ジュゼッペ・パターネ 指揮
ミュンヘン放送管弦楽団
バイエルン放送合唱団
マリア・ストゥアルダ:エディタ・グルベローヴァ(S)
エリザベッタ:アグネス・バルツァ(Ms)
レスター伯爵:フランシスコ・アライサ(T)
アンナ:イリス・フェルミリオン(Ms)
タルボ伯爵:フランチェスコ・エレッロ・ダルテーニャ(Bs)
チェチル卿:シモーネ・アライモ(Br)
(1989年2月13-26日,4月10日 ミュンヘン 録音 PHILIPS)
先日のシルズがマリアを歌った全曲盤レコードに続き、デジタル録音のマリア・スチュアルダ全曲盤CDです。このオペラは今世紀に入って新しい校訂版(原典版的か?)が出たり、再評価の動きが加速しています。ベルカントオペラのファンのあいだでは元から傑作、ドニゼッティの代表作という声が高かったようですが、昨年のザルツブルク音楽祭でも上演されていて、映像化の方も活発化しているようです。実際聴いていて、音楽、歌だけでも最初から最後まで魅力的で、魅力の流れがよどまない、だれないと思います(今さらながら)。この録音は聴く前からヒロインのグルベラーヴァ(Edita Gruberová エディタ・グルベロヴァー 1946年12月23日 - 2021年10月18日)が注目ということになりますが、同じくらいバルツァ(Agnes Baltsa 1944年11月19日 - )が素晴らしくて、オペラのストーリーからすればちょっと憎たらしい役なのに彼女の歌によって、可憐ささえ感じさせられます。バルツァとグルベローヴァのコンビで1985年にアダム・フィッシャー指揮によるこのオペラの墺初演に参加していました。
エリザベッタ(エリザベス1世)はヘンリー8世とアン・ブーリンの娘、マリア(スコットランド女王メアリー1世)はスコットランド王ジェームズ5世の娘、父の死後、生後すぐに王位を継承するもフランスへ逃れ、アンリ2世の王太子フランソワと結婚して彼の即位後王妃になる。アンリ2世の急死後、スコットランドへ戻りイングランド王ヘンリー7世のひ孫にあたるヘンリーと再婚して後のイングランド王、ジェームズ1世を産む。フランスに居る頃にイングランドの王位継承権を主張したのが混乱の元で結果的に死刑の原因となる。こんな複雑な王統の流れもあってマリア・ストゥアルダの物語は注目されて戯曲になったりしました。
ドニゼッティのオペラの物語ではマリアとエリザベッタがレスター卿をめぐって競合するもエリザベッタは相手にされないという関係にあり、その妬みもマリアを死刑にする原因という設定になっています。そんな展開なのでエリザベッタの方が強い立場、やや悪役的な性格を帯び、キャストによってはそんな性格強く出てきます。この録音のキャストではそういう印象でなく、印象の良さ、まっすぐさ?のような感情の機微は対等な印象に聴こえます。個人的には声質からくる印象はむしろエリザッベタの方に肩入れしたくなりました。しかし、マリア-グルベローヴァの方もさすがに高音が特にきれいで、難なく発声できているようで圧倒されます。
グルベローヴァは例えば夜の女王も舞台で歌っていましたが、個人的には声質の面でルチア・ポップの方が圧倒的に好きでした(1981年のハイティンクの全曲盤ではグルベロ-ヴァが夜の女王、ポップがパミーナ)。それはともかく、グルベローヴァは亡くなる直前まで現役で舞台に立ち、2017年にハンガリー国立歌劇場と来日してルチア(ドニゼッティ)を歌っていました(その時は公演に行こうかと思ったくらい)。ルチア・ポップと同郷でしたがよりコロラトゥーラに寄っていて、レパートリーもベルカントオペラを多く歌っていて、昔はCDの時代になってからも購入優先度は後の方になっていました。フランシスコ・アライサにも一応言及しておくと、二枚目的な立場が隅々まで感じ切ったように、憂いを帯びた美声なのでヒロイン級の二人が引き立っています。





























