クリスティアン・ゲルハーエル:バリトン
(2003年2月7-11日 ミュンヘン,バイエルン放送スタジオ2 録音 ARTE NOVA)
クリスティアン・ゲルハーエルとゲロルト・フーバーの同郷コンビは何度か来日してリートの公演を行っていました。それでまた来てくれないかなとネット上のニュースを探していると(わざわざ来てくれんでもこっちから行くがな、という身分じゃないから)、今年の10月23日に京都市西京区にある青山音楽記念館(バロックザール)でシューベルトの「冬の旅」を演奏するのが分り、今度こそ聴きたいと思い、チケットを手配しようと思いました。同ホールの近所は何度もウロウロしたことはあるのに肝心のホールには入ったことがありません。何度か別のアーティストが「冬の旅」を歌っていたのにその度に聴き逃していました。
ゲルハーヘルとピアノのフーバーは共にドイツ南部・バイエルン州、シュトラウビンクという街の出身で、16歳の時地元のオケで出会って以来の付き合いだそうです(当人らは腐れ縁と言う)。その後二人はミュンヘンで音楽を学びましたが、確かインタビューの中でゲルハーエルの方は正式に課程を修了したのは音楽ではなく医学だと言っていました(同時に学ぶことは認められていないらしい)。1998年にはゲルハーヘルとフーバーは共にパリ・ニューヨーク国際プロ・ムジシス賞を受賞してパリとニューヨークのカーネギーホールで公演しています。
このCDも過去にブログで取り扱おうとしながら特にコメントできることが見つからないようで先送りにしていました。 聴いていて退屈とか気がそれるというのではないのに、地味というか、正座しないまでもある程度意識的に集中していなければ、音楽の方から自然に入り込んで来るタイプではないと思います。歌詞、日本語訳を見ながら詩の内容に集中していると味わいが深い歌唱です。このあたりのかげんは同年代のゲルネ、ヘンシェルよりは地味で、声質とも関係がありそうです。それにCD付属冊子に載った二人の顔写真はピアノのフーバーの方が断然大きなサイズなのは不思議です(せめて同じサイズかいっしょに写ってるものじゃなかろうか)。
ゲルハーヘルはシューベルト三大歌曲集のうちで「美しき水車小屋の娘」が一番好きだと言い、「冬の旅」とは対照的に詩の主人公たる青年が自分のことしか歌っていない、「冬の旅」のような読み手との対話のようなものが成立していないけれど、率直な人間の葛藤を歌っているとしています。 ただ、このCDを聴いているとそんなに激しい感情を前面に出した表現といった風ではなく、上品で控えめに聴こえます。それらのゲルハーエルの話は来日公演時にインタビューにこたえたものなので、CD録音の頃より4、5年以上あるいは10年くらい後なので演奏も違ってきていることでしょう。