マリー・クレール・アラン:オルガン
*オルガン:マルクーセン&ソン(1959年)
(1960年11月2-4日 スウェーデン,ヘルシングボリ,聖マリア教会 録音 Erato)
手加減の無い猛暑だった(ついでに休暇も無い)八月も今日で終わりになります。夕方になって雷雨の後、ようやく30℃を下回り、これで峠を越してほしいとしみじみ思いました。それから先日は夜になって震度3の地震があり、震源地は大阪北部地震と同じ方面なので未だあの地震は終わってないような不気味さです。先日急にバッハのオルガン曲が聴きたくなり、この曲とシュープラー・コラール集を聴いていました。オルガンが奏でるコラールの旋律と、まるでニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲のような豪快・爽快さも備える?BWV.564のトッカータ部分は淀んで蒸し暑い空気を吹き飛ばすような気分になりました。
「トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV.564」は、バッハがライプチヒのトーマスカントルに就任する以前、ワイマール時代(1708~1714年)に作曲されたと考えられる作品です。題名の通り、トッカータ、アダージョ、フーガと三つの部分が連続して約16分の演奏時間になります。楽曲の解説にはヴィヴァルディに代表されるイタリアの協奏曲の様式を取り入れた作品と必ず書いてあり、ブゾーニがピアノ版に編曲しているのでそちらも知られています。
この曲はバッハのオルガン曲の中でも個人的に特に好きな作品で、十代の頃に買ったクレンペラーのLPのB面にヴァルヒャによるバッハ作品集が入っていて、それを聴いて衝撃的に好きになったのが思い出されます。この曲とトッカータとフーガ ニ短調「ドリア調」BWV. 538と何曲かが入っていて、確か1950年代のモノラル録音だったと思います。ヘルムート・ヴァルヒャのその録音は豪快というのか本当にワーグナー作品に通じるような威圧感で迫ってきました。こういう風に書けばバッハのフアンでワーグナーが嫌い(特に人物、思想が)な方は嫌な気分かもしれませんが、響き、演奏効果の面で両者の作品には何か通じるものがあるような気がしていました。
このCDはマリー・クレール・アラン(Marie-Claire Alain 1926年8月10日 - 2013年2月26日)のバッハ作品全集の一回目録音に入っているもので、アナログ・ステレオ録音初期ながら独特の迫力ある音質です。アランの弾くバッハは特に好きで、自分が聴いた中では彼女の演奏が一番素晴らしいと思っていましたが、それはこの全集より新しい二度目の録音の時期のものが念頭にあってのことでした。パッケージに使われているアランの写真は眼鏡もなく、相当若いのに驚かされます。これが録音開始当時の写真だったなら三十代前半なので当然そうなるわけでした。初回全集は最近CD化されたものですが、この当時のオルガンのレコード録音はみなこんな感じだったのか、会場の空間を感じさせる残響があまり入っていなくて、その分輪郭が鮮明でオルガンの音の威力がよく伝わります。