リチャード・ヒコックス 指揮
ロンドン交響楽団(マルクス・ウォルフ:リーダー )
レベッカ・エヴァンス:ソプラノ
(2002年1月16-18日 ロンドン,オールセインツ教会 録音 CHANDOS)
今日の夕方、地下鉄に乗る前に「怖いクラシック 中川右介(NHK出版新書)」 という本を書店で見つけ、ぱらぱらとめくると「第七の恐怖 戦争」という章があってそこではヴォーン・ウィリアムズについてけっこう言及されているのが珍しかったので買ってその章を車内で読んでいました。その中で著者はヴォーン・ウィリアムズの第一次大戦従軍体験から生まれた田園交響曲について、作曲者自身が自ら「これは標題音楽ではない」とも言っていることから実は「戦争交響曲」であるとして、田園交響曲というのは反語だと指摘しています。標題音楽じゃなないのなら戦争交響曲でもないのでは?と言えそうですが、ヴォーン・ウィリアムズがこの交響曲を構想したのは従軍先のフランドル地方(仏北部からベルギー)でのことであり、応急処置を担当する訓練を受けた後に前線で担架を担当する兵として塹壕に入って戦い、爆音の影響によって難聴になりました。
ヴォーン・ウィリアムズは1914年末に王立軍医療軍団に志願して入隊(年齢から従軍義務は既になかったにもかかわらず) し、1916年6月にはフランスの戦地へ出発して1918年に入って陸軍音楽監督に就くまで戦地に居たようです。第2楽章のトランペット独奏部は前線でラッパ手(軍神木口のように戦死したかどうかは定かでない)が間違って七度の音程を繰り返して吹いていたのを思い出して書いたと言っています。だから作品の根底には戦場の光景(地獄絵図だったという)、それを見た時の感情が厳然とあり、決して長閑な自然をめでる曲ではないという指摘でした。
交響曲第3番・田園交響曲
第1楽章:Molto moderato
第2楽章:Lento moderato
第3楽章:Moderato pesante
第4楽章:Lento
言われてみればなるほどと思いますが、曲を聴いていると凄惨な戦場と直結しているとはなかなか思いにくいので、我々平和ぼけ世代には「戦争交響曲の反語」としての田園交響曲というのは理解し難いものだと思いました。ヒコックスの録音はとくにのんびりした演奏なので余計にそう思いました。特にソプラノが加わる終楽章では桃源郷のような趣です。著者は「『田園』と思って聴けばそう聴こえるし、『戦争』と思って聴けばそのように聴こえる」とも言っているので、一応そういう話として受け止めておくことにします。
ヒコックス・LSO/2002年
言われてみればなるほどと思いますが、曲を聴いていると凄惨な戦場と直結しているとはなかなか思いにくいので、我々平和ぼけ世代には「戦争交響曲の反語」としての田園交響曲というのは理解し難いものだと思いました。ヒコックスの録音はとくにのんびりした演奏なので余計にそう思いました。特にソプラノが加わる終楽章では桃源郷のような趣です。著者は「『田園』と思って聴けばそう聴こえるし、『戦争』と思って聴けばそのように聴こえる」とも言っているので、一応そういう話として受け止めておくことにします。
ヒコックス・LSO/2002年
①10分42②10分27③06分35④11分14 計38分58
スラットキン・PO・1992年
①09分59②10分31③04分48④08分15 計33分33
トムソン・LSO・1987年
①10分18②08分11③06分33④10分44 計35分46
リチャード・ヒコックス(Richard Hickox CBE 1948年3月5日 - 2008年11月23日)は英国の作品の他にハイドンのミサ曲等の声楽作品、プロコフィエフのオペラ等幅広いレパートリーの録音を展開していました。ヴォーン・ウィリアムズ作品も交響曲だけでなく、このCDにもノーフォーク狂詩曲第1、第2がカップリングされているように管弦楽作品も録音を進めていました。それが急逝によって中断されてしまい、年齢からすればもうちょっと活躍できたので非常に残念です。このCDも田園交響曲もノーフォーク狂詩曲も素晴らしいので特にそう思いました。
リチャード・ヒコックス(Richard Hickox CBE 1948年3月5日 - 2008年11月23日)は英国の作品の他にハイドンのミサ曲等の声楽作品、プロコフィエフのオペラ等幅広いレパートリーの録音を展開していました。ヴォーン・ウィリアムズ作品も交響曲だけでなく、このCDにもノーフォーク狂詩曲第1、第2がカップリングされているように管弦楽作品も録音を進めていました。それが急逝によって中断されてしまい、年齢からすればもうちょっと活躍できたので非常に残念です。このCDも田園交響曲もノーフォーク狂詩曲も素晴らしいので特にそう思いました。