ファヴィオ・ルイージ 指揮
フィルハーモニア・チューリヒ
(2015年10月 ベルン,クルトゥア・カジノ 録音 Philharmonia Records)

ブルックナーの第8番、今回は初期稿です。個人的には初期稿の方に魅力を感じていて、クレンペラーの終楽章の独自カット演奏(EMIのセッション録音)は初期稿に通じるところがあると思っています。終楽章だけでなく、所々に聴き慣れた第2稿と違うところが現れて、どこかしら野暮ったさが漂います。インバルとフランクフルトRSOの全集以降、初期稿を採用したレオーディングは徐々に増えて、今世紀に入ってから一層数が増えています。演奏時間にけっこう幅があるのは反復省略とかも関係しているのかと思います。
ルイージ・チューリヒ/2015年
①17分54②16分58③31分09④26分11 計92分12
F.ウェルザー・メスト・CLO/2010年
①17分02②15分33③31分46④24分33 計88分54
インバル・都SO/2010年
①14分55②13分52③25分11④21分05 計75分03
ナガノ・バイエルン国立/2009年
①19分55②17分09③33分37④28分44 計99分25
ヤング・ハンブルクPO/2008年
①16分05②14分37③27分44④24分10 計82分36
ギーレン・SWRSO/2007年
①18分29②19分50③29分44④27分01 計95分04
D.ラッセル・デイヴィス・LBO/2004年
①15分00②13分20③25分55④25分47 計80分02
インバル・フランクフルト/1982年
①14分05②13分29③26分50④21分09 計76分34
今回のルイージの合計演奏時間は短い方ではなく、90分を超えています。第2楽章がやや長目(極端でない)というのも珍しいタイプです。それにこれの後にレコーディングした第4番もそうですが、ゆったりしたというだけでなく、特に冒頭部分でブルックナー作品に多用される開始(トレモロから、徐々に霧が晴れるように開始)の後、主題が盛大に演奏される部分も、決して飛び出すようにならず、「じっくり構えたブルックナーだ」という声がきこえてきそうな内容です。終楽章のコーダ部分も厳粛にして清澄です(この味わいは第2稿以上と個人的に思います)。ジュリーニと少し似ているようで、もっと明晰で軽い印象です(これは稿の違いかオーケストラの差か?)。
ファヴィオ・ルイージはメトの指環やN響で有名ですが過去にマーラーやブルックナーも演奏していて、比較的最近のブルックナーは魅力的なので今後も期待しています(さすがに来年までに全曲録音が出るというのは無理でしょうが)。フィルハーモニア・チューリヒはチューリヒ・トーンハレ管弦楽団と紛らわしい名前ながら現在は完全に別のオーケストラになっているようです。フィルハーモニアの方はチューリヒ歌劇場のオケなのでオペラ公演時はピットに入って演奏しています。