ミヒャエル・ギーレン 指揮
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg(南西ドイツ放送交響楽団)
(2013年12月20日 フライブルク,コンツェルトハウス 録音 Hanssler Swr Music)
路傍伝道という行為がキリスト教界では特に異教社会での布教活動として行われます。辻説法に似たようなもので、大正や昭和初期、終戦後しばらくは日本でそこそこ盛んだったようで、鐘や太鼓をたたきながら聖歌を歌って歩くスタイルが知られていました(今でも時々年末に見られる救世軍の募金が少し似た雰囲気があるか?)。そういう活動に使われる聖歌なのか、「まどいの雲消えて」という歌を不意に思い出しました。派手な曲なので個人の趣味としてはまり好きではありませんが聴くとインパクトがありました。それからその聖歌を穏健にした曲調の「主よ終わりまで」という賛美歌があって、その歌詞に「名利の嵐 しずめ給え」という言葉が出てきます。「続・今でも~」のブログじゃないのにいきなり何じゃい、というところですがブルックナーの交響曲第9番を聴いていて、前作の第8番の終楽章を思いうかべて比べるとまさしく、世に認められたい(交響曲の作曲家として名声を得たい)という名利の欲求がある程度得られて、その嵐が静まり突き抜けたような世界なのを改めて実感しました。
このギーレンの最晩年の演奏であるブルックナーの第9番を聴くと特にそんな印象が強くて、作曲者がこの曲の作曲中に言ったとされる言葉をもう少し真に受けた方が良いと思い直しました。このCDは引退を表明したミヒャエル・ギーレンの未発表録音も含んで発売が始まった、ギーレン・エディションの第三弾に含まれた初出のブルックナー第9番です。予告広告に第9番が凄いと銘打たれ、「楽員のやる気に満ちた演奏が、楽曲のすべての音符に血を通わせたかのような表現に結実」、「バーンスタインの第2楽章を上回る迫力のスケルツォに、深い情感と壮絶な破壊に泣けるアダージョは特に聴きものです」と書いてある通り、1980年代くらいまでのギーレンとは違った内容のブルックナーです。
ギーレン・SWRSO/2013年
①27分05②12分04③27分50 計66分59
クレンペラー・ニューPO/1970年
①26分43②11分23③27分12 計65分18
ヴァント・BPO/1998年9月
①26分12②10分35③25分12 計61分59
ヴァント・NDRSO/1993年3月
①26分55②10分43③26分52 計64分30
それに聴いている内に第2楽章のところでクレンペラー晩年、末期に録音された第9番をほうふつとさせるテンポと威容にちょっと驚かされました。第3楽章がさらに素晴らしくて、遅めのテンポをとりながら自然な流れというか、威圧されるような感じではなくて率直に作品が入ってきて感動的です。遡って第1楽章は、これから第9番が開始されるのにな何ともちからが抜けて、隠居して茶室にでも安座を決めているような心地よさが印象的でした。全曲を聴き終わったところでこれだけ充実しているのに、ベートベンの田園交響曲のフィナーレ直後のような平安な空気が充ちていて心底感動的でした。
それに聴いている内に第2楽章のところでクレンペラー晩年、末期に録音された第9番をほうふつとさせるテンポと威容にちょっと驚かされました。第3楽章がさらに素晴らしくて、遅めのテンポをとりながら自然な流れというか、威圧されるような感じではなくて率直に作品が入ってきて感動的です。遡って第1楽章は、これから第9番が開始されるのにな何ともちからが抜けて、隠居して茶室にでも安座を決めているような心地よさが印象的でした。全曲を聴き終わったところでこれだけ充実しているのに、ベートベンの田園交響曲のフィナーレ直後のような平安な空気が充ちていて心底感動的でした。
ギーレン・SWRSO/2013年
①27分05②12分04③27分50 計66分59
インバル・2013年①23分19②11分19③23分16 計57分54
ブロムシュテット・LGO/2011年
①24分37②10分24③23分30 計59分31
P.ヤルヴィ・2008年
①27分41②10分50③27分06 計65分37
ヤノフスキ・スイス/2007年
①24分57②10分53③25分51 計61分41
ズヴェーデン・2006年
①25分10②10分47③26分09 計62分06
この録音はライヴ録音ということですが拍手や歓声の類は入っておらず、代わりにギーレンのものと思われる気合のような音声が一カ所きこえました。オーケストラの演奏そのものも立派(クレンペラー・EMI盤と違って)なので、パーヴォ・ヤルヴィやインバルの最新のSACDのような仕様、音質で制作していたらさらに良かったと思われてその点が残念です。と言ってもこれでも十分よくきこえるので欲を言えばきりがないところです。
この録音はライヴ録音ということですが拍手や歓声の類は入っておらず、代わりにギーレンのものと思われる気合のような音声が一カ所きこえました。オーケストラの演奏そのものも立派(クレンペラー・EMI盤と違って)なので、パーヴォ・ヤルヴィやインバルの最新のSACDのような仕様、音質で制作していたらさらに良かったと思われてその点が残念です。と言ってもこれでも十分よくきこえるので欲を言えばきりがないところです。