建物でした。盆以降の緊急事態宣言で酒類提供不可が止めとなったのかもしれません。一度も入ったことがありませんが似たような状況のところ全国に多数あるはずです。零細な店、政権に近い筋にお友達が居るわけで無し、政府系の融資が注ぎ込まれることはなくひっそりと閉店のようでした(貼り紙も無かったので休業なのか、推して知るべしなのか)。そんな中で九月に入り、金曜日のお昼にやっと外へ出た際に半袖では上着があった方がいいかな、くらいの気温になりました。

210904 さて、少しだけ、一時的に涼しくなって一曲をまるまる聴く気力が出てきました。ベートーヴェンの交響曲第1番、ベルリン・フィルが一人の指揮者でベートーヴェンの九曲の交響曲を全部録音したことで有名なクリュイタンスの全集から聴きました。久々にSACDで聴いてみたところ、どうも音が拡散し過ぎたようなぼやけたような感じに聴こえたので、通常のCD層(SACD非対応の機器)で聴くとかつて聴いた時の記憶がよみがえってきました。冒頭から明朗で、バロックの組曲を思わせるようなおおらかさでした。

クリュイタンス・BPO/1958年
①09分32②6分05③3分27④6分01 計25分05

シューリヒト・パリ/1958年
①08分11②5分57③3分25④5分55 計23分28
カラヤン・BPO/1961年
①09分30②5分49③3分55④5分40 計24分54
カラヤン・PO/1953年/キングスウェイホール
①07分31②6分15③3分44④5分40 計23分10
クレンペラー・PO/1957年/キングスウェイホール
①09分52②8分53③4分05④6分18 計29分08 

 SACDハイブリッド版の日本語解説(満津岡信育 氏)によると、「クリュイタンスの指揮はイン・テンポを基調とし、弦楽セクションと管楽器陣を鮮やかに噛み合わせつつ、随所で木管のソロが晴朗に歌い上げて行くスタイル」で、「ドイツ系の指揮者が行うように、強弱と速度変化を絡めてドラマティックに盛り上げたりしない」ということですが第1番を聴いても成るほどと思います。盛り上げないとしても終始引き締まって、この曲らしいどこか張り詰めて、前へ進む勢いのような感覚はよく現わされていると思いました(前回のベーム、ウィーン・フィルよりも)。

 このクリュイタンスのベートーヴェンを録音し出した時期は、ベルリン・フィルがカラヤンと共に初めて来日した1957年11月のすぐ後ということになり、クリュイタンスの全集からたいして間を空けないでDGへカラヤンとベルリン・フィルが初のベートーヴェン全集に取り掛かっているのが興味深いところです。ついでにフルトヴェングラーの没後から五年と経ってない頃でもありました。